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ニセコクラシック 年齢別19−34 150km2位

 今回はレース展開の他にも心情的な部分が大きく作用した。私自身RXに所属していながら、札幌在住であるため、レースレポートを書く機会も少ないため、少しレースとは関係ないことも含めて綴っていきたい。

ニセコクラシックに向けて

 昨年、中止の知らせがあったとき、落胆したのを覚えている。昨年も今年と同じくらいに順調な仕上がりだったから。そのため今年こそはという思いで、3月から準備を開始した。
 とはいえ、札幌近郊では積雪で4月頃まで走行は難しい。休日は積雪の少ない日高方面に車で移動し、ボトルの水が凍結する極寒の中ベースづくりを行った。4月と5月からは札幌近郊で朝練中心のトレーニング。やっぱり寒い。そんな中でも5時過ぎには家を出て、7時には練習終了、すぐに出勤というルーティンができていた。早起きして7時には練習が終わるので、その日は、ほぼ丸一日回復に充てることができ、毎日高強度をこなせるという謎のスパイラルに吸い込まれていった。日中の充実感も高まり、仕事にも良い影響だった。

レース前日

 前日は1時間のサイクリングを行ったのみ。コースを逆走し勝負所を確認。調子を確かめる意味で踏んでみる。5分半で335w、188bpm。心拍は上がるし、全く辛く感じない。明日はきっと体が動いてくれると信じた。
 北海道の仲間から、誰をマークしているの?と聞かれ、同じカテゴリで強いのは石井選手と小橋勇利!と即答。他にも数えきれないほどいるけど、カテゴリが別だったり、明らかに上りでは勝てないヒルクライマー勢がいるので、分からない。
 勇利は子供の頃から一緒に自転車に乗って遊んでいる一歳下の友達。彼の天才ぶりは嫌ってほどよく知っている。

 レースの数日前になって突然、行きたいと母から連絡があった。思えば最後に私のレースの応援に来たのはいつだろうか。この前、自宅前で転倒し、顔を擦りむいてしまった母。普通なら、手を先につくだろうけど、顔面から着地。間違いなく母は老いてきている。
 これまで、いかなる時も味方でいてくれた母。まだ還暦にもなっていないけど、自分がここまで仕上がっていることは滅多にない(なかった)し、ビックレースで表彰台に乗っているところを元気なうちに見せてあげたいと思い、連れていくことに。
 これによって、年に数回しか会えないチームメイトとの打ち上げはキャンセル。残念だったけど、結果として母の喜ぶ姿を見ることができて本当によかった。

リアルスタートからパノラマライン

 先導車が離脱した直後からしばらくは、みんなフレッシュで強度が安定しない。辛くはないけど、時折350wを超えるパワーを出しているからダメージの蓄積はあるだろう。上りから右折してダウンヒルを先頭でクリア。下りきりの左コーナーでの事故を回避するのが目的。コースを知り尽くしているので全てエアロフォームで綺麗に走ることができた。下りきって後ろで落車音。やっぱりね。
 パノラマラインに入る直前で、田中選手から「なんちゃらラインはどこから?」と聞かれる。やばいことになりそう。日本最強のヒルクライマー達がなんかしようとしている・・。切実にやめてほしい。と願っていたらずっとマイルドペースで頂上まで。
 パノラマラインの下りもコースを熟知しているので、なんら問題ない。53−11だとエアロフォームの方が漕ぐよりも速い。ここも先頭付近でクリア

憧れの人と弟

 蘭越の海に出てから、内陸に折り返す。10km距離が追加された所を右折したところで高岡さんがアタック、そこについていったのは、札幌じてんしゃ本舗の平口。平口は勝手に私に懐いてきている弟のような存在で、時折、コンビニ代をツケ払いにしてくる。LIVE中継でも「木村と平口は仲が良いんですよ。」ってどこから情報仕入れているんだろうか?プロの仕事である。
 高岡さんはこれまでも、自ら動いて、ほんの少しのきっかけから、数々の独走勝利を掴んできた人だ。そんな姿にずっと憧れていたんだ。2人の背中を見て、自分も行こうと、体が勝手に動いた。
 逃げ切れるとは思っていなかったけど、新見の上りまでに、たとえ30秒だったとしても先行して、後ろで活性化して少人数で追い上げてきた精鋭グループにドッキングできれば美味しい。そう考えていた。
 しかし、後ろに集団の気配を感じる。タイム差を維持したまま泳がされている気がして、内心では集団に戻るのが得策と感じつつも、前述の理由で脚を緩めることはない。
 結果的に最大の勝負所の直前に捕まってしまった。最悪のタイミングだ。

新見の上り、決戦の時

 20km近く逃げ、NP289w。30分弱。強豪達を前にして自分達だけ大きなマイナスカードを引いてしまったことに絶望していることろに、高岡さんが声を掛けてきた。「次の上りで決まる。根性で乗り越えるよ。」そうか。高岡さんのメンタルは全く折れていないんだ。捕まってから上り始めるまで5分もないのに。理論派の高岡さんが「根性」という言葉で説明したことに意外性を感じながら、近づいてくる最大の勝負所。いざ決戦。新見の上りへ。地獄の12分走が始まる。
 と思っていたら、今日の自分は仕上がりが違った。当然辛いけど、常にもう一段階ペースアップできる状態。みんな辛そうにしているし、後ろは10人もいない。唯一、石井選手だけ余裕すぎるのか、手放しで両手をパンパン叩いて、このままペースを上げて行こうと呼びかけていた。佐々木選手と城所選手も強力だった。

先頭集団は10名、まとまらない意思

 石井選手がKOMを取りに行き、そのまま少し、先行する形に。この時は、すぐに下りで吸収できると思っていた。この動きが決定的なものになった。追走する先頭集団は10名ほど。しかしイマイチ綺麗にタイム差を詰めれない。当然、私自身も一人で強い石井選手までジャンプできる力はない。でも、見えている。すぐそこにずっと・・ 
 色んな人間心理でペースが上がらない集団より、腹をくくって逃げ続ける人が強いとはよくあること。完全にそれになっていた。
 それでも先頭集団の中で単発のアタックは発生する。こうなってはダメかもしれない。しばらくして、2位争いの雰囲気が漂い始めた。

ゴール前500m

 10名の中で先行したのは、牧野。牧野は強いけど、普段からトレーニングしているからこそ、全力で食らいつけば負けないことは良く分かっている。すぐさまチェック。牧野のアタックで周りを見ると3人。左折して斜度が緩んだ所で一瞬牽制。すぐに踏み直し、最後の右コーナー手前からスプリント。先頭集団の先頭で2位となった。


ベストリザルトの背景

 私はこれまで、ツールドおきなわも目標にしてきたけど、いつも10位〜ほどに沈み、優勝争いに絡んだことはない。他の強豪選手からすれば、ノーマークだったと思う。でも今回は過去最高の走りができると分かっていた。前日にもそうツイッターで呟いた。
 フォームやペダリング、睡眠、ケア、機材へのこだわりなど、マージナルゲインを追求すればするほど、パフォーマンスが上がっていった。これまで、恥ずかしながら疎かにしていたことだ。
 もし、今回よりも良い仕上がりで11月を迎えることができれば、沖縄でもきっと良い走りができる。「RXは高岡さんだけじゃない」そういう気持ちで、また、積み上げていこうと思う。


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