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投資について考える~米国株投資~

米国株投資超入門   著:松本 大

私は機関投資家(生命保険会社)の一員として資産運用の仕事をしていますが、ここ数年、「投資のデモクラタイゼーション(民主化)」がすさまじく進んでいると感じます。要するに、ネット証券等の個人向け金融サービスが進化したことで、これまで個人では難しかった投資が可能になっているということです。

生命保険会社や年金といった機関投資家は、基本的にBuy & Holdで、やや退屈ともいえる運用スタイルではありますが、リスク許容度が高いうえに、大ロットの資金を扱っているために、世界中の投資機会にアクセスできる面白さがあります。また、いわゆるプライベート資産(上場などせずに特定の投資家向けに提供している非公開のアセットクラス)への投資機会もあります。しかしながら、そうした資産はポートフォリオの数パーセントに過ぎず、大部分は個人でもアクセスできる株や債券で構成されています。また、ここ数年は海外資産のウェイトが高くなっています。各社ともポートフォリオの利回りを高めるべく、為替リスクをコントロールしながら、よりリターンが期待できる海外資産への入れ替えを行っていますが、これらも個人で投資可能なものが多いと思います。

ここ数年で、飛躍的に投資しやすくなったアセットの1つは米国株ではないでしょうか。米国では様々なETFが上場しており、これらを使えば、機関投資家のポートフォリオの大部分が再現できますし、よりアグレッシブなポートフォリオを構築することも可能だと思います。個人の資産運用においても、米国株を上手く活用すると、ポートフォリオのリスク・リターン効率を更に高めることができるでしょう。

米国株への投資は既に人気化してます。書店に行くと、米国株投資に関わる著作が多数並んでます。私は今回、マネックス証券の創設者である松本大氏の著作「米国株投資 超入門」を読みました。超入門ということで平易な内容になっておりますが、米国株を個人で投資する際の注文の仕方や税金の扱いまで書かれているので、これから投資をしてみようという方には参考になると思います。

著書の中で、松本氏は米国株を勧める理由に以下3点を挙げていました。

①世界中から人が集まって増え続ける人口
②イノベーションを育む土壌
③イノベーションを支える豊富な人材

松本氏が指摘する3点に私は完全に同意します。また、個人的体験に基づき、以下をつけ加えます。

①米国の危機対応力の高さ
リーマンショック時の米国政府や官庁、金融機関や企業は、いくつかの失敗はありながらも、全体としてはスピーディかつダイナミックに危機をコントロールしました。コロナ感染拡大時も同様です。これからも様々な種類の危機が到来すると思いますが、これまでの危機対応力を考えると、やはり米国は先進国内で最も安心して投資できる国と言えるでしょう。

②経営層の株価へのこだわりの強さ
米国で駐在勤務をしているときに、会社が出資している先の取締役会や投資委員会に参加することがありました。欧米の会社の経営層は、株価を高めるために必死(自身の報酬や昇進にも直結する)です。会議での白熱した議論を何度となく聞きましたが、株価向上が最もプライオリティの高いアジェンダになっていることを実感しました。私が欧米で見てきた経営陣は、本当にハードワーカーであり、ビジネスチャンスを獲得すべく、世界中を飛び回っていました。欧米に限らず日本の企業でも、株価を高めるべくハードに働く経営陣に対し、自分の資金を投資したいと思います。

また、著書ではマネックス証券を活用した米国株の売買方法についても詳しく書かれています。私自身も米国株の売買にはマネックス証券を活用していますが、以下の点で非常に使いやすいと感じています。

①米国の取引時間をフルカバーしている
米国の株式市場は、現地時間で9時30分から16時までが取引時間となっておりますが、マネックスでは時間外取引も可能であり、日本時間で21時から翌朝9時まで(夏時間)取引ができます。私は、夕食を食べた後、毎晩、米国株式市場の値動きを見つつ、投資戦略を考えるのを日課(趣味)としております。
②為替取引のやりやすさ
米国株を発注する前に、ドル資金を用意する必要があります。マネックスでは、証券口座内の円資金を注文受付時間中(12時から14時20分)に手続きを行えば、14時30分から15時のレートで執行され、当日の19時30分には買い余力に反映されます。私は、ドル/円のチャートを見つつ、割安と判断したタイミングである程度まとまった量のドル買いを行い、米国株の取引に備えております。
③定期買付サービス
マネックスでは保有銘柄で配当金が支払われたときに、同一銘柄を買い付ける「配当金再投資」を自動的に執行できるサービスがあります。これにより、いわゆる「複利効果」を得ることができ、中長期の資産形成において威力を発揮します。

マネックス証券に限らず、ネット証券では銘柄分析機能や情報提供等のサービスも充実しています。機関投資家と個人投資家の間の情報・サービス格差は着実に縮まっていますが、これからも「投資のデモクラタイゼーション(民主化)」はどんどん進んでほしいと思います。

私が機関投資家の仕事を選んだ理由の1つは、世界で起きている様々な出来事を自分事としてとらえることができるためです。今や、個人でも容易に海外資産に投資することができるため、わざわざ機関投資家の仕事に就かなくても、個人で海外資産への投資を行うことを通じて、世界で起きている様々な出来事を自分事としてとらえることができます。

自分にとっては、本当に画期的なことですし、何年か後にリタイアした後も、変わらず投資を楽しむことができると思うとわくわくしますね。これまでは、機関投資家の一員としてスキルアップを図ってきましたが、今後は、進化する金融サービスを活用しつつ、個人投資家としてのレベルアップも図っていきたいと思います。

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