EMMA(Re)が嬉しかったおはなし。
EMMA(Re)が終わってしまった!
そしてもう一週間以上が経過してしまった!早すぎる!
カテコで春陽さんも仰られていたが、まさか初演からわずか半年後の再演になるなんて。
確かに再演は望んでいたけれど、こんなに早くまた黄泉の国の住人に再会できるとは思わなかったので、やはり待ち望むものは声に出して叫び続けるものだな…としみじみ思う。あとがきの茅原さんのお話ではないけど、言霊の力の強さを感じてみたりなど。
初演と再演。
想像していたよりも変わっていなかったし、想像していたよりも変わっていた。矛盾した感想と思われるかもしれないが、素直な感想だ。
基本的なラインは変わらずに、よりキャラクターひとりひとりを掘り下げて、個性やパーソナリティの深いところまで見えるようにしていた。前作ではFCイベントに重きを置いていたために端折られていた点を、丁寧に丁寧に噛み砕いていたことはとても良いブラッシュアップに感じた。
特に新キャラの森島縁さん演じる「本田文子」が、まさかの展開を生み出すきっかけになるのが、まさに同じだけれど同じではない『再演』の醍醐味で堪らなかった。
ご本人は「賛否両論があるかも…」ととても不安そうであったが、あえてショコラと全く接点がないところで物語を大きく変えていく役目を果たしていたところに春陽さん脚本の妙を感じたし、またひとり愛すべきキャラクターが増えてしまった…!と嬉しい気持ちでいっぱい。
これは個人的なこじつけだが、奇跡とご縁で結ばれた再演での追加出演者のお名前が「縁」さんなのは、ちょっと出来過ぎな気もする。笑
本田のジェラート物真似、世紀末救世主伝説感が漂いすぎていた!毎回めちゃくちゃ笑ってしまっていた。好き。
公演直後にfusetterなどを使用して呟いた衝動的な感想としては、兎に角ラストシーンがゾワッとした。それに尽きる。衝撃だった。
血も涙もないように見えて、あの中で一番自分の現状をそのまま馬鹿正直に受け止めているジェラート。再演はそんな彼の深い深い闇の部分に迫っているシーンが多かったのが堪らなかったのだ。でもまさかあんなラストに繋がるなんて。
台本を読まずに臨んだ初日は中盤のジェラートの涙にびっくりして。先日観劇した劇団5454本公演「ト音」での板橋さん演じる秋生の涙を思い出したりもしつつ。
板橋さんの演技は見れば見るほどぞっこんになるのだが、その中でも咳をした瞬間のジェラートの表情が回を重ねるごとに困惑を極めていくのが、生の演劇の進化を感じて堪らなかった。
初日、2日目は上手で観劇していたので表情の仔細よりも背中から伝わる雰囲気を感じ取っていた。
突然の出来事に驚愕を抱える間も無く刹那暗転、闇に包まれる初日。先程までの楽しげな空気に一筋の寒気が吹くような暗転で幕を閉じる昼公演。
そして千秋楽は下手から観劇。ここでようやく表情をきちんと確認できる。
咳の後、じわりじわりと影に引っ張られるように動揺を残した表情をぼやかすような暗転。
全部よかった。よすぎた。ゾクゾクして鳥肌が立った。
なんて不穏なラストなんだ。
これが消滅でも、はたまた奇跡の転生の予兆だとしても、彼の心中を蝕む絶望は如何程か。嗚呼ずるい。
前述したジェラートだけではなく、全てのキャラクターにおいてひとりひとりの出番が増えた結果、ショコラとわーきゃーはしゃぐエクレアや、前作よりも周りを巻き込み、周りに巻き込まれる加藤が見られたりと、楽しい時間が多くなった。勿論きんつばや優助も。
個人的には春陽さんの演技が大好きなので、本田が増えたことによる加藤の出番増は本当にありがたい限り…。初演からツボにハマっているワードは消えないまま演じられているのも嬉しく思えた。何せパワーワードジャンキーなので…。
本田の存在は、既にあったくだりにドタバタ感を増すきっかけになってるのも良いし、場を荒らすだけのキャラかと思えば、結果としてジェラートのパンドラの箱に触れて存在を大きく揺らがせるきっかけにもなっているのがとっても良かった。
本田の登場と、再演でのより細かい状況描写で、本田や加藤の存在がショコラと同様特殊な位置にいることがわかるし(天国に行っていないからまだ記憶を失っていないし、死神でもないからきんつばのことを忘れていない)、だからこそジェラートの気持ちを揺らすことが出来たんだろうとも思う。
