造血幹細胞移植(骨髄移植/ハプロ移植)について
今回は造血幹細胞移植について書きます。移植の種類や方法はいくつかありますが、僕は2016年11月下旬にハプロ移植という方法で造血幹細胞移植を行いました。大まかなことは「32歳で急性白血病になりました。」に書いています。
今回、僕が伝えたいのは、ハプロ移植を選択した理由と、ハプロ移植の認知度が上がって欲しいということです。ちなみに、ハプロ移植はまだ確立されたものではなく、臨床試験の段階という説明を受けました。
※以下は僕個人の体験談および感想です。治療方法、治療期間などは個人差や医療機関に依るため、あくまで僕の場合はこうだったという前提でお読みください。
HLA(ヒト白血球抗原)について
まず、移植を検討する前に必ず検査で調べるHLAというものがあります。簡単に言うと、白血球の血液型です。いわゆるA型・B型・O型・AB型は赤血球の血液型なので、それとは別物です。移植を検討するにあたって、患者のHLAとドナー候補のHLAが一致しているかが重要になります。
→ 参考 : HLA研究所のサイト
人は両親から、2つある遺伝子の内それぞれ1つずつ受け継ぐので(メンデルの法則)、血縁関係の親子では必ずHLAは50%一致します。兄弟であれば100%、50%、0%のどれかになります。
まずは血縁者からドナー候補を探すのですが、100%一致しない場合は骨髄バンクに登録し、非血縁者のドナーから100%一致する人を探してもらいます。
→ 参考 : 日本骨髄バンクのサイト
僕には姉がいますが、僕と姉は50%の一致でした。
移植を検討するための前提条件
僕に提示されていた前提条件について説明します。移植を検討するにあたって、2つの病院でセカンドオピニオンを受けました。A病院とB病院とすると、それぞれの前提条件は以下のとおりでした。ちなみに、最初に入院していた病院では移植はできないため、いずれかの病院に転院する必要がありました。
A病院:
・前処置はフルで、骨髄移植を行う。ドナーは骨髄バンクで探す。
・入院可能な時期は骨髄バンクでドナーが見つかり次第(3ヶ月から半年かかる見込み)。
・自宅から遠く、家族の面会や退院後の通院が大変(電車には乗れない)。
B病院:
・前処置はミニで、ハプロ移植を行う。ドナーは血縁者から選ぶ。
・入院可能な時期は無菌室が空き次第いつでも(ドナーの都合にも合わせる)。
・自宅からまだ通える距離にある。退院後もタクシーで行けそう。
前処置や移植の種類については後述します。要するに、ドナーを骨髄バンクで探してA病院で移植するのか、ドナーを身内にお願いしてB病院で移植するのかという選択でした。
移植の選択肢と優先順位
移植の選択肢について表現を変えると以下のとおりです。検討した優先順位のとおりに記載しています。優先順位はセカンドオピニオンで聞いた話を踏まえて、完治率が高いと思われる順になっています。
1. HLAが100%一致する血縁者から移植(A病院)
2. HLAが100%一致する非血縁者から移植(A病院、骨髄バンク)
3. HLAの主要6項目の内、1つだけ異なる非血縁者から移植(A病院、骨髄バンク)
4. HLAが50%一致する血縁者から移植(B病院)
5. 臍帯血移植(AまたはB病院、臍帯血バンク)
このうち、1と2は該当者なしで選択肢から外れます。
5については体重の問題(移植前は60kg近くあり、臍帯血移植で生着するにはぎりぎりの体重と説明を受けた)もあり、最後に検討することにしました。
従って、「A病院で3」、もしくは「B病院で4」の2択でした。
移植の方法と前処置
用語について補足です。移植する造血幹細胞を体のどこから採取するかによって名称が異なるようです。主に「骨髄移植(骨髄から採取)」「末梢血幹細胞移植(腕の血管から採取)」「臍帯血移植(生まれたばかりの赤ちゃんと母親の臍帯から採取)」の3つです。
※「ハプロ移植」は、HLA半合致移植という意味なので、上述した3つとは意味合いが異なります(細胞を採取する場所を意味するものではない)。
