鎌倉殿の13人 第45回「八幡宮の階段」

はじめに

 一時はあらぬ方向に進んでいた運命の歯車が、まるで何かに吸い寄せられたかのように八幡宮の階段に集まったところで前回は終了となり、なんとなく肩透かしを食らった状態のまま、今回を迎えることになりました。

義時はどこまで把握していたのか

 武装していた義村は参拝の列に並んでいると思っていた義時から肩を叩かれ驚愕の表情を隠せていませんでした。義時はその場にいた泰時から自分が公卿の討伐対象となっていることを始めて知ったのですが、表情は驚いていたものの、このままいくと討たれるのは仲章なわけで、内心ではほくそ笑んでいたのではないでしょうか。

 当初義時が描いていた展開では、仲章はトウが討ち取り、公卿が実朝を討ち取った直後に義時が公卿を討ち果たす流れを思い描いていましたが、仲章を討ち漏らし、太刀持ちの役も奪われた時点で、もはやこれまでか…と思っていたはず(公卿が実朝を討ち取っても、仲章がいる限り自分が失脚する可能性が高かったと思われるので)
 なので、公卿の敵討ちに自分が含まれていると知った時点で、自分は頼朝のように天に生かされていると錯覚してしまったのかもしれません(これについては別途下のほうで書きたいと思います)

運命の階段

 どこから忍び込んだのか、実朝と公卿の前に歩き巫女が現れてどちらにも「天命に逆らうな」と話しかけました。結局この言葉に背中を押され公暁は敵討ちを決行し、実朝は泰時に持たされた短刀を出すものの戦わずに死ぬのが天命なのかと、斬られる事を受け入れてしまいました。
 その後、歩き巫女は誰に対しても同じ言葉を投げかけていることが判明しました。既に耄碌してしまったのか、それともあの場にいた全ての人物に運命を受け入れるよう話しかけていたのかは謎のままです(歩き巫女が今後登場することがあれば、自分の意思だったのかわかるかもしれません)

 公卿は背後から太刀持ちを斬りましたが義時ではなく、仲章に変わっていた事で計画に揺らいだ事と、背中を押されるまで実朝を斬るべきか逡巡していたこともあってか、実朝を斬った後の読み上げではまるで呪いが解けたかのように動揺しているようでした(子供の頃に受けた比企尼の呪いが解けたという事が含まれているのかもしれません)
 実際の公卿はその後の行動が少し狂気を孕んでいたので、本作では若干マイルドな形に抑えられていたようです(実朝の首を持ち歩いたとの話があるんですが、ドラマでは将軍を引き継ぐ時に受け渡された源義朝のドクロ(とされているもの)を持ち歩くことにしていました)

 実朝は斬られる事を受け入れてしまいましたが、一説には一度笏で刀を受けた後に斬られ、最後に「広元やある」と話したとあり(ドラマでは実朝と広元の関わりは薄かったですが、泰時と関わりを大きくしたいために少し役割を変えているっぽいです)
 また一説には、公卿は実朝の衣を踏みつけて転倒させ「親の敵はかく討つぞ」と叫び頭に切りつけ首を落とし、次いで源仲章を斬った後に階段の段上まで上がり「父の敵を討ち取ったり」と周囲に叫び姿をくらましたともありますが、別の話には参拝の列にいた者が鳥居の外に逃げてくるまで何が行われていたのか分からなかったともあり、複数の説が存在しているようです。

 事件の黒幕については、最近の研究では公卿の単独犯行説が優勢となっているようです。本作では最終的な決行は公卿がしましたが、その公卿を唆していたのは義村であり、また義時は事件を起こす事を知っていながら見逃していたので、諸説ある形に見せるよう巧妙に脚本を練り上げたのかなと感じています

義時と義村

 義時は義村が自分を討ち取ろうと画策したことを確信しており(一対一で話していた時に義村が襟を正した事で確信したはず)三浦一族を滅ぼす事も出来たと思うのですが、ドラマの中では結局見逃していました(実際の義村はあわよくば…と考えていたかもしれないですが、少なくとも義時が生きている間は服従の姿勢を崩してはいないように思われます)
 義時は今回の件を見逃したことで貸しを作り無理矢理従わせようと考えたのか、それとも心の中ではまだ義村を信頼したいという気持ちがあるのか、今はなんとも言えないですが、義村を潰さなかった事によって義時の最後に何か影響を与えることになるのか注目したいと思います。

天に生かされたと信じた義時だが

 天に生かされた(と思い込んでいる)義時はもしかすると頼朝を超えたとも思ってしまったのか、周囲に対し更に高圧的になっていくのでした。

・のえに対して
 流石に前妻と比べての発言は余計な一言だったのではないかと思われます。恐らくこの件がきっかけとなり義時に憎しみを抱いた可能性が高いかもしれません。

・泰時に対して
 事件の直前、泰時が実朝を助けに行こうとしたところで義時が袖を掴み阻止しようとしていました。泰時は義時が実朝が暗殺されるのを望んだとみなし、義時の采配に徹底的に反対するようになりました。これについては義時の政治姿勢について反発はしているが、人としてどこまで憎んでいるのかはまだ不明です。最終的にある程度は理解するような方向に落ち着くのではとも思っています。

・政子に対して
 物語の中盤で頼朝が亡くなった後、伊豆に帰りたいと話した義時を引き止めたのは政子なわけで、一心同体だと脅しをかけた義時を責めてもしょうがないですが、それでも自分の子や孫が次々と葬り去られるのはとても辛かったと思います。
 これから尼将軍となることで義時と敵対するかもしれませんが、京に対して共闘しなければならない場面もあるでしょうしどのような関係性に落ち着くのか気になる所です(今回、自死しようとした所で仲章邸から逃れたトウが阻止するという場面がありましたが、なぜトウがその場にいたのか分からず、誰かの指示があったんでしょうか?仲章の所から逃げ出す途中で偶然発見し自らの意思で止めようとした?善児の時もそうだったと思いますが、雑色が人の心を持ち始めたら終わりが近いかもしれないので、次回トウがどうなるのか気になる所です)

 次回予告には、実衣が捕縛されている場面が見受けられ、恐らく息子である阿野時元に絡んだものと考えられるのですが、時元はともかく実衣までもが義時によって躊躇なく処罰されてしまうのでしょうか(まぁ流石に政子が防ぐのではないかと思ってますが…)

鎌倉と京の間は険悪に…

 京にも実朝と仲章が討ち取られたとの知らせが入り、その事実に驚愕しながらも後鳥羽上皇は次なる鎌倉への手立てを思案していましたが、鎌倉側ではあえて親王将軍の願いたてをして断られるよう仕向けていました。
 ここまでは後鳥羽上皇の思惑通り仲章を通じて実朝をコントロールし、更に親王将軍を送り込む事によって鎌倉を骨抜きにしようと企んでいましたが、実朝と仲章両方とも討たれてしまった事によりそれが瓦解してしまいました。北条一族が鎌倉の権力を握ったままであることを後鳥羽上皇は快く思っていないわけですから、京と鎌倉の関係は険悪になることは間違いないでしょう。
 残り3回という状況で、ボリューム的に尺が足りるのか非常に心配なんですが(今回の事件についてもじっくり3回分を使っていますし、去年の青天を衝けでも最終盤の20年間がかなり端折られてしまい凄く勿体なかった)まずは次回も楽しみ待ちたいと思います。