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【深い社会】02 経験主義への批判は妥当か。

百科辞典を紐解きましょう。
平凡社「世界大百科事典」から。

項目としては、「経験論」を調べると、経験主義について語られています。


「経験論って言うけれど、正直くだらない。」

「一人ひとりの経験が大事。
経験なくしてものごとの認識はないって言うけれど、
それが本当なら、今ここにある『モノ』は、ないっていうこと?
いや、あるでしょ。」

「経験論で言えば、人と人とが持っている感覚はけっして共通にならない、ていうことでしょ。
そうしたら、科学はどうするのさ。
1+1が2にならないなら、科学なんて発展しないよ。」

「結局、物事を疑って終わるだけじゃん。」


ひどい、言われようです。こんな悪口が百科事典に堂々と書かれています。
これだから、百科事典は面白い。

ただし、上記のような批判が出るのは、経験論に対する誤解のせいだ、と
きちんとフォローされています。

経験論は、古代ギリシャの時代から語られてきた考え方です。
百科事典では、3つの時代ごとの経験論に分けています。

1 古代的経験論
古代ギリシャでは、経験をあまり信用のならないものとして捉えられていました。
ソフィストたちの興味は、すべての物事の、「真」「偽」を問うことにありましたので、
うつろいやすい経験は信用できなかったのです。
ただし、経験に根差さないと真理は得られないし、経験から離れて人に説明もできないので、
どうにも消化できないあきらめの考え方とされていたようです。

2 近代的経験論
古代経験論を引き継いで消化したのが、イギリス経験論を打ち立てたベーコンです。
ベーコンは、様々な経験「データ」を集めて、そこから共通項を導き出すことの重要性を説きました。
「帰納法」です。科学の誕生です。
これを自然科学だけでなく、社会科学に応用したのが、ヒュームです。
ヒュームは自然事象だけでなく、社会事象の中からも共通点を導き出し、応用できるのではないかと考えました。

社会事象の共通点からの応用→「こうすればみんな幸せになれる」
「道徳」の確立です。

3 現代的経験論
近代的経験論を発展させたのが、ご存知、社会科が生まれたきっかけを作った、ジョン・デューイの属するプラグマティズムです。

プラグマティズムの特徴は、経験を「記号」とのつながりとして捉えたところです。
言うなれば、「つながり」の学問と言ってもよいと思います。

このような時代ごとの変遷を見ていくと、最初の経験主義への批判が、
古代の経験論に対してであることが分かります。

現代的な経験論は発展して、「構成主義」を生み出すのですが、
これについては、別の視点から読書をしてみましょう。

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