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アブストラクト(エキスポ)

 ベーシックインカムは「政府が全国民に対して健康で文化的な生活を送るための現金を支給する」社会保障政策として捉えられているが、社会保障政策としてだけでなく労働政策としても機能すると考えられる。私が考える仮説は「ベーシックインカムが実現すれば、現行の生活保護によって生じている『貧困の罠』が解消され、さらにAIの発達によって生じると予想される失業者に対するセーフティネットとして機能し、現行の社会保障制度より優れたものになりうる」と「ベーシックインカムが実現すれば、日本従来の労働観に変化が生まれ、職業選択の幅が広がり、働きがい・やりがいの面での働き方改革につながる」である。
 現行の生活保護制度には「貧困の罠」と呼ばれる欠陥が存在している。ベーシックインカムは国民全員を対象に無条件で現金を給付するため「貧困の罠」のような問題は発生しない。また、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン博士らが発表した論文に基づいて行われた野村総合研究所による共同研究では日本の労働人口の約49%が機械に代替可能になるという試算が出ている。AIに仕事が奪われることを失業と捉えることもできるが、人間が働く必要性がなくなりつつあると捉えることもできる。その場合、働かずともベーシックインカムによる給付で最低限度の生活を送ることができるようになり、従来の働き方・労働観に大きな変化が生まれることが想像される。
そこで本研究では「ベーシックインカムを財政面から実現可能であると証明すること」及び「ベーシックインカムの導入が働き方改革に繋がる論拠を示すこと」を研究のゴールとする。
 ベーシックインカムを導入するために必要な財源は約100兆円であるが、現行の社会保障制度の予算と可能な歳出削減、富裕税の導入、租税回避行為への対策によって確保できる財源は約60兆円弱である。そのため、ベーシックインカムの実現可能性は現状極めて低く、ベーシックインカムの規模を縮小するか他の財源調達方法を探る必要がある。
 日本では若者・高齢者の労働観どちらにおいても生きるため(所得を得るため)に労働をしている人が多く、働きがいを感じることができない人の多い。本研究では働きがいの定義を「活力(仕事から活力を得ていきいきしている)、熱意(仕事に誇りとやりがいを感じている)、没頭(仕事に熱心に取り組んでいる)の3つが揃っており、達成感・充実感が生じていること」とする。もしベーシックインカムが導入されれば職業選択の幅が広がり、従来の労働観が変化し、より多くの人が働きがいを感じることができるようになると考える。



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