brooch
一瞬に見える道標は、夜の背を照らして瞬く
ぼんやりと見送ったわたしは おなじこの街に住むひとたちと足音をそろえて 器用に改札をくぐり抜けた
道ゆくそのひとりひとりが ワルツのように揺らす影を わたしはいつも、物語を観るように辿り いつか帰り道へと消えてゆく背中を見送った
まばらに散らばり、どなたかの気配もすっかりと消えた頃 照らす街明かりが 帰り道をいっそうそのものにして見せた
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あの月は
たとえば夜が留めたブローチ
月の光を瞼に映して わたしは この胸に揺れる灯をおもった
名前も、約束も、あの夜も
何度でも思い出す言葉も
ぜんぶ誰かが わたしに留めてくれたブローチ
わたしの宇宙に落とされたそれらは 花弁が溢れるように 砂の落ちてゆくように ゆるゆると溶かされながら 星になってゆく
そしていつの日か ぼんやりとひかりを放ち この胸に灯を飾る
きみが留めてくれたブローチが 間違えでないと照らすから。
この甘やかな淡いひかりで 夜を照らし歩いてゆこう
あの灯りの元へ 帰ろう
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むかしに書いた詩だ
前はこれを詩だと言うことを嫌ってたな。なんだか気恥ずかしい気がして。認められるくらいには時間が経ったけれど、やっぱりじぶんの書いた言葉たちを好きだとおもうし、これが原点なのだとおもったから この場所にまた記しておくね
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