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なぜ「僕の仮説を公開しよう」と思ったのか?

地域のジュニアサッカークラブのコンサルをして1年半が過ぎた。

コンサルするクラブに限らず、自分が取材している範囲の中でも想像以上に地域の街クラブで起こっている現実は厳しい。コーチ不足は慢性化。一貫性のない指導がまかり通っている。保護者も常に不満を抱えている。さらに少子化の波も受けている。これではクラブの運営が安定するはずもない。

第三者からすれば、改善点は見える。

長年、クラブを続けているのだからOBにコーチの応援をお願いする。大まかでいいのでクラブの哲学を見直し、学年ごとに何を指導するのかを決める。まめに保護者とコミュニケーションをとって運営に反映する。

理屈では、いろいろ言える。

きっと全国の多くの代表が「自分もサッカーをやっていたし、地域に子どもがいるからサッカークラブを作ろう」くらいの考えでクラブを立ち上げたのだろう。「ちょっと前は選手もたくさん集まっていたし、うまくいっていた」。そう思っているクラブの関係者も多い。

ただ、時代は急速に変化している。

スマホが普及し、簡単に情報が手に入る。ITを駆使したら国境なんてすぐに飛び越えてしまう。子どもの娯楽は増え、お母さんお父さんも気軽に情報を集めるようになった。サッカーを知らなくても、スポーツをやったことがなくても、頭の中では理屈が見えているような気がする。でも、調べたことが自分の子どもに合うかどうかなんて深くは考えない。それはコーチにも当てはまる。

外から街クラブに関わるとよくわかる。

一つ言えることは、そうやって移り変わる社会や、理屈でがんじがらめになる大人を相手にしながら、クラブを経営する時代なのだ。しかし、どんなに時間を経ても向き合うことは変わらない。

それは"子どもたち"を相手にすることだ。

「ジュニアサッカー専門の『noteマガジン』、はじめます。」にも書いたが、子どもがサッカーを楽しむ環境を作ることは指導面だけでなく、経営面にも同時に目を向ける必要がある。

経営面とは、月謝などお金に限ったことだけではない。なぜクラブが地域に根づくことが重要なのか。それは子どもの居場所を作ることが大事だからだ。当然、そこに暮らす子どもを指導するので、地域に受け入れられるクラブ経営が求められる。

私がコンサルするクラブは、どの学年も3試合すれば1回勝てるかどうかくらいのレベルだ。1年半経った現在も、勝ったり負けたりの繰り返し。いや、負けているほうが多い。しかし、1年前から地域に必要とされる努力を始めた。クラブで校庭を借りていることを利用してグラウンドを解放したり、地域の子どものためにかけっこ教室を開いてみたり、サッカー以外の活動を試している。最近では、練習の場を提供している学校から代表に運動指導の依頼が舞い込んだ。まだ決定事項ではないが、平日の体育館を貸してくれる話もあるようだ。

都内では、活動場所を確保するのがとても困難な状況にある。

先日練習試合をした日野市のクラブはグラウンドがなく、基本的に体育館での活動を余儀なくされていた。みんな「場所さえあればサッカーはどこでもできる」と口にする。だが、いまは公園でボールも蹴れないことも多々ある。もう昔とは違う。サッカー指導の努力さえしていれば、クラブの運営が順調に維持できる時代ではないのだ。クラブ経営とは、地域に根づいて続けていかなければ何の意味もなさない。

私が関わるクラブに所属する選手は、普通の子どもたちだ。現段階では、地域の強豪クラブでプレーできるような選手はほとんどいない。そういう選手が「サッカーをしたい」「友達と一緒にボールを蹴りたい」と集まってくる。これがクラブの特徴なのだ。

だから、契約1年目は代表と話し合いを重ね、クラブ哲学に「誰も見捨てない指導」を掲げた。それまでと大きく変えたのは、選手を全員出すこと。当初は「選手全員を1試合半分以上を出場させること」を条件にした。しかし、あるコーチにはそのハードルが高すぎたようだ。それでも全員出場は守ってくれている。去年より、選手は試合でも練習でも楽しそうにプレーしているし、お母さんお父さんの不満も減ってきた。何より、クラブに関わる人たちに笑顔は増えた。現場のコーチもチャレンジをしている。

そのクラブの「いま」に応じた変化は確実にしている。

「どうして強く言わないの?」。そう思う人もいるだろう。「ルールだから守らせないと」「甘いよ」という人もいるだろう。私は地域に寄り添ったクラブの変化を選んだ。強制的に理屈でがんじがらめにやらせるのは簡単。論破するのも容易なことだ。

ただ、それで地域の街クラブに何が残るだろうか?

サッカーに限らず、ジュニアのスポーツクラブには地域で暮らす子どもがやってくる。そして、その子たちのお母さんお父さんがサポートし、その地域に住んでいるコーチが指導する。それが地域クラブのあり方だ。街クラブの運営で理解しておくことは、「人は循環するが、クラブはその地域で変わらぬ存在でい続けることが重要だ」ということ。

だから、私はそのクラブに合った哲学、子どもの発育発達に応じた指導法を作る活動として街クラブのコンサルを始めた。

物事を形にする。
言語化する。
資料に起こす。

そういう仕事をしているので、一つひとつ資料としてまとめてコーチと選手を通じてお母さんお父さんと共有している。街クラブのコーチは入れ替わるし、選手も出入りする。しかし、「クラブに哲学とそれに応じた指導法が資料として残り、地域の人が受け継いでくれたら子どもがサッカーを楽しむ居場所はなくならないのではないか」と考えた。

幸いにも、全国の優秀なクラブ、海外の名門クラブを取材して得た知識もあり、人脈もある。サッカー指導や教育に関する本もいろいろと幅広く制作している。それを生かさないともったいないと思い、サブスクリプションとしてジュニアサッカーマガジン「僕の仮説を公開します」に書きためてストックすることを決めた。

偶然にも「footballista」もサブスクリプション・サービス開始と雑誌リニューアルを発表し、新たな進化の道を模索し始めた。ジャンルは違えど、私も必要とされる存在を目指したい。

はじめは「無料配信にしようか?」と迷ったが、西野亮廣さんや箕輪厚介さんなどオンラインサロンを成功させている方々に習い、有料にすることにした。理由は、「学びたい」「他のコーチと交流したい」と同じ考え、ベクトルを向いたコーチとともに成長していきたいと思ったからだ。

定期購読してくれた方は、「僕の仮説を公開します」のFacebookページに招待させていただく。その話は、次週また詳しく紹介していきたいのでお楽しみに!

木之下潤
「ジュニアサッカーを応援しよう!」特集担当中!

#ジュニアサッカーマガジン
#僕の仮説を公開します

「僕の仮説を公開します」は2020年1月より有料になります。もし有益だと感じていただけたらサポートいただけますと幸いです。取材活動費をはじめ、企画実施費など大切に使わせていただきます。本当にありがとうございます。