5254 Arent

3/28IPO。上場初日こそ陰線を引いたものの、その後株価は爆騰しています。この値動きの妥当性は置いておいて、淡々とビジネスのお話をば。

Arentは建設DXに分類されており、建設DXとだけ聞くとスパイダープラスを連想する人が多いと思います。ではArentはスパイダープラスの競合なのか?と聞かれると、答えは完全にNo。
スパイダープラスは従来型(?)のSaaSであって、スパイダープラスが良いと考える製品を作りこんで販売していくタイプ。顧客それぞれが持つニーズを個別に汲み取って製品に反映することは基本的にはありません。
一方でArentは顧客の事業領域に入り込んでいってコンサルしながらシステム開発するスタイル。おそらく最終的な目標は顧客とともに作り上げた製品を外販すること。この製品はSaaSにはなるでしょうから、この意味ではArentもSaaS銘柄ではあります。一応。

仕事の進め方が一風変わっていますので、長所短所それぞれあります。

まずは長所。顧客とともに開発を進めるので、顧客の要望は最大限取り入れられることになると思われます。つまり、その事業のプロから見たときにとても使いやすい仕上がりになるはず。また、その開発費も自社持ちではなくコンサルという形で顧客が持ってくれるので、製品が完成していないフェーズから利益を出すことができます。
また、建設会社自身がソフトウェアを作ること、またはArentのようなIT企業が単独で専門分野のソフトウェアを作ることはそんなに簡単ではありません。建設会社は欲しいソフトウェアの要件をそんなに簡単に定義できないですし、IT企業はそもそもどんなソフトウェアが必要なのかわかりません。Arentのやり方は一見効率が悪そうですが、結局こういう地道な取り組みをしないとDXは進まないとも思います。Arentは現状このコンサル業がメインですが、粗利率は50%程度であり、需要の高さが窺えます。

逆に短所は顧客の要望に引きずられる可能性があること。こんな機能この会社以外いらんやろ、、、というような機能も付けてしまう可能性がありそうです。また、ラクスやフリーが出している製品と異なり、ユーザーが非常に限られるという点が挙げられます。会計ソフトはほぼすべての企業で需要があると思いますが、配管の自動設計や配筋計算が必要な企業は少数派でしょう。Arent自身が書いているように、一口に建設と言ってもいろんな分野に細分化しており、それぞれの分野で必要なソフトは異なるのです。下図がArentの説明資料にも描かれている図で、細かく分かれてるな~という風に見えますが、実際には構造の種類等によってさらに細分化される上、設計・施工・維持管理以外にも必要なもの(例えば積算)はありますので、これはあくまで概略図です。

さて、これらを合わせて考えると、Arentはあくまでコンサル業がメインであって、SaaS製品の会社ではないということです。遠い将来の話であればSaaSの会社になる可能性もありますが、売上の小さい製品を多数持っている状態になると思われ、スパイダープラスはじめとした単一製品で勝負する会社に比べると魅力に欠けると思います。
一方で建設業はDXが遅れているのは事実であり、需要は確実にあります。IT人材も豊富ではないでしょうから、事業領域に踏み込んでシステム開発してくれる存在は非常にありがたい。
コンサル業だと一見フロービジネスに見えますが、おそらくこの種の開発は数年スパン以上継続するものだと思いますので、基本的には安定的に売上が立つものと思われます。

さてバリュエーション(淡々とビジネスの話と言っておきながら結局株価の話をするという。。。)。
上記のように、少なくとも個人的にはArentはSaaS銘柄ではなくDXコンサルと考えますから、バリュエーション考えるにあたってスパイダープラス等は参考にしません。全くの競合はなさそうですが、似ているのはベイカレント、コアコンセプト、プロジェクトカンパニーあたりでしょうか?これらの銘柄を参照するとPERで35~45倍くらいが妥当でしょうか?阿漕なことをしているわけではないという点でもう少し加点したい気持ちもありますが。。

今期のEPS予想は37円ですので、単純にこれと掛け算すると1600円前後ですが、成長性は高く、来期EPSは60円程度と思われます。来期まで織り込むと2400円くらいが妥当なところであり、今日の株価も何とか許容できるかな?というところでしょうか?

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