鎌倉殿の13人 第44回「審判の日」
はじめに
前回の段階で既に歴史的事件に至る流れが描かれ、そして今回のサブタイトルが審判の日となっていましたので、放送される直前で残り5回と考えれば今回で事件の全てが描かれるものと思い込んでいたんですが、まさかの展開に終始目が離せずという状況に…
今回も、気になったポイントについていくつか書いていきます。
義時と白犬
冒頭、いきなり白い犬が正面に映し出され、その後義時と対峙するという場面がありました。この場面自体は、義時が半年前に見た夢だったんですが、何かの暗示かと気になった義時は、運慶に如来像と御神体となる像を作らせ薬師堂に祀らせました。
吾妻鏡には夢の中に白犬が現れ、翌年の将軍参拝の折には供奉するなというお告げがあったとの記載があったり、また、いくつかの場面に白犬にまつわる逸話がが出てくるなどあり、更にオープニング映像にも白犬が登場したりしていましたので、この場面についてはある程度想定はしていましたが、運命を暗示させる鈴の音と組み合わせる事で、流石の義時もただ事ではないと感じさせる効果となっていました。
仲章の目論見
前回も少し感じてはいたんですが、源仲章は政敵にあたる義時にペラペラと喋りすぎじゃないかと思いました…しかもワザと目に付かせるかのように、のえと密会して義時にカマをかけさせたりもしていました(頼家の死の原因について、かなりの情報を握っている感じでしたので義時の命運も後少しと傲慢になっていたのかもしれません)
仲章の目論見は、やはり鎌倉を乗っ取り支配するのが目的でした。用意周到(というか手下を使う事に長けているのか)な仲章は実朝に対してもうまく取り入っており、いずれは幕府を西に移すと発言させるまでに至りました(実際の仲章は実朝に気に入られるくらいなので、それなりに小賢しかったかもしれませんが、今回ほど策略家というわけでもないため、実朝の御所移動の案は創作となるんですが、実朝と後鳥羽上皇はお互い好意的であったという話もありますので、このまま親王将軍に鎌倉殿が譲られていたら、いずれは御所を移動させるような形になっていたかもしれません。
仲章の本心を知った義時は、大江広元の助言を受けもはや生かしておく訳にはいかないとトウを刺客に出しましたが、義時が雑色を使っている事を知っていた仲章はあっさり捕らえてしまいました。
トウが捕らえられた事によって、これまでの悪事を知る証拠にもなり得る訳ですから、義時もこの時は肝を冷やしたかもしれません(捕らえられるのも計算の内ではないかとの意見も見られたんですが、そこまで万能ではないと思いますし、仲章が出てきた場面の表情は本当に狼狽したとみています)
話は逸れ、トウについて少し書いてみたいと思いますが、頼家暗殺後からここまで(大体15年くらいの間)特に暗殺に関しては殆ど成功しておらず、今回に至っては捕らえられてしまっているわけで、もしかすると善児への敵討ちを果たした事で、ワザと失敗している可能性もあるのではとも思ったりしています
全てを知った実朝は
実朝は公暁に狙われている事を聞かされていましたが、何故なのか納得がいかず、兄頼家の死の真相を三善康信に問いただしました(既に80歳もなる高齢ではありましたが、この時点ではまだ問註所執事の役に就いておりました)最初は口を閉ざしていたものの結局は断りきれず実朝は事の経緯をようやく知りました。
全てを知った実朝は、政子の元に赴きこれまで何故自分に話さなかったと問い詰め、北条が生き残るために仕方なかったと聞いて憤り、その足で公暁の元に駆けつけて頭を下げ侘びました。しかし、自分を襲おうとしている本人に直接詫びる事について間違ってはいないものの、このような切羽詰まった状況の中で一人で赴くのはあまりに警戒心が無さすぎたと思います。
実朝は自らの謝罪と共通の敵は北条だという認識を公卿に理解して貰えたと思い込んでしまったが故に、警備を厳重にしなかったのか、それとも公暁に襲われたる事になっても仕方ないと思ったのか、結局予定通りに参拝に向かってしまいました。
ドラマ内では目まぐるしく動き回る一日だった実朝ですが、実際は参拝の当日に当の本人がこんなあちこち誰かに会いに行ったなどという事もなく、大江広元は虫の知らせがあったのか何か身を守るものを着用して欲しいと進言するも(本作ではこの役割は泰時が担ってました)その場にいた仲章に前例が無いと聞き入れて貰えなかったという話はありましたが、まさか命に関わるような事態になると思っていなかったのではないでしょうか。
公暁の心の中
きっかけは義村の唆しではありましたが、既に公暁は実の母親からの言葉すら受入れないほど、北条(と実朝)への恨みを募らせていました。
そのような状況の中で、襲撃する相手である実朝が謝りに来たわけですから、その場では謝罪を受け入れて参拝の時間に間に合うよう促したかのように見せていましたが、恐らくはその場で実朝を斬ってももう一人の仇である義時を討つことが出来なくなるため、実朝を泳がせたと思います。
公暁の襲撃までに至る実際のエピソードとしてはあまり無いのですが、鶴岡八幡宮別当として参籠してから一向に髪を下ろさないために怪しがられていたとの話しもあるため、だいぶ前から思う所があったのではと思っています。
実際に、ドラマのような義村からの焚き付けがあったのかは知る由もないですが、実朝の猶子となっていたのに政子の命で出家させられた時点で自分が疎まれているという事を感じていたはずで、そこを誰かに付け込まれた、もしくは勝手に憎しみを膨らませてしまったのではないかと想像しています。
全ての歯車が狂った結果、運命の階段へ
今まで事前に見てきた情報と、全く違う流れで推移していったので、最終的に事実と後世に広まっている歴史を無理矢理改ざんさせたみたいな話にしちゃうのかと思ったんですが、各々の思惑がどんどん狂い始めた結果、最終的に知っている歴史に近い状況に収まるという展開には、もう驚きしかなかったです。
結果的に仲章から太刀持ちの役を奪われた?義時でしたが、この時点では公卿の最終的な目標が自分になっているとは想像していなかったと思います。(直前の時房との会話の中で、実朝が斬られた後、自分が公卿を成敗すると語っているため、実朝のみ狙われていると思っていたはずです)
果たして運命の歯車は自分が知っているような形の決着となるのか、次回も楽しみに待ちたいと思います。