マーダーミステリー『巫女たちの鎮魂歌』テストプレイに参加しました

 炭水化物さんという天才フォロワーお姉様自作のマダミスのテストプレイヤーとして参加しました。

※この先はネタバレのため、未通過の方は読まないでください。














キャラクター選択

まず4人のキャラクターから誰がどれをロールプレイするか決める。

画像の利用許可を取りわすれたので、私の絵で失礼いたしますわ~!

 一番できそうなのは豊穣だなと思ったので、あまったら選ぼうと思っていた。逆に竜は難しいので避けたかった。あんまり推理力に自信がなく、「私に任せておけば大丈夫やガハハ!」みたいなのを自信を持って言えるタイプじゃないだろうと思っていたから。
 委員長タイプとけなげロリは好きだからほかの人にやってもらい、外野からニコニコしようと思っていました。
 これはのちにわかったことだが、通過済のみなさんによる観戦席でも「イズミーちゃんは他の人に推しをやってほしいタイプだから水と予言を避けると思う」と予想されていた。その通りです。

 運よく予言と豊穣が余ったので、じゃあ豊穣で……と立候補したところ、
「私は豊穣がいいです!!!!!!」
という熱い言葉が飛んできたため、ゆずって予言になりました。まぁ竜以外ならなんとかなるだろうと思っていたので、気楽な気持ちで選択。


キャラシート読み込みなど

 勝利条件を確認したところ、「犯人にされると死ぬ」「水の巫女と恋人であることはばれてはいけない」があった。そして「水の巫女とこのクソ因習村を出ること」と記載がありました。
 ここで誤認したのが、「大巫女になると逃亡が難しくなるだろう」とは書いてあったけど「大巫女になると逃げられない」とは書いていなかったので、大巫女になるのはべつにいい(なるだけなって逃げればいい)と思ってしまったこと。
 犯人を当てて、これでこの村の平穏も続くぞ!と村人が油断したところを狙って逃げようと思っていました。

 でも逃げる手段が水の巫女に頼るしかない!という状況で、「控えめで衝突を恐れる」設定の予言の巫女が「ほかの二人を犠牲にしてでも逃げたい」と明言するとロールプレイとして崩壊するし、どうしたらいいんだろうと迷って迷って、結局言えませんでした。性格をロールプレイしすぎて最終目的を見失った。ウウ……

事件と調査

 付き合いのながいフォロワーさんたちはご存知だと思うが、イズミーはグロ耐性がかなり低い。そのためそもそもマダミスに向いていないのです。
 事前にGMかつ作者であるおこめさんにも

『胸糞はいいんですがグロってありますか? マダミス参加希望のわりにグロ耐性があまりないので覚悟したいです。 具体的には内蔵・切断面(四肢欠損など)・筋繊維・痛みを伴う拷問表記があるとややきびしいです。』

おこめさんに事前に送ったDMより引用

 と問い合わせをしていました。具体的にグロ描写はないとのことで、安心。
 ……と、思っていたら推理パートで「大巫女の死体を確認」「(おそらく凶器である)大鉾を確認」の選択肢が発生。
 どう考えても調べたほうがいいけど、内容によっては今後のゲームに支障をきたす、どうしようかな~と思っていたら、別の巫女さんたちが選んでくれた。ラッキー!机の上を調べるを選択。

 このあたりから、「巫女の中に犯人がいない」という仮定をたてました。
 理由としては
 ①水の巫女は犯人だとしても疑っても仕方がない(この子にたよって逃げるしか勝利条件がないので)ので除外。別に犯人でもいい。
 ②豊穣は部屋から出ていないと宣言していたので(もちろん嘘かもしれないけど)、部屋で何をしていたとしても別に関係がない。
 ③「夜に厨に明かりがついているのを確認した」という目撃情報を自分が持っていて、それをそうしましたと宣言していたので、外出していたと宣言していた竜と豊穣、夜の間に外にいたならマジで祭壇での事件に関与してる暇がない。
 ④凶器が現場に残されており、おそらく大鉾である、ということで、厨にある包丁で刺したとかではなさそうだと思った。ミスリードだったかもしれないので、これは運がよかった。
 ⑤そしてこれは完全にハズレだったんだけど、大鉾を振り回せるほどの怪力が巫女たちにはないと思ってたので竜か男の侍者かどっちかだろうと思っていました。巫女、大巫女、と女性を優位に立たせている村で「侍者」は明確に性別の描写がなく、「侍者も女であるとミスリードを誘うために意図的に性別を記載していない」と思ったためです。全部思い込みでした
 