→ 参考 : 造血幹細胞移植の種類(国立がん研究センターのサイト)
前処置(移植前に抗がん剤と放射線を使用して、患者の骨髄細胞をなくす)には、「骨髄破壊的前処置(フル移植)」「骨髄非破壊的前処置(ミニ移植)」の2つの方法があります。
簡単に言うと、フルは超大量の抗がん剤と放射線で骨髄をカラッカラにしてから移植するイメージです。ミニはフルより少ない量の抗がん剤と放射線で、ある程度骨髄細胞を減らしてから移植するイメージです。
ややこしいですが、最終的に僕は、HLAが50%一致しているドナーから移植する「ハプロ移植」で、前処置は「ミニ」で、ドナーの「末梢血幹細胞から採取した細胞」を移植しました。
ハプロ移植を選んだ理由
以上の条件を踏まえて、僕がハプロ移植を選んだ理由は以下のとおりです。
・フル移植とミニ移植にはそれぞれメリット・デメリットはあるが、僕はそれ程身体が強くないため、フル移植に耐えられる自信がなかった。
・骨髄バンクでドナーを探してもらう場合、移植できるタイミングが読みづらい。その上、ドナーが見つかったとしても、移植当日までドナーには中止する権利があるため、最後の最後までわからないという怖さがあった。
・直感的に、移植後のGVHD(拒絶反応)がハプロ移植より骨髄移植(骨髄バンクのドナー)の方が強く出そうな気がした。※僕自信が骨髄バンクでほとんど候補が見つからない遺伝子タイプで、姉とはその遺伝子が一致してそうだった。
・姉が(両親も)、早い段階からドナーになる意志を示してくれていた。
・面会に来てくれる家族と退院後の通院を考えると、より自宅に近い病院がよかった。
移植をするかしないか、する場合はどの方法で行うのかは人それぞれで、自ら決断してくださいと言われていたので、僕の場合はこういった理由で決断しました。
余談ですが、ハプロ移植を決意してB病院に入院後、分子学的再発が確認されました。諸々の検査を終えて前処置が始まる直前のことだったので、結果的にハプロ移植の準備を進めていたことが功を奏しました(再発すると移植以外に助かる方法はなく、かといって骨髄バンクを待つ猶予もない状態だった)。
ハプロ移植の認知度が上がって欲しい
骨髄バンクには僕も登録して、実際にドナーを探してもらってお世話になりました。その上で、以下の課題を実感しました。
・時間がとてもかかる(患者は数ヶ月間、寛解状態をキープして待ち続ける必要がある → 僕は結果的にキープできなかった)
・あくまでドナー候補者の善意に助けられている制度なので、ドナー側がやっぱり止めると言えば中止できる(移植のスケジュールが決まってからでも中止できる)
・人に依るので何とも言えないが、ほとんど候補者が見つからないこともある
骨髄バンクは移植を必要とする人にとっては無くてはならない存在ですし、毎年多くの方が救われているのも事実です。でも僕は実体験から、骨髄バンクでは間に合わない人も多くいるということを知りました。
そんなときに、HLAが50%一致していれば移植が行えるハプロ移植の存在を知っているかどうかが非常に重要だと感じました。まだ確立された方法ではないため、全国的に見てもハプロ移植を行える病院は非常に少ないようです。僕が入院した病院にはハプロ移植のために全国から患者さんが集まっていました。
また、将来的に骨髄バンクのドナー登録者数が減ってくるようなことがあれば(20歳以上、55歳以下という年齢制限がある)、なおさら事態は深刻になるようにも感じます。今のところ、登録者数は増えているようですが(骨髄バンクデータ集)。
血縁者が健在であればほぼドナー候補が見つかるハプロ移植を選択肢として検討できるかどうか。これから先、同じような病気の方にとってこのことが重要になるような気がしてなりません。
そのためにも、臨床試験をクリアして確立された方法として認可されて欲しいので、僕も一人の成功事例になれるように完治に向けてがんばります。
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