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【深い社会】12 この国のかたち

構成主義が生み出した「共産主義」。
そもそも、社会科的弱者であった労働者のために生み出された概念です。

共産主義概念が作られたきっかけが、資本主義によって生み出される「恐慌」です。

人々が自由に経済活動をする。
資本主義社会を作る。
みんなが生き生きする。
社会全体が豊かになる。
その恩恵はすべての人に影響を与える。

それはいい。
ところが、経済活動がすぎると必ずバブルが起きる。
バブルがはじけ「恐慌」が起きる。

紙幣は紙くずになる。
貧しい人、自殺する人が大量に出る。

そのような、自由主義、資本主義によって生み出される大破壊を避けようと
作られたのが共産主義です。

ところが、そんな共産主義が大破壊を生み出します。
一体全体どうすればいいんでしょう。

マルクスの心配は的中します。

世界恐慌、そして、昭和恐慌。
世界恐慌
https://ja.wikipedia.org/wiki/世界恐慌
昭和恐慌
https://ja.wikipedia.org/wiki/昭和恐慌

世界の国内総生産15%減少。
国際貿易は50%減少。
アメリカの失業率は23%。

日本でも1930年の1年間で会社823社がつぶれ、
若者たちは学校を出ても3割は仕事がない状態。

特に東北の農村のダメージは大きく、
欠食児童や、身売りする女性が大量に発生しました。

この事実は、とくに当時の日本兵たちにとってショックな出来事でした。
当時の日本兵を構成していたのが、農村の次男坊、三男坊たち。
土地は長男が受け継ぎ、口減らしに都会に出て兵役に就く人が多かったのです。

故郷の、兄弟姉妹たちが苦しんでいる。
一体全体どうすればよかったのか。

注目されたのが、北一輝です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/北一輝

北一輝も学生時代に、カント・へ―ゲルを学び、
マルクスとは別の視点で、新しい社会構想を考えていました。
それが、「国体論及び純正社会主義」です。

「先ず説明の順序として現牡会の大多数階級の貧困なる原因を察せざるべからず。いかにして大多数はかくまでに貧困なりや。」

「社会より貧困を駆逐せんがために歓迎せらるべき機械は、
今や貧困者を絞磔し、
絞磔を免れたる僥倖者をも失業の不安に脅かして運転す。
ああ機械発明に逆比例する貧民階級の拡大と失業者発生の驚くべき速力。
かかる石壁と溝墟とを以て築ける城桜よりも遥かに金城鉄壁の器械を以て黄金貴族の護られる時、何の自由競争あらんや。
自由競争とは階級に伴いて二つに分類さるべし、
すなわち黄金貴族間の残虐なる経済的混戦の放任、
及び賃金奴隷間のパン屑に対する餓鬼道的争奪これなり。」

北一輝は工業化が、人々の生活を豊かにすることについては、正しい。
ところが、これを貴族階級が独占するから、人々の生活が苦しくなる、
と言っています。
まさしく、マルクスの言っていることと同じです。

そこで北一輝なりに構成主義に基づいて社会体制を考えます。
自由主義を基本として、政府が社会全体をコントロールし、
一部の貧しい人が生まれないように工夫する社会です。

具体的なアイデアとしては、

言論の自由
基本的人権尊重
華族制廃止(貴族院も廃止)
天皇の象徴性
農地改革
普通選挙
累進課税
財閥解体
皇室財産削減
労働者の権利確保

あ、あれ?
もしかして、・・・今の日本?

さらに、このような社会を作る方法を提案します。
「日本改造法案大綱」です。

「巻一 国民の天皇 憲法停止
天皇は全日本国民と共に国家改造の根基を定めそがために天皇大権の発動によりて三年間憲法を停止し両院を解散し全国に戒厳令を布く。」

「注一 権力が非常の場合有害なる言論または投票を無視し得るは論なし。
社会政策の採決において「カルル・マルクス」の一票が大倉喜八郎の七票より不義なりというあたわず。」
「注二 「クーデター」を保守専制のための権力濫用と速断する者は歴史を無視する者なり。
現時露国革命において「レニン」が機関銃を向けて妨害的勢力の充満する議会を解散したる事例に見るも「クーデター」を保守的権力者の所為と考うるははなはだしき俗見なり。」

出た!
プロレタリアート独裁!

北一輝は、個人の自由からスタートして社会主義の構築をめざしました。
そのために、クーデターによる独裁状態を経て、日本の政治体制を変えるべきとしたのです。

この本に影響を受け、日本兵たちは次々と立ち上がります。

まず、血盟団事件。
海軍による5・15事件。
陸軍による2・26事件。

これにより、日本の社会は軍隊に物が言えない体制になっていきました。

結局、
共産主義(左翼)も、
国家社会主義(右翼)も、
およそ構成主義から生まれた概念は、大破壊に結びつくことになりました。

私たちはここから、どのような教訓を得ればよいのでしょうか。

ここで、社会科の理念を生み出した、
プラグマティズムに迫ってみましょう。

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