このくらいのバカでか大鉾だと思っていた。
引用元:FGO公式Twitter

 イチャつきタイムで「竜か侍者だと思うけど、侍者が怪しいと思う」と水の巫女に伝えました。水の巫女と意見が一致していれば犯人は吊れるとおもっていたので、最低限の義務は果たしました。その義務、勝利条件にいらなかったんだけど。
 このあたりで「村にはフィルタリングがかかっていてYahoo!きっずしか検索機能がないパソコンがある」と私が勝手に設定を持ってくる。教科書でしか見たことがないヨーロッパに行きたいね♡等を言い、学校教育もある時代にもっていく。これは何も推理に関係なく、個人の趣味です。
 私は仕事の暇な時にbooking.comとtwitter検索とinstagramハッシュタグ検索とgoogle検索とExpediaをワープしまくってホテルやレンタルスペースを調べまくるのが趣味なので、脱出後の水予にはぜひ使いこなしてほしいと思います。

 侍者だとおもうと伝えたところで、「机の上を調べる」と「侍者の秘密③」がクリティカルヒットして、
 「こいつが犯人でなかったとしても、こいつを犯人に仕立て上げよう」と決めました。

結末

 従者を犯人として無事に吊れたものの、PERFECT解決とはならず、エンドBとなりました。「具体的にどうやって逃げるか?」がわからず、提示できなかったのでしょうがない……!けどやっぱり悔しかったです。
 ここで最初のキャラシート読み込み時に見誤った、「大巫女になると逃げられない」とは書いていなかったので、大巫女になるのはべつにいい(なるだけなって逃げればいい)と思ってしまったことが効いてきました。
 もっと強く「あなたと出会った過去以外はいらない過去だから、地図から消してしまいましょう、必要な記憶はあなたと両手に抱えきれるだけでじゅうぶん……」とお得意のメリバの甲斐甲斐しい受けをぶつけていくべきでした。
 でもわかんなかったんですよね。真面目で粛々と任務にあたる水の巫女が、私と同じ熱量でこの村を憎んでいるのか。
 「あなたさえ無事に逃げてくれたら私はもういいよ」、と水のバリアを予言にだけつけて、自分は激流のなか消えていきそうな言いそうな雰囲気ありませんか!?あるよね!?ウワ~~~!!!メリバ~~~~!!!あなたのいない世界なら、もう生きていく意味がないよ~~~!!!!!二人でいつか見に行こうと言っていた海で「これが海……きれい…水の巫女と行きたかった……」って入水しちゃうよ~~~~~~!!!!!!!!!!

  竜と豊穣が付き合ってるのはマジでわかりませんでした。
「性交渉をすると能力を失う」ってあったからね、ぶっちゃけ竜と豊穣がどっちかはもう能力を失ってるんじゃないかと思ってたの。そしたら豊穣ちゃんが「私植物の声がきこえるんだよね♡」って言ってくれたので、アッ……誤解してすみません!ってなった。
 竜は逆に能力について一切言わなかったので、もしかしてもう怪力は失われているかも?と思った。そんなことはなかった。ごめんね。



おまけ(二次創作)

 私の村では従者が男なので、イメージイラストを描きました。

罪を告白するシーン
学生をやってる侍者

※両親を殺したのはクソ因習村と大神子の命令、ということを侍者は知らなかったとのことで一部直しました!
※まぬさんから許可を取って一部設定、セリフを引用しています!

