鎌倉殿の13人 第33回「修善寺」

まえがき

 権力を剥奪された頼家が前回ついに配流されてしまいました。義時としてはこのまま大人しく過ごして貰いたかったと思うのですが、頼家の北条への恨みは深まるばかりで、すぐにも再燃しそうな状況でした。
 権力を剥奪されたとはいえ新旧鎌倉殿が存在する歪な状態となってしまったことで、このまま何事もなく推移するとは到底思えず、最悪な運命を迎えることになるまでの過程がどうなるのか注目してみました。

権力を振りかざす時政

 比企を全滅させ、頼家を追放し新たに実朝を第3代将軍に据えた時政ですが、自身は初代執権に就任して好き勝手に権力を行使し始めたのでした。
 しかし本作での時政は政治に疎い感じで描かれており、実際はりくの言われるがままに権力を行使していたのでした。りく&時政は比企が治めていた武蔵の国を独り占めにするべく朝廷に対し武蔵守に任官する手配をします(武蔵国は比企だけでなく畠山や足立の土地も含まれていましたが事前に相談することもなく勝手に進めたため、今後の新たな火種にもなるのでした)
 りくは自分の思うがままの状況になりつつ有ることで、権力に酔いすぎて暴走し始めている感じですし、いずれ痛いしっぺ返しを食らう事になるでしょう…

荒れていても諦めていはいない頼家

 頼家は、このまま忘れられるのは嫌だとばかりに無理難題を鎌倉に要求してきました。頼家を生かしたままではいつ鎌倉が二分するかも分からず対応に苦慮しますが、とりあえずは監視を増やして様子を見ることにしました。
 そういえば、このシーンとは別に政子が干し鮑を持参して修善寺に訪れる場面がありましたが、史料には頼家を見限って修善寺送りにしたのは政子が主導したという話もあり、本作での政子像としては冷酷な面を見せず親子の情などの優しさがあるという部分を強調したいのかもしれません(ただ、そのままでは義時と対立したままになってしまうため、この先覚悟を持つような場面があるのかもしれません)

後鳥羽上皇の暗躍

 京では後鳥羽上皇が少しづつ鎌倉に干渉しようとする様が描かれておりましたが、鎌倉に対しては平賀朝雅を通じて婚姻の話を進めつつ、頼家がいる修善寺とも通じようとする手段はまさに後白河法皇のやり方と同じで血は争えないというところでしょうか
 そして今回から本格的に源仲章が上皇のスパイのような形で鎌倉に下向することになりました。今は詳しく書きませんがこの源仲章という人物は義時と生死に関わる所で大いに関係する事になるはずですので、実朝政権の中で義時と争う事になるのか、はたまた協調する事もありうるのか注目していきたいと思います。

実朝の教育方針

 そういえば、源仲章は前々回、比企の依頼で全成と実衣の子供である阿野頼全を京で誅殺(実際は指示だけで傍観しただけ)していましたが、恐らく実衣はそれを知らず?に仲章を実朝の教育係として紹介していました。
 この事実が今後実衣の知ることになるのかは分からないですが、もしかすると某事件に絡んでいく流れに繋がる可能性もありうるので、いつか答え合わせを楽しみに見守っていきたいと思います。

義時の本音はどこにあるのか

 八田知家の監視によって頼家が後鳥羽上皇に北条討伐の院宣を依頼しようとしていることが判明したことで義時はこれ以上見逃す事は出来ないと判断し頼家を誅殺することを決めました。
 その話を聞いた泰時は頼家を逃がすために修善寺に向かいますが義時はあえてそれを止めることはしませんでした(泰時が説得したところで、もはや頼家は逃げることはしないだろうと見据えたのかもしれませんが、泰時の行動が昔の頼朝に対する自分の立場と重なったので止められなかったんだろうと思います)
 義時は気を紛らわせるため?に一番気を使わなくても良さそうに見えた和田義盛と飲み始めますが、たまたま和田邸に訪れていた運慶から言われた言葉に救われたように思いました(表情の変化は無かったものの、運慶の言葉どおり現状は完全に悪に染まった訳では無さそうです)

頼家と善児の最後

 吾妻鏡には、頼家の最後についての詳細は語られておらず、ただ死んだとの報告があったのみとなっており、慈円が記した愚管抄には少々衝撃的な最後が記載されているため、どのような最後を迎える事になるのか気になっていましたが、違う意味で衝撃的な最後になったと思います。
 善児に依頼をするシーンにて兄の宗時が持っていた袋が善児の手元にある事を知り善児に討ち取られた事を初めて知ったわけですが、義時が善児を責められようかと話した時にトウが現れ、直後すぐに依頼をする場面に切り替わったので、単純にトウの独断で善児にとどめを刺したのかまではわかりませんでした。ただ最後にトウと向き合った所で善児が一度頷いていたので、いずれトウにやられる事も承知の上だったんだろうなと思います。
 頼家の最後までの流れについては、泰時が猿楽師に紛れ込んだ善児を見つけ出したまでは良かったものの善児とトウには敵わず気を失い、気が付いた時には既に手遅れに…(泰時は巻狩の時は頼家以上にすごい所を見せていたので手練の二人相手とはいえあんな簡単に失神させられるのか少し気になりましたが、話が進まなくなるのでここまでにします笑)
 それにしても、まさか頼家と善児の間でここまでの打ち合いになるとは思ってもいませんでした(結果的に善児が「一幡」の文字を見て隙が生じ、頼家にやられかけたところをトウが討ち取った形となりました)
 かなりの抵抗を受けつつも二人がかりで討ち取ったという意味では、愚管抄に近い形で表現されたのではないかと思います(急所を取られて頸を絞めたと書かれていたり、また別の史料では漆入りの風呂に入って体中腫れ上がった所にとどめを刺されたなど、かなりキツイ話などもあったりするので、今回のような表現で逆に良かったのかもしれません)

あとがき

 ラストの善児のシーンが衝撃的で、次回予告が頭に入って来なくて後でホームページの予告を見たんですが、メインは義時の結婚になるんだとしたら、とりあえずは一息つく回になるのかな?
 この数回、息つく暇もないほど辛い内容が続いているので、そろそろ一息付きたいなぁと思っていたところで少し安心したんですが、今後さらに辛い話も待っているので年末まで心が保てるのか少し不安になってきました…