地理歴史科・公民科に対する基本的な考え方
「歴史とは現代と過去との絶え間ない対話である」という E.H.カーの格言があるが、学習指導要領に記載された「対話的な学び」とは、日ごろ接している友人や教師のみならず過去の人々と史料を通じて学ぶことである。同時に、そのときに過去を見る目は現在の自分自身の在り方に規定されている。自分自身が現在どのような問題を抱えているのか、それはなぜ問題になったのか、そうした問いはまさに自分自身の切実な問題であり、そこに主体性が現れると考えている。一見、現在の自分とは無関係にみえる過去に対して、自分自身の生活とのつながりを見つけ、また、過去という自分の力では何も作用することのできない「他者」の存在と接することで、自分自身の世界観を拡大してほしいと考えている。また、歴史は「史料」を解釈する営みである。史料は好き勝手に解釈できない。様々な史料や文脈や先哲の解釈と照らし合わせながら、それが妥当かを吟味する学問である。まさに情報活用能力の神髄として、情報を扱う力、情報のなかにある様々な「言葉」に触れ考えられる思考力を身につけてもらいたいと考えている。
公民の学習は「公民的資質」として、「全体」に奉仕する人間を育成するのではない。自分自身の現在の在り方に問題意識を持って過去にその要因を求めることが歴史であり、空間的な要因を思考することが地理学習であるならば、公民はまさに未来を思考することである。自分自身が生活している中で感じている違和感や問題が、実は社会の問題そのものであり、自分自身の生活をよりよくするために思考し、思考した内容を実践していく過程が「公民的資質」であると考えている。それを踏まえ、まずは「当然」「当たり前」「普通」とされている内容を疑うこと、そして自分自身が正しいと考える内容を模索すること、そして、その正しさを議論することで多くの価値観に出会うこと、その中で未来を構想していく力を身につけてもらいたいと考えている。