まあそうなると、閻魔でも死神でも魂でもない、唯一の「鬼」とは?という疑問に繋がってしまうのだが。そこまで追求するのは、野暮かな。
さて。茅原実里さんという人間は、触れたもの全てを芽吹かせ花を咲かせるような…そんなふうに周囲を変えていく力がある…と常々考えているのだが、今回の再演ストーリーでもそんな彼女の要素が顕著に生かされていた気がする。特にエクレアに対して。
最初は感情を全く理解できない、理解するようにできていない死神であるエクレアが、最終的にあんなに感情豊かになるとは。初演でも柔軟に理解を示してくれているキャラクターではあったが、まさかあれほど暴れまわってくれるなんて。無茶苦茶面白かった。何より「恋」を歌い始めるシーン、楽しすぎた!花瓶がマイクになってるなんて予想外だったし、ずるい。
前回に比べて色々ストーリーの流れが自然になっているのも、このエクレアとショコラの戯れが増えたから、という理由があるかもしれない。
女性同士でなきゃ表現できない…いや人では無い閻魔と死神ではあるのだが…女性の要素を持ったキャラクターだからこそ、感情のわずかなゆらぎに気付くことができるのかもしれない、なんて考えてみたりして。
きんつばがいなくなったことにショコラが気付くシーンも、初演より自然になったと思うし。
しかし、いくらでも見ていられた。ショコラとエクレアがきゃいきゃいしているシーン。とっても、とっても可愛かった。
今回は明確な笑いどころも増えてて楽しい。大体エクレアのシーンにはなってしまうけれど!告白のくだりは、完全にコントで好き好き。
一方でラストシーン、お別れのシーンでの絵麻からジェラートへの言葉も、より説得力が増している気がした。
現世への帰り方も初演のように唐突じゃなくて、ショコラの悩みを加えることでより自然になっていたし、深みも増していた。
前作では全く存在しなかったショコラの「不安」の部分。それが無いことが前作のテンポの良さの理由の一つでもあったんだけど、今回の演劇らしさを意識した上ではこの新たな要素は必要不可欠だったのだろう。
カテコでも春陽さんがここの部分のお話をしていたのが印象的だった。
私は、このシーンが「ショコラによって感化された死神たち」によって救われる構図であったのが、非常に好みだった。
このあたりの流れは、なんだか茅原実里さんそのものすぎてドキドキしたのだ。ファンから見えている茅原実里さんの人生そのもののような…。フィクションなのだが、ノンフィクションのような。デジャヴに近い感覚。
その既視感はおそらくFC会報で茅原さんと春陽さんの対談の記事を読んだ時に似ている。春陽さんから見た茅原実里さん評が完璧すぎたのだ。
私はあの対談がとても好きで、「この短い期間でこんなに的確に人間を捉えられるのか」と、春陽さんに対してものすごく感激したし感動したし驚愕したし、信頼しかなかった。人の本質を捉える力の強さを感じた。だからこそ、今回の脚本もそんな春陽さんの意気と粋を感じて、ファン冥利に尽きる思いだった。
このブログの冒頭にも少し挙げたが…脚本のあとがきに「言霊の力はすごい」と茅原さん本人が仰っていた。そうでなくとも彼女の言霊は、昔からえげつないパワーを持っている。
それが絵麻にも乗り移っているなあ…と今回、初演よりも強く感じた。ショコラ/絵麻は当然当て書きのキャラクターではあるけれど、それにしてもちょっと恐怖を感じるくらいに的を射すぎている。
そんな言霊のちから。ある意味、絵麻からジェラートへの最後の言葉は呪いじゃないかと思う。言い方は悪いけど。
「ジェラート」としては希望を与えるけど、「鬼としての存在」としては殺しにかかっている。だから私は最後の咳を不穏と表現した訳だけど。
これは個人的な考察であるが…黄泉の国の住人は、どこか人間的な感情が生まれたら役目の終わりが近づいている合図なのかもしれない。
ショコラに馴染んでいたきんつば。ショコラの言葉に希望を抱いたジェラート。そうなるとエクレアもそのうち…なんて。
話を劇中の感想に戻そう。初日は、そこが変わるのか、ここのくだり生きてる!あの大好きなシーンは消えた!そんなことを考えながら見ていた。
優助が黄泉の国でショコラとジェラートに出会ったときのくだり、消えてなくて無茶苦茶嬉しかった。初演の感想でも好きなシーンとして挙げていたから、思い入れしかない。テンポが好きなので、それも変わらず何より。
逆に無くなってしまった!と感じた好きなシーンは、優助が絵麻をお姫様抱っこして抱える箇所であるが(余談だがサイン会の際にアツシオさんに「あのシーン無くなって残念です!」とお話ししたところ「お!残念派ですね!」とニコニコお返事していただいたのが嬉しかったことを記しておく)、再演の方がより臨場感のある落下シーンになっていたし、効果的だったと思う。美しかった。
セットは九分九厘変わっておらず、その中で大きく演出を変えていく…というのが、春陽さんのこだわりを感じて興味深かった。とても良い改変だった。
きんつばは初演だとあっさり前半でフェードアウトしてしまって消化不良なところもあったが、今作も基本的な展開は変わらないものの、冒頭部分の活躍度が増しているのも嬉しい限り。
劇団5454本公演「ト音」でも見られたあの流星のような美しいOP。ト音を見た時も全身に真正面から突風を受けたような衝撃を受けたが、ト音を見た後だからこそわかる怒涛の春陽さん節の炸裂感。
劇中BGMは基本的に茅原さん楽曲を使用していて、それがまた楽曲の良さを生かし、加えて増長させているのが本当に素敵で堪らない。その中でも特に、前述した美しいOPで使われていた「夏を忘れたら」の取り扱い方が素晴らしすぎる。
あんな美しい演出をされたら喜びで死んでしまう。あ!我々は黄泉の国に向かっていた魂なのだから、既に死んでおりますね!
あの1ミリのズレも許されないような緊張の中での世界観とキャラ紹介シーン。本当に村尾さんお疲れ様でした。
あれは難しすぎる。でもぴったりやりきった瞬間のカタルシスが痛快だった。素晴らしい…。舞台が始まった瞬間にあんなものを見せられたら、釘づけになるに決まっている。まさに鳥肌ものであった。
きんつば……死神という、全てのキャラクターの中において中立のような立ち位置な上、かつ残酷にも劇中で消滅してしまうキャラクターによる説明というのが、また絶妙だったな。
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春陽さんのあとがきにもあった、今回のテーマである「記憶への執着」
記憶は残っているほうが幸せなのか、それとも忘れてしまうほうが幸せなのか。色々な立ち位置にいるキャラクターが四方八方から様々な色のボールを投げつけてくるような…そんな感覚だった。
見えてるものが事実。不安の大きさとは幸せの大きさ。
答えは無いけど、自分に当てはめるとしたら、こうやってブログやツイッターに感想を書き残すのが「記憶への執着」なのかもしれない。自分の目で見た事実を…それが真実かどうかは別として…忘れたくないから、感想をこうやって書き連ねるのかもしれない。そう考えると、とても壮大なテーマに思えていたものがとたんに身近になるのを感じた。
カーテンコールでは春陽さんが茅原さんにあえて…だと思うが、意識的に「演劇」について問いかけをしていた。
彼女は答えた。
未知が沢山あって、未知がみちみちしていて。まだまだ自分にとってはわからないことばかりで。でも、わからないことが楽しくて。役と自分がぴったり一致したときに「ときめき」を感じるのが嬉しい…と。
ときめき。
茅原実里さんは、ときたま、こちらが全く予想してこない言葉で自分の感情を語ってくれる。でもその言葉はどれも無色透明で、嘘偽りなくて。
この言葉を聴くことが出来ただけで、EMMA再演に来た価値があった。
とても素敵な感想だった。こんな表現をしてくれる彼女がやっぱり好きです。
今回も愛に満ち溢れた良いイベントだった。
心からまた劇団5454の皆さんと、板橋廉平さんとのご共演があるといいなと思う。
これは全くの余談だが…ホリプロ移籍後初の個人イベントだなあ…と思っていたら、スタッフの数がむちゃくちゃ増えていて、ひたすらに大手事務所の力をひしひしと感じていた…。逆によくぞこれまであの少ない人数でイベントを運営してくだすっていたと思う。
今後もまた楽しい未来が待っているといいなあなんて思いつつ。
15周年イヤーも、天国~!
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初演の感想はこちら。
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