DXの思考法 西山圭太/冨山和彦(解説)|経営ノート
ものすごくモヤモヤするが、好き
脱自前主義
非常に難しいことがわかりやすく書かれている一冊。個人的な感覚では何となく理解でき、好きな議題だが、正直完全に腹落ちしていない。ものすごくモヤモヤしている。わかりやすく丁寧に書かれていることは間違いないので、これは私の理解の問題。完全に腹落ちするのは1年後かもしれないし、3年後かもしれない。
私はDX(デジタル・トランスフォーメーション)という流行り言葉がなくなればよいと思っている。今の時代DXは当たり前のことであって、これは目的でも何でもない。ただの一手段にすぎない。
企業にとって大事なこと、つまり目的はCX(コーポレート・トランスフォーメーション)であって、企業を継続的に儲かるように変えることである。そのための手段としてDXがあるに過ぎない。
さらにこの書籍ではもう一つのX(トランスフォーメーション)、産業を丸ごと転換するIX(インダストリアル・トランスフォーメーション)にも言及している。ここまでくると、ゲイリー・ハメル&C・K・プラハード「コア・コンピタンス経営」の "未来を創造する" 話と近い壮大な話のような気がする。
この第5章を読んで、個人的に「そうだよな」と共感したことは以下の3点。
規律やコントロールではなくて、コンテクストによって会社を引っ張る
まずは本棚を見る。あれば使い倒す(脱自前主義)
これまで競合だと思っていた企業が明日の競合だとは限らない
1に関して言えば、日本の多くの企業は間違いなく企業風土を抜本的に変える必要がある。規律やコントロールを重んじる軍隊式教育のような学校を優秀な成績で卒業した人達によって構成され、軍隊式のピラミッド型組織を引き継いだ官庁をまねた民間企業の文化。DXをとやかく言う前に、まずこの文化を変えなければ何もはじまらない。
2に関して言えば、例えればどれだけ周りに「すごい人達がいるか」を知ることと、その人達を頼って組み合わせ、そして自分はすごい人がやらないところに集中する意思決定が求められる。なんでも自分でやれてしまう人や、自分がやらないと気が済まない経営者をたまに見かけるが、そういう人は考え方を変える(脱自前主義)ともっとうまくできる時代ということだ。
3は今まで働いてきた中で、ものすごく痛感している。例えば10年以上働いていた広告業界。俗に言う総合広告代理店は、20年ほど前はネット専業と呼ばれていた代理店をまったく競合とみていなかった。またインターネットメディア会社も競合だと思っていなかった。今はどうだろうか。
また、一時期働いていた百貨店業界。百貨店各社は、伊勢丹三越、髙島屋、大丸松坂屋、セブン&アイHD等の動きばかりを気にしている。しかし、どう考えても百貨店業界の売上と顧客を奪ったのは同業他社ではない。
さらに言うと、最近まで働いていた企業向け人事・総務代行サービス業界。今まで大きな変化がなかったこの業界も、HRテックの台頭によって2030年までに大きくプレーヤーは変わるとみている。
全てに共通するトリガーは、テクノロジーの進歩だ。
企業文化と意思決定
最近思うのは、企業文化と企業の意思決定は深いところでつながっていて厄介だということ。厄介というのは、心理的なことを考慮しての個人的感想だ。
まず、企業文化。転職経験がある人ならわかると思うが、ある組織に外部から入っていくと、まず企業文化にぶち当たる。スッと飲み込める場合もあるし、違和感を感じる文化もある。
企業文化は、構成メンバーの行動によって作られていき、長く居ればいるほどメンバーになじんでいく。それがそこに居る人達のアイデンティティみたいになるので、長く居る人ほど外から来た、あるいは見た人に企業文化の欠点を指摘されることを拒絶する。これが人の心理だ。
次に企業の意思決定。これは、結論、組織文化からくる行動の一つだと考えている。たまに、企業の意思決定(つまり、戦略)が冷静に外からみると「?」と思うものがある。いわゆる迷走だ。ただ、これもその企業の文化を理解すると、まともな意思決定に見えてくることもある。
例えば、経営が苦しくなると、その企業の成長領域を売って将来の利益につながらない創業事業を守ろうとする。すでに産業構造が変わっており、衰えつつある産業にもかかわらず延命しようとする。過去の大きな遺産を守るために、未来の雇用をなくそうとする。
創業事業は創業者の思い入れもあるし、規模が大きくなっていればその事業に従事する労働者も多くなる。現在の利益も考えると未来はどうあれ、切りづらい。これも人の心理だ。
結局、ある側面から見れば善でも、別の角度から見たら悪であるように、内の理論からすれば正しい意思決定でも、外の状況からすると間違った意思決定ということは多々ある。
正解はない。ただし、こういうことかもしれない。
Set goals for yourself to ensure a constant sense of purpose.