見出し画像

蟲の声

数字に関することは詳しい方にお任せし、今日は「俯瞰して考える」についてコメントします。

1.
「俯瞰して考える」とはなかなかできるものではありません。視野を広げる、相手の視点で考えろと言われても、人は自分の視点しかないので、世界で活躍する人や政治家の視点は持ち合わせていません。

自分はどう考えるかではなく、その人だったらどう考えるか、という視点が必要なのですが、そうした視点を理解するために手っ取り早い方法は「相手に直接聞くこと」です。直接聞けない相手であれば「相手の発することを、自分の価値観や思い込みを一旦脇に置いて、ありのまま見つめること」です。

話を聞くとき、自分が次に何を話すかを考えていては、聞いていることになりません。情報を眺めるときに、自分の価値観や思い込みでフィルターをかけてしまっては、事実を正しく受け止められません。フィルターが自分ではなくメディアによるものならば尚更です。


2.

マスクをしなければ外出できない世界、生き物たちがそれまでの住処をはなれて「引っ越し」をしている状況、問い直される科学技術と人間の関係‥‥この作品に描かれているいくつもの点が、コロナ禍の現在とシンクロしていた。再読して強く感じたのは、ナウシカが類稀なる聞き上手だということだ。誰もが異形の蟲たちをコントロールしようとする中で、彼女だけが蟲の言葉を聴こうとしている。支配するのではなくケアしようとするリーダーの姿に圧倒された。

《引用元》
ひび割れた日常
-人類学・文学・美学から考える-
奥野克巳・吉村萬壱・伊藤亜紗著


「俯瞰して考える」ための一冊「目の見えない人は世界をどう見ているのか」の著者、伊藤亜紗さんを含む3名のリレーエッセイ。

ひび割れたコロナ禍の日常を生きる中で、伊藤さんがセレクトされたうちの一冊が「風の谷のナウシカ」でした。

この国のリーダーが蟲の声を聴こうとしているのかどうかは、個々人の捉え方次第でどちらとも取れると思いますが、恐らくメディアの価値観の影響を受けているかどうかで二分されると思います。

ただ、私が感じたのは「私達が蟲の声を聴こうとしているかどうか」です。

伝える側の解釈による価値観が多分に反映され、見せられているニュースを浴びる中、政府の発する蟲の声を聴こうとしている人はどれくらいいるのでしょうか。


[2021.01.14投稿]いいね:12


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?