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ジュニア指導で重要なのは「道徳・倫理>勝敗欲」。【リスタートへの思考整理帳05/僕の仮説65】

■コーチが心を閉ざせば光は消える

「ヒトの欲望は道徳や倫理よりずっと強い」

この言葉は、NHK大河ドラマ「青天を衝け」で徳川慶喜が発したものだ。自分の心に秘めてきた江戸幕府終焉の理由を語る1シーンを切り取ったもので、強烈な印象に残った。いつの時代もヒトの本性が変わらぬことが読み取れる。

前後の文脈がわかるように、このシーンの言葉を写し取ろう。

「ヒトは誰が何を言おうと戦争をしたくなれば必ず戦争をするのだ。欲望は道徳や倫理よりずっと強い。ひとたびヒトを憎めばいくらでも憎み、残酷にもなれる。ヒトは好むと好まざるとにかかわらず、その力に引かれ、栄光か破滅か運命の導くままに引きずられていく。

私は抵抗することができなかった。

ついに『どうにでも勝手にせよ』と言い放った。それで鳥羽伏見の戦が始まったのだ。失策であった。後悔している。『戦いを収めねば』と思った。しかしその後も言葉が足りず、いくつも失策を重ねた。

あるいはその前からどこか間違えていたのかもしれない。多くの命が失われ、この先はなんとしても己が戦の種になることだけは避けたいと思い、光を消して余生を送ってきた…」

私には、twitterで罵り合いを止められない現代も同じように映る。

子どもの指導をめぐり、「オレが正しい」「オレが正解だ」と自らの主義主張が正義だと欲望のままにヒトを蔑み、分断の種をまき散らす現代人もまた、争う場所をネット上に変えただけ。とても成長したとは言い難い。

子どもの意志に寄り添う。

昔から変わらず、子どもの指導の正解はたった一つなのだ。これ以外に正解はない。大人が描く指導の理想論も、正解だと主張する独自の理論も、たとえ子どもが間違っていたとしても、本人が気づくまでは見守るしか方法はない。自らの考えが正しいと子どもに押しつける大人は、倫理や道徳に欠け、欲望のままに言葉を吐き、行動に移して同じ過ちを繰り返す。

瞬発的な欲望に勝てない大人は、所詮、子どもが主役になり得ない。

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