 とあるクソ因習村の、とある侍者。男性でありながら社への出入りを許可されている彼は、日々神気に触れ、巫女たちと同じく神秘的な空気をまとうようになっていた。
「あいつは侍者として精進しており、村への忠誠心も厚い。両親のように逃亡しようとすることはないだろう。」
 巫女様方、および大巫女様への献身により、村のえらいモブおじさん達の信頼もつかみ取った侍者は、15になった春、外部の高校への進学を許可された。クソ因習村から山道を下ること一時間弱、村への入り口の山道と、国道との交差点に佇むバス停に到着した。バス停の標識は錆びつき、ポールは曲がっている。付属している時刻表には平日朝に1回、夕方に1回停車予定とあった。土日祝の欄には「詳細は××村営バスにお問い合わせください」と書かれていた。
 ここ何年もバスが停車することはなかった。侍者の進学が決まり、標識は久々に役割をもつこととなった。

 侍者は小中学校には通ったことがない。小中学校に在籍だけしていた、らしい。不登校児のような扱いだったのだろう。通ったこともない小中学校から、卒業証書と成績表が届いた。出席日数はもちろん0だし、成績は1でも2でもなく評価不可能を意味する「-」が印字されていた。
 顔も知らない教師が書いたと思われる「いつか笑顔で会える日を楽しみにしています」、という付箋に書かれたメッセージを何度も読んだ。
 先代の侍者が村に残した小中学校の教科書やYahoo!きっずのトップページに表示される問題演習で、できる限りの勉学を重ねた。
 スマートフォンこそなかったが、侍者は村唯一の型落ちパソコンで、Yahoo!きっずへのアクセスを許可されていた。外の世界について、こっそり検索をかけた。Yahoo!きっずのフィルタリングは正しく機能していたので、自分の住む土地名で調べても村の特産品等しかでてこず、サジェストで「クソ因習村」「踏み入れたら負け」「座敷牢のほうがマシ」などバチクソに悪口を書かれていることは知らなかった。

 美しく、神気をまとう青年がバスに乗り込むと、同級生になるであろう学生たちがこちらをみてひそひそと何かを話しているのがわかった。 
 高校に到着して校門へと向かうと、「TikTokとかやってますか?」と尋ねられた。聞いたこともない。「いや」と一言だけ返すと、そうですか、すみませんと返され、彼女たちは足早に去っていった。

 「入学式には家の事情で参加できず、今日が初登校です。●●●●です。よろしくお願いします」
 ●●●●。生まれたときの自分の名前。侍者という役職を与えられてから、侍者はあの村では「侍者」だとか「侍者殿」などと呼ばれ、人から与えられた名前は神の僕(しもべ)には不要だと捨てられてしまった。
 クラスメイトは入学式で打ち解けたのか、小中学校でのつながりなのか、すでにいくつかのグループに分かれているようだった。
 皆が四角く、薄い箱を手にもってなにやら画面を見せ合ったり、のぞき込んだりしている。あれがスマートフォンか。存在は知っていたが、本物を見るのは初めてだ。
 ゲームをやっている、と思われるクラスメイトもいた。侍者はYahoo!きっずのフリースローやリバーシしかやったことがない。あまりの情報量の違いに、遠くから見ているだけでも眩暈がしそうだった。

 クラスメイトは20人程だった。
 ここに巫女様方もいらしてもおかしくないのか、と、村の外に出てまで村のことを考えていた。
 皆はどうなんだろう?学校にいる間は家庭や儀式のことは考えないのだろうか?自分は常に村に、巫女様方に、大巫女様のお役に立てるかどうかを考えていたし、これからもきっとそうだ。
 皆が学校は勉学に集中する場所、と切り替えられるのなら、自分にはまだまだ難しそうだ。

「なぁ●●」
「……、……。あっ、私でしょうか?」
 先ほど自分で名乗ったのに、呼ばれなれておらず反応が遅れた。
「他に誰がいるんだよ、●●なんて珍しい苗字」
 クラスメイトの男子が、歯を見せて笑っている。珍しい苗字だったのか。村では役職名か下の名前で呼ばれることが一般的で、苗字が珍しいかどうかなんて考えたこともなかった。
「ああ、申し訳ないです。ぼんやりしていたみたいです。何か?」
 クラスメイトがこちらをみて驚いたような顔をした後、また笑った。
「なんつーか、上品な喋り方だな」
「そうそう、私、なんていうのも珍しいし。もしかしていいとこの人?」
 話し方がおかしかったのだろうか。同年代の巫女様方とお話しする際と、変わらないように話したつもりだったが。
「いいところ、というわけでは。高貴な方の元には身を置かせていただいていますが、私自身は一般の者ですよ」
「へえ〜、そうなんだ」

