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【深い社会】09 労働者たちは夢を描いた。

岩倉具視使節団が、世界の様々な国柄を視察したとき、
ヨーロッパでは、新たな「構成主義概念」が生まれていました。
もともとの中世ヨーロッパの構図、


貴族VS民衆


が、産業革命により大きく変化していたのです。


貴族 VS 資本家 VS 「?」


「?」の中身は何でしょう。
それは、労働者です。

ここまでのメール群を読んで、「右翼・左翼の話?」と思った方。
その通りです。
このころのヨーロッパの議会では、議長の右側に「貴族」、
左側に「民衆」が座ったので、「右翼」「左翼」という言葉が生まれました。

あれ?民衆?
じゃ、資本家、労働者ってどっちなの?

そう、両方、左翼なんです。


右翼:貴族 VS 左翼:資本家・労働者


この分け方で言うと、世界の政党のすべてが左翼です。
日本で言えば、自民党も、維新の会も、立憲民主党も、維新の会もすべての党派が左翼です。

ところが、歴史を積み重ねていくと、
「今まで通りを大切にしたい」派と、「変化したい」派に分かれます。
すると、「今まで通りを大切にしたい」派が保守派:右翼と呼ばれ、
「変化したい」派が革新派:左翼とされます。

人間の意識が、概念を作っています。
まさしく構成主義的変化ですね。

岩倉具視使節団が日本に帰り、政治は薩長土肥で行いました。
そこに、「税金払っているだから国会を開け!」
と自由民権運動が生まれます。
世界の問題が日本にも伝わってきたのです。


右翼:薩長土肥  VS 左翼:自由民権運動


ところが、伊藤博文が「立憲政友会」を作ると


右翼:立憲政友会  VS 左翼:自由民権運動(その他の政党)


となります。

というわけで、イデオロギーってとても相対的なふわふわしたものなんですね。
まさしく構成主義の産物です。

さて、構成主義の原理を作ったヘーゲルですが、その弟子たちも構成主義的に二つのグループに分かれていきます。
老へ―ゲル派と青年ヘーゲル派です。

青年へ―ゲル派のある一人を紹介します。
カール・マルクスです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/カール・マルクス

マルクスが生まれたドイツは、プロイセン王国として貴族がいたので、


右翼:貴族 左翼:民衆


となっていました。
マルクスの仕事は、「ライン新聞」という新聞での編集です。
ライン川の対岸にはフランス。
フランスでは、民衆が貴族と争い、自由を獲得しつつありました。

「フランスで起きている自由のための戦いが必ずドイツにもやってくる」

初期のマルクスは今でいう自由主義の立場から、政府を批判しました。
みなさんが気になっている「共産主義」は、実はフランスでできた概念です。
意外でしょ。
マルクスが共産主義を作ったと思っている人が結構います。

マルクスは「共産主義」のグループから何度かお誘いを受けますが、
そのたびに断っています。むしろ批判する論文を書いています。
「すべての生産物をみんなで分けるなんて馬鹿げている。」

しかし、断りつつも共産主義グループと交流を続けながら考えを深めていきます。
彼が悩んでいたのが、「経済と恐慌」の関係です。

「自由はいい。経済活動も活発になり、みんなが生き生きとしている。
でも、たびたび恐慌になる。たくさんの貧しい人たちが生み出され不幸になる。
あれはなぜだ。」

そして、人間の一番の本質は何だろう、と考えます。

「人間の一番の本質は・・・・『労働』だ。
働く喜びこそ、人間の本質ではないか。」

この考え方は当時のヨーロッパでは異質なものでした。
なぜならキリスト教では「労働」は楽園を追い出されたものが担う罪とされていたからです。
しかし、日本人にはとても納得できる考え方ですね。

「人間の本質が『労働』ならば、自由のための活動は、いつの日か『労働者』が中心となっていくだろう。
恐慌を生み出し、自分たちを圧迫する資本家を打ち破るに違いない。
『労働者』が政治体を作り、労働者が法律を作り、労働者の国ができる。
これを社会主義と呼ぼう。
そして、さらにその先には、みなが所有を放棄し、「労働」だけを価値のすべてとする、だれも見たことのないユートピアが生まれるだろう。
あ、これは『共産主義』そのものじゃないか。」

当時の共産主義グループは、第1回、第2回と大会を開くのですが、
あまり成功しなかったようです。
そこで、第3回の大会で、マルクスは宣言文の執筆を依頼されます。
こうして書かれたのが共産党宣言です。

「一つの妖怪がヨーロッパにあらわれている。--共産主義のという名の妖怪が。
旧ヨーロッパのあらゆる権力が、この妖怪にたいする神聖な討伐の同盟を結んでいる。
 法王とツァーリ、メッテルニヒとギゾー、フランスの急進派とドイツの官憲。
 およそ反政府的な党で、政府党から、共産主義だと罵られなかったものがどこにあるか、
 およそ反政府的な党で、自分より進歩的な反対派に対して、また反動的な政敵に対して、共産主義の烙印をおす非難を投げかえさなかったものがどこにあるか。
 この事実から二つのことが明らかになる。
 共産主義は、すでにヨーロッパのあらゆる権力から、一つの力として認められているのだ。」

その後、マルクスは、資本家と労働者の関係から生まれる原理を「資本論」にまとめ、世界に影響を与えることになります。

実際、マルクスの「資本論」を読んでみて、かなり面白かったです。
今の社会情勢にもぴったり合う内容が多いです。
共産党宣言だって、夢にあふれていて、冒険心があって、とても好感がもてます。
若者たちのわくわくした感じが伝わってきます。

「家族の廃止はおかしい?
いやいや、資本家が求める家族って何だ。
子どもから経済的に搾取しているじゃないか!」

「女性の共有を求めてる?
いやいや、我々が求めているのは、経済的奴隷となっている女性の解放だ。
資本家こそ、女性を経済的奴隷にしているぞ。
もっと社会に参加できるはずだ!」

ね。すごく納得できるでしょ。

ところが、この運動が、まさかあんな事件を引き起こすとは・・・


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