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コーチの品格を身につけるには、現場で経験を積んで認知力を養う必要がある。【筆者の思考整理帳06/僕の仮説36】

9月19日、約半年ぶりに現場取材を再開した。

初日は横浜の学童野球の試合だったが、子どもたちの声、コーチのアドバイス、お母さんお父さんの声援が耳を通り過ぎ、頭から全身に回るとあらためて「現場に帰ってきたんだ」と実感が湧いた。翌日はジュニアサッカーの全国大会の予選会場に足を運んだ。野球と違い、サッカーの試合は選手が動いている。取材を自粛していた期間中も仕事としてサッカーの試合は見続けてはいたが、ピッチレベル(≒目線)で試合の流れ、チーム全体、個々を捉えて分析するのは、やはりハードルが高いことを感じた。

私たちライターも現場に立ち続けないと、選手やコーチと同じように「認知」、ようはサッカーを見る能力は弱っていくものだ。

既存のメディア、新しいメディア、情報化社会でさまざまな分野でいろんなメディアが存在するようになったが、サッカーに限らず、スポーツメディアにたずさわる者は少なくとも月に一度は現場取材を行かないと選手やコーチと同じ目線には立てない。そう実感した。

特に、ここ数年は動画環境が飛躍的に良くなり、現場に行かなくても試合観戦ができるようになった。最近は、育成世代もユースからジュニアまで大きな主要リーグや全国大会はYouTubeでも配信していたりするので自宅でチェックできる。その利便性の高い環境にはとても感謝しているが、現場にしか存在しない情報、現場でしか養えない力は間違いなくある。

それを再確認してできた2日間だった。

3月から新型コロナウイルスの感染拡大が広がった自粛から、9月下旬の取材再開までの約半年間で環境は変わった。

ジュニアの現場でいえば、開催場所によっては管理者が部外者以外は立ち入り禁止としている場所もある。学童野球の取材では、クラブ関係者に確認をとってもらった。また、サッカー大会については運営事務局によるが、念のために注意事項がないかを直接連絡をとって確認をした。さらに会場関係者に立ち入り可能かをたずねた。

なぜそんな行動をとるのか?

それは理由が2つある。一つは、私が都内在住者で、感染元となるリスクを持つ可能性が高いから。もう一つは、ジュニアの現状を記録する必要があるからだ。

ジュニアの現場はJリーグなどのトップカテゴリーとは環境が大きくかけ離れたものだ。多くの人がイメージするような理想とは程遠い。ただ実は、一般社会においてはこれが日常である。逆に、プロなどを含めたあらゆるスポーツのトップカテゴリーの試合が非日常であり、エンターテインメントなのだと、すべてのスポーツ関係者が再認識をしなければならない。

特に「育成」に関わる人々は大きな成長余白を秘めた向上速度が速い選手と向き合い、それが移り行く日常として普通のことだと捉えて寄り添っていく必要があるのだ。だから、取材側には臨機応変な対応と、豊かな知識や経験が問われる。ジュニアの取材現場では、困ったときに助けてくれる人は誰もいない。すべては自己判断と自己決断で物事を進めなければいけない。

「普通はこうだろ?」
「Jはこうなんだよ」

そんな取材者の言い分は一切通用しないのだ。その覚悟がなければ足を踏み入れてはならない領域だと、このコロナ禍の取材を経て感じた。

「もし◯◯だったら」と慎重に物事を進めていかなければ、選手の安心安全を保証することができない。だけど、100%の保証も約束できない。そういうリスクがあることを承知した上で、私はこのコロナ禍のジュニアの現状を記録することも重要だと考えている。

多くの人にとっては関係のない記事かもしれないが、私たち物書きは読んでもらうためだけに仕事をしているわけではない。それぞれの書き手が「今これを書きたい」と信じることを後世に伝える、つなげる役割も担っている。ドラマ「半沢直樹」で、中野渡頭取が銀行を辞めて出て行くラストシーンで半沢に伝えたように、本当の結果は時が経てからしかわからない。

つまり、綴った内容が必要かどうかはその時だけで判断できるものではないのだから、私はジュニアの取材活動を今後も続け、「自分が正しい」と思うテーマを伝えていくだけだ。

これが今の素直な気持ちである。

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