 話を遮るようにチャイムが鳴り、教室に教師が入ってくる。起立、礼、着席と日直が促す。窓際の後ろから2番目の席から見える山は、実際の距離よりもはるか遠くにあるように感じる。

 世界史の教科書を開く。あらゆるものを共有する村では持ちえなかった、自分だけの教科書。好きなページを開き、好きなだけ書き込みをしていい、私だけの本。この空間は自由だ。この建物の中では、好きなだけ学んでいい。授業を受けていい。……ここにいたい。
 ……ぞわっとした。村の、巫女様方の、大巫女様のために生きているのに、不敬な考えをしてしまった。思わず口を手で覆う。
「どうしましたか、ええと、●●くん。具合が悪いのですか?」
 社会科の教師が黒板に文字を書く手を止め、私に声をかけた。
「い、いえ。大丈夫です」
「そうかい?何かあったらすぐに言うんだよ」
 授業が再開された。心臓がうるさい。登校初日から、こんなことを思ってしまうなんて。ここへ送り出してくれた村の皆の期待を裏切ることになってしまう。
 教師の書く文字を書き写すことに集中しましょう、侍者は自分にそう言い聞かせながら、初めての授業を乗り切った。

 初日は午前授業だった。
 昼にホームルームが終わると、家路につく者、バイトだと駆け足で去っていく者、教室に残って他愛のない会話をする者、部活の見学案内を見る者などに分かれた。
 侍者はひとり、社会科準備室に向かっていた。世界史の授業後、今日の授業が終わったらおいで、と声をかけられていたためだ。
 ノックを3回、どうぞと返事があったのを確認して扉を開ける。
 節電のためか部屋の電気は消えている。校舎の北側にあることもあってか、この春の日であっても薄暗い。教師がまめに掃除をしているのか、ほこりっぽさはなく清潔な空気で満たされている。

 教師は事務机に向けていた体を、回転椅子で侍者へと向けた。
「ああよく来たね。そこの椅子に座って」
「失礼します」
「ずいぶんと畏まった口調だね。先生と生徒はもう少しくだけた調子で話してもいいんだよ」

 教師がコーヒーメーカーを稼働させる。ネスプ○ッソと書かれた、丸いフォルムだ。
「コーヒーは好きかい」
「……飲んだことがないので、わかりません」
「ふふ、君のお父さんは好きだったんだよ。苦いブラックがね」

 父?
「●●って珍しい苗字だろう。もしかしてって思ったんだ。ぼくが教わった先生と同じ苗字だ。随分前に事故で亡くなったと聞いていてね。息子さんはどうしたんだろうと思っていたんだ。……うん、先生によく似ている」

 私に話す教師の瞳は、村の人間にはない何かを帯びていた。熱だ。熱がある。生きた人間の熱。
「なんだか懐かしい気持ちになってきたよ。もっと近くで見てもいいかな」

追記①(2023.8.9)

 戸惑って、あ、とか、は、とか言葉が成り立ってない声を出すので精一杯だ。
 返事より早く先生は、その骨ばった右手を私の頬に触れる。手のひらをぴたりと頬に添わせ、親指でつつ、と目の下あたりを撫でる。
 観察されている。ぞわぞわと、全身の毛が逆立つ感覚に襲われる。
「せ、先生……」
「本当によく似ている」
 それが私を見ているのか、私を通して父を見ているのか。ピントが合っているのか、あっていないのか、わからない。彼に表面だけではなく、もっと奥深くまで覗き込まれているようなのに、こちらからは何もわからない。瞳の熱が蜃気楼のように、現実感を歪ませていく。
「●●さん」
 授業中とは声色が異なる。求める声だ。私をか、それとも、私の父をか。

