第255回芸劇シリーズ 作曲家坂本龍一 ~その音楽とルーツを今改めて振り返る 鑑賞メモ

この日のプログラムは、この世のものとは思えない美しさのドビュッシーの「夜想曲」(合唱付きの第三楽章が特によかった!)から始まり、坂本龍一作曲の箏コンチェルト、そして私とこの日一緒に来た次男で演奏したことがある「ラスト・エンペラー」、坂本龍一が影響を受けた作曲家の曲として武満徹の「波の盆」、そしてバルセロナ五輪の開会式のために坂本龍一が書き下ろした「地中海のテーマ」。そしてアンコールは「Aqua」。

気鋭のマエストロ、カーチュン・ウォンさん指揮の日本フィルの演奏は、究極のダイナミックレンジを持ち、魂を鼓舞するもので、とてもとても、素晴らしかったです。

ラストエンペラーは、日頃ピアノで演奏しているので、少し細かく感想を書いていきます。

まず出だしのsus2の平行移動のところが、ポルタメントが強調されているのが、早速、おやっと、なりました。

そこを含めて、映画のサントラよりも、Playing The Orchestraの方に近い解釈になっているようです。

半音上のEマイナーキーに転調する直前に一つピークを持ってきて、銅羅の余韻とともに、転調したメインテーマが美しく現出します。

ここは、確実に鳥肌が立ったポイントです。

メインテーマ後半のユニゾン部分はとてもゆっくりのテンポになります。

ここは明白にオリジナルな解釈で、より、黄河の流れのようにゆったりとした、悠久の時を感じさせるものになったと感じました。

四拍子になってから、またテーマに戻るところまでは、坂本の、作曲技能の高度さに、感嘆させられる、完璧な構築美を感じるものです。

当然、何度も鳥肌。

来てよかった。

次男も連れて来られてよかった。

次男にとっては、オーケストラ、箏、ピアノ、合唱と、色んなタイプの楽器の音に触れられた事が、よかったのではないかなと。

今後の人生において何らかのきっかけで思い出すような、コンサートになれば、嬉しいです。

また、私にとっては、坂本さんの音楽が、ポピュラーからクラシックへの橋渡しの役割をしてくれていたのだなと。あるいは、ジャンル関係なく、音楽の楽しみ方---聴いて楽しみ、演奏して二度楽しむ、アレンジを変えて三度楽しむ--を教えてくれた、ともいえます。

そういう意味においても、改めてこの音楽家への感謝の念を捧げたいと思います。

終演後、まだ余韻が残る中、オーケストラ版のAquaをApple Musicで聴いたら、より、こみ上げてくるものがありました。

それは、このコンサートの感動と、坂本龍一さんがもういないことへの寂しさ、曲の美しさ、いろいろなモノ・コトに対する想いが、いっしょくたになり、私の心の中に押し寄せてきました。

明らかにこのコンサートの前と後で、音楽に対する接し方が変わりました。

それによるアウトプットに変化が起こるとしたら、3年後とか、早くて1年後になるのではないかな、なんて思ってます。

かつて私はサウンドクリエイターでしたが今は本職ではないので、のんびりやりますