見出し画像

【深い社会】14 構成主義を射抜くプラグマティズム1本目の矢(パース)

おはようございます。
今日の朝ごはん、何にしますか。
ごはんですか。パンですか。

今日は構成主義を考えるために「パン」で考えていきましょう。

プラグマティズムを「道具主義」とする学者がいますが、これは誤解を生む原因となっています。

デューイが「道具」としたのは、「言葉」です。

私たちは、言葉の先に、その物自体「本質:パン」がある気がしています。

「パン」という言葉、その対象は、あなたが手に持っている「パン」。
なにがおかしい!

しかし、概念はその物自体の境界をあいまいにしています。

「これって、本当にパン?」
「食パン?でも、山型だぞ。イギリスパン?」
「他の食パンより値段は高めだったぞ。」
「イギリスパンて、どうやって食べるんだ。マーガリンでいいのか。」
「どうやって焼くんだ?ああ、トースターに入らない!」
「焼いたらいい香り。歯触りはサクサク。」
「でも、小麦の味わいはちょっと弱いかな。」
「ん~今日のパンは美味しかった。」

「パン」という言葉を、生活の中の様々な関係性の中で「道具」として試し、
「パン」の全体像を把握しようとしています。

「言葉を『道具』として使い、その本質を多様にする」

これが、デューイの言う「プラグマティズム」です。

プラグマティズムは、もともとパースが主張した考え方です。
パース
https://ja.wikipedia.org/wiki/チャールズ・サンダース・パース

パースは「形而上学クラブ」というグループを作り、アメリカにおける新しい哲学を作ろうとしました。

仲が良かったのが、ジェイムズ。
そして、ジェイムズの教え子がデューイ。

3人がプラグマティズムを推し進めた3本の矢です。
このプラグマティズム3本の矢で、社会科が求めるべき構成主義を射抜いていきましょう。

まず、パースは「記号学」を立ち上げました。

カント・ヘーゲルが作った構成主義。
なかでも、テーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼの弁証法は、強力な思考ツールです。

まず、テーゼ。しかるべきときにアンチテーゼ。
すると、発展してジンテーゼ。
テーゼ、アンチテーゼの矛盾は解消され、忘れ去られる。

この弁証法を政治体制に導入したのが、マルクス。
資本主義→社会主義→共産主義
と発展していくだろうと、予言をしました。

ちょっと、待って。
パースは考えます。

「まあ、テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼ。それは分かる。
でも、ジンテーゼが、いつも優れているなんて、だれが決めたんだ。」

より優れているとしたジンテーゼ。
でも、忘れられてしまうテーゼの方が、優れているかもしれません。
そこで、パースは、概念の良しあしを抜きにして3つの概念を記号にしました。

テーゼ・・・1番
アンチテーゼ・・・2番
ジンテーゼ・・・3番

なんて、安直!

安直なんですが、パースがすごいのはそれぞれをきちんと分析していることです。
例えば、2番のアンチテーゼ。
私たちが、すでにもっているテーゼを揺るがす存在。
アンチテーゼを思いつくきっかけにも、様々なパターンがあるはず。

2番(第二次性)・・・強制・闘争・ショック・力・中断・衝突・反作用・反応・事実・経験・指標

「え?、これ本当にパン?」「パンに見せかけた別のものじゃないの?」

私たちがアンチテーゼを持ち出すときのきっかけをきちんと列挙しています。

さらに、3番(第三次性)ジンテーゼの分析がすごい。
「私が手に持っているこれは、本当にパンだろうか。」
思考の末・・・導かれたものは・・・

3番(第三次性)
①記号性
「『パン』という概念は記号にすぎぬ。パンとかパンじゃないとかどうでもよろしい。」

②思想性
「でも、あなたがパンと思ったらパンでいいよ。」

③法則性
「パンは主に小麦を発酵させて、焼いたものをいう。パンと呼んでいいんじゃないか。」

④一般性
「だいたい、ほとんどの人はそれをパンと呼んでいるぞ。」

⑤連続性
「小さくちぎってもパンはパンだ。大きいままでもパンはパンだ。」

⑥習慣的性格
「何より、今まで私はパンだと思ってきたじゃないか。」

⑦条件法的性格
「まあ、それも、このまま食べているからだけどね。小さく挽いたらパン粉になっちゃうし。」

⑧統合性
「様々な検討の結果、これをパンと呼んでしまおう。」

⑨合理性
「実際、パンと呼んでおいた方が、いろいろ得なことも多いし。
別の言葉使ったら他の人にも伝わらないしね。」

私たちが、止揚した概念と思っているジンテーゼも、様々な要素で分析できることを、パースは記号化して、表明しました。

えっ、くどくどしつこい?
でも、このような見方・考え方を持っていると、「パン」と言う本質を見失わずに済むんです。

インド人「それ、ナンだよ。」
パキスタン人「チャパティだね。」
大阪人「おこのみやん。」
おばあちゃん「おやきだよ。」

「だから、パンだって!」

この、「人間個人が本質を見失わないために、構成主義はある」という立場は、極めて重要です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?