 心臓が張り裂けそうなほど強く鳴っている。先生の顔が息がかかりそうなほどに近づく。
「う、うわぁ!」
 私は後ろにのけぞって、そのままキャスター付きの椅子から転げ落ちた。
 椅子はガーッと音を立てて後ろへ走っていき、壁にぶつかって鈍い音を出した。
「大丈夫かい」
「だ、大丈夫です。失礼します」
 私はスクールバッグを抱き抱えて、一礼すると走って社会科資料室を後にした。

 帰りのバスまで、何かすることがあるわけではない。とりあえず、図書室へ向かい、胸の鼓動が落ち着くまで休むことにした。
 図書室のカウンターに学生が一人、貸出手続き役として座っている。卓上のネームプレートには図書委員、と書いてある。学園内の自治組織だろうか。
 軽く見回したところ、他に人はいないようだ。校庭でランニングをする学生たちの声が遠くから聞こえる。

 先ほど先生に触れられた頬に、自分でも触れてみる。
「……なんで……」

 ぞわりとした。怖かった。でも。
「なんであんな……美術品にでも触れるみたいに……」

 村では、あんな、「私」を大切なもののように扱う者はいない。
 この学校という村から離れた空間で、私は侍者ではなく、●●として見られている。●●という、人間として。

 思い出す。
 数年前の、村の儀式。
 巫女様方も私も、まだ5歳か6歳だった。
 村人は社の周りに集まり、儀式用の装衣をまとい、あるものは笛や鈴を鳴らし、またあるものは祝詞をあげていた。
 村の大人達に指示され、私はひとり、社の前に歩み出た。
 大巫女様と巫女様方が、社の大広間に正座し、開け放たれた入り口から私をご覧になっていた。
 「只今より●●を神のもとへとお返しいたします」
 村の長老役がそう口上し、私は服を脱いでいった。

 全ての生命は神の恩寵である。しかし、愚かなことに、人間は生きているだけで世にはびこる毒に染まってしまう。
 最も汚れの少ない、生まれたままの姿に戻ることで、神の僕になるという宣誓である。

 大巫女様が社から下りてくる。大巫女様が清めた薄布を、頭にかぶる。その一枚の布を身につけて、川に入った。
 水の巫女様が水流を操り、私に水を纏わせる。溺れそうになるほど、執拗にだ。
 しばらくすると纏った水が体から離れ、川に流れていく。川から上がり、薄布を離さないように握り締め、地面に四つん這いになり呼吸を整える。鼻から口から、いつのまにか飲み込んだ川の水がぼたぼたと落ち、地面に水玉模様を作った。
 ふと、暑さを感じて顔を上げる。
 いつ社から下りてきてくださったのだろう。目の前に立つ竜の巫女様が暗雲を晴らし、太陽を呼び寄せていた。
 逆光に照らされた大巫女様と巫女様方は、あまりに神々しかった。

「お清めは無事になされました。今日から正式に侍者となり、私達に尽くすことを赦します」
 大巫女様のお触れに、村中のものが手を合わせて膝をつき、静かに礼をした。
 
「ありがとうございます、わがみ、わがしょうがいをこのむらのはんえいにささげます」
 私は四つん這いの姿勢を正して、三つ指を立てて礼をした。地面に濡れた額がくっつき、いくつか砂利がくっついた。

 真面目で実直な立ち振る舞いから、「かくあるべき」と見本となってくださった水の巫女様。
 病に倒れたとき、薬を調合し、早く良くなってねと微笑んでくださった豊穣の巫女様。
 儀式の舞を覚えられない私に付き合って、踊りの練習に付き合ってくださった、行動力と優しさをもつ竜の巫女様。
 言葉少なながらも「あなたからは悪い気持ちを感じないね」と、私の村への忠誠心は歪みないものだと、背中を押してくださった予言の巫女様。
 そして両親を亡くした私を息子のように育て、立派な侍者になれるようご指導くださった、大巫女様。

 これからもおそばにいられる。喜んでくださるだろうか。
 顔を上げたときに見た大巫女様と巫女様方は、もう●●を、ーー人間を見る瞳ではなく、「侍者」という「機能」をただ視界に入れるだけの冷徹なものに変わっていた。


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