7018 内海造船

  • 海運バブルがあったので船主に金がある

  • 内航船暫定事業が終わったため、内航船が一気に更新される可能性がある

  • コロナ禍で受注残が極端に減って業績が悪化していたため、株価が底値圏

ということで造船セクターに注目しています。暫定措置事業とは内航船を新たに建造する際に納付金を納付させる制度で、1998年から始まったものです。元をたどれば過剰船腹を解消するために1967年から似たような制度が始まっており、手を変え品を変え現在に至っているようです。
要は内航船を新しく作ろうとする(あるいはボロ船を更新しようとしても)と余計な納付金を支払う必要が出てしまい、船を新しく建造するハードルになっていたということです。この制度が2021年に終了して新しく船を造る際の余計なハードルがなくなっています。

https://www.naiko-kaiun.or.jp/union/union05/

内海造船は中小型船メインで、内航船の割合が大きいと思われ、暫定措置事業終了の恩恵が大きいと考えています。

内海造船は受注残を公表していますので、その推移を見てみました。
2013年以降は何となく右肩上がりっぽい曲線ですが、2019年頃から新造船過剰状態が発生していたようで、受注が落ち込み始め、さらにコロナでトドメを指された形。コロナ終了後は急激に受注を積み上げましたが、受注残が極端に減っていたことの焦りとインフレを織り込んでいない船価での受注で採算は直近悪化していたものと思われます。
四半期ベースの売上高推移も示します。四半期ベースなのでわかりにくいですが、受注残は大体売上の1年分を目安に営業しているように見えます。

ちなみに同業他社はだいたい2年分くらいの受注残を持っているところが多いようなので、内海造船は少なめ。駆け込み需要的なものを補足する戦略なのでしょうか。。。直近はインフレが激しいので、その影響を多少は取り込みやすいというのも利点ではあるでしょうか。一長一短なんでしょうが。

インフレという意味で気になるのは船価。インフレが始まる前の安い原材料価格を前提に受注してしまった場合、原材料の値上がりは飲み込まなければならなくなります。内海造船はたまに受注残の額とともに隻数も出していますので、受注残を隻数で割って船価的なものを出してみました。

直近は結構な勢いで船価が上がっている雰囲気が感じられます。
ただしこれには修繕船の受注額も含まれており、新造船の船価を正確に表しているわけではありません。相対的に修繕船が増えていれば船価が上がっているように見える可能性も。目安くらいにはなるかな?と思っていますが。

決算短信のガイダンスによれば、直近で受注した船については原材料高を織り込んでいるものの、今期の上期に売上計上する分については原材料高を織り込めておらず、採算が悪化する可能性に言及されています。

ここから先は造船業界の傾向とBSから推測することしかできず、四半期ベースでの業績は妄想するしかありませんが、以下のように考えています。

  • 昨期末に工事損失引当金を積み増しており、仮に低採算船が残っていたとしてもPL上その損失が追加計上される可能性は低い

  • 昨期は工事損失引当金を積み増しつつも営業利益を出せている。為替が極端に円高に振れなければ今期も昨期と同等以上の営業利益を出せる可能性が高い(船価は上昇傾向のはずなので)

  • 上期を無難に乗り越えれば昨期に積み増した工事損失引当金を営業利益に計上できる可能性が高い

工事損失引当金が営業利益に計上されても評価されるかどうかはわかりませんが、CFで考えても改善することはほぼ間違いないと思っています。
個別の業績予想を外したとしても、ここ20年くらいで一番の造船バブルが来る可能性は高いと思います。造船業界は低迷気が長く、三菱重工をはじめ、造船事業を縮小した会社も多いですし。

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