「親だけで頑張らなきゃいけない育児」をやめたい
こんにちは、多胎育児のサポートを考える会の市倉です。
最近、双子を育てているお母さん達の話をじっくり聞く機会がありました。
フローレンスの訪問サポートサービス「ふたご助っ人くじ」の保育者が、もっと多胎児の親御さんの心情に寄り添った対応ができるようにするために、みなさんの妊娠、出産、育児それぞれのエピソードを聞かせてもらったんです。
その内容がとても心に刺さったので、みなさんの許可を得た上でここに記載したいと思います。
インタビューで語られた、母達の記憶
双子にきょうだい児がいたり、実家のサポートを受けなかったり、それぞれの環境で、いまもまさに双子育児を頑張る母達3人が、30分ほどの中で語ってくれたこと。
「母が自分にしてくれた育児」が出来ない焦り。
双子が生まれたことで、幼い上の子にかける時間がなくなり、気持ちに気付いてあげられなかった後悔。
手を抜くべきだと頭ではわかっているのに、もっと頑張らなければと思ってしまう事。
みなさんが、時に涙を流して語ってくれる姿に、インタビュアーの私は「なんでこの人達は、こんなにも頑張らなきゃいけないんだろう」と、怒りにも似た感情を覚えました。
あるママは、双子が小さく生まれた時の辛さを吐露してくれました。
「小さく生まれたからこそ、母乳を、ミルクをたくさん飲んでほしくて、でも飲めなくて、焦った。相談相手がわからなくて、毎日どうしたらいいのかわからずに追いつめられて苦しんでいた。もっと早くから『人に相談して良いんだ』と思えていたら、ずいぶん楽に過ごせていたと思う。
成長した今も、子供だから食べムラがあることなんて頭では理解しているけど、残される事がすごく辛くて、イライラしてしまう。」と。
また別のママは、産後の睡眠不足の体験をこう教えてくれました。
「4日連続で徹夜となってしまい、意識朦朧の中でミルクをつくった。調乳用の熱湯が自分の手にかかっていることに気づけず、朝、陽の光の中で自分の手の甲がただれていることに気付いた」と。
なんでこんな事が起きるんだろう。
なんで彼女たちはこんなにも、一人で、家族だけで頑張らなければいけないのでしょうか。
産後の生活へのサポート不足と、社会の不寛容
小さく生まれる事が多く哺乳力が弱い子供たちと、出産で肉体に大きなダメージを受けた母。その組み合わせが最初からうまく行くのは難しいのに、疾患がなく子の体重が一定基準を満たしてたら「家庭での保育に危険はない」と退院となり、親に全てが負わされてしまう。そこに『家族の負担や不安に対しての視点』はありません。
退院後の生活が軌道に乗るまで、訪問看護や助産師のサポートがなければ、孤立して追い詰められてしまうのは容易に想像がつきます。
そして退院日から始まる、頻回授乳とお世話で睡眠不足の日々。
夜間授乳をひとりもしくは夫婦で乗り切らなければいけないのなら、せめて日中はヘルパーやシッターが訪問して休息をとらせなければ、親の体は壊れてしまいます。
前述の、深夜に火傷をしたママは、こうも教えてくれました。
まだ幼い姉をおんぶして、生まれたばかりの双子をベビーカーに載せ、家から遠く離れた病院への検診の道。ガラガラのバスに乗ろうとすると、乗務員から「乗れないよ。ルールだから」と乗車拒否される。心が折れる。
でも、真夏の炎天下40分歩いて、病院を目指すしかないのです。子供に必要な医療を受けさせるために。
もう「親だけで頑張らなきゃいけない育児」をやめたい
こんな風景が、多胎児家庭には当たり前のように存在しています。
双子を妊娠・出産することで得る幸せは、他の多くの親が得られる社会からのサポートや利便性とトレードオフなんでしょうか。
マイノリティの家庭は、もっともっと、家族がどこまでも強くならなきゃいけませんか。
絶対、このままじゃいけない。
どんな家庭だって、子育ての「辛い」を最小限に、子育ての「楽しい」は最大限に。そんな社会にしなければ、子育ては辛くなる一方です。
「自分で選んだ道」「産後はみんなそう」の言葉で口を塞ぎ助けを求めさせず、親だけが頑張らなければいけない育児を、もう私はやめたいです。
多胎児家庭に、デフォルトとして産後の手厚いサポートを。マイノリティも配慮され、結果すべての人に優しい社会を。そこを目指してやっていきたいのです。
最後に、インタビューの中で忘れられない一言。
「バスに乗れないことが、社会のせいだと思えなかった。双子の妊娠出産という【幸せ】を得た私は、それを受け入れるしかないと思っていた」
これを読んでいる多胎児の親御さん。
追いつめられた日常が、決して自分のせいだなんて思わないでください。強くなれない自分がいけないだなんて思わないでください。もうじゅうぶん、頑張ってるはず。
変わるべきは、社会のほう。そしてそれを構成する私達ひとりひとりのほうです。
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