契約と収入金額
仕事を請ける際に他人に振る(外注する)ことはよくあります。丸投げをする場合があれば、下請けを募って一緒に仕事に取り組む場合もあります。契約によって収入金額が変わるかのような標題を付けましたが実際にはどうなのか、例として下記のような場合において、Aの立場で検討してみたいと思います。
この場合の取引の契約は2パターン考えられます。
1つは、XとAの契約、AがBとCとそれぞれ契約をするパターンです。そして、もう1つは、XがABC各自と契約をするパターンです。
前者の契約を契約①、後者の契約を契約②として検討を進めます。
契約①と②のいずれの契約でも、Aの利益は40です。契約形態次第で儲けが変わる場合、敢えて儲けが減る選択はしないでしょう。利益が同じであれば所得税や法人税などの所得課税は同じになります。
しかし、契約形態で変わらない税金は所得税だけです。源泉所得税(徴収義務)と消費税は異なってきます。
源泉所得税の場合
この契約で支払われる報酬が源泉徴収対象である場合、契約①と契約②で取扱が異なります。
契約①では、AがBとCに支払う報酬について源泉徴収義務を負います(Xの源泉徴収義務は省略します)。したがって、AはBとCに報酬を支払った月の翌月10日までにこの報酬にかかる源泉所得税を納付するになります(法定調書のことは省略します)。納期限を遅れると延滞税などの附帯税(ペナルティ)が課されます。
他方、契約②では、Aは源泉徴収の対象になる報酬を支払わないため、源泉徴収義務が生じません。
源泉徴収の点で見ると、契約①の方が徴収と納付の手間やコレラの処理の漏れというリスクを背負うことになります。源泉徴収の面で見れば、契約②の方が良さそうに見えます。
消費税の場合
消費税の計算方法には、いわゆる原則課税と簡易課税があります。原則課税か簡易課税かで税金が異なるのは当然なのですが、契約形態によっても税額が異なることがあります。上記例の報酬の10%を消費税額として計算してみます。
原則課税の場合。
契約①は10-3×2=4
契約②は4
どちらの契約でも税額は同じになります。
簡易課税の場合。
Aは税理士だとすると、簡易課税の事業区分は第5種になります。第5種のみなし仕入れ率は50%になります。
そうすると、各契約の税額は下記の様になります。
契約①は10×50%=5
契約②は4×50%=2
税額計算の結果、各契約から生じる税額に差が生じてしまいます。
簡易課税は、収入にみなし仕入れ率を乗じて税額を算出します。そのため、同じみなし仕入れ率を乗じたとしても、収入が少ないほど税額が少なくなるのです。
Aの売上は、契約①では100、契約②では40になります。契約形態によって収入として認識する額が異なるため、税額に差が生じるのです。
契約形態は、消費税額を計算する原則課税と簡易課税との選択適用にも影響を及ぼします。
契約①でいえば、全体の収入(100)のうち、原価(BとCに支払う報酬の合計60)の占める割合とみなし仕入率とを比較検討し、有利な選択をすることになります。士業であれば、よほど外注に回すような仕事の仕方でない限りは簡易課税が有利になる様に思いますが、全収入における外注に回す比率や、士業以外の業種区分(みなし仕入れ率)によっては検討の余地はあるように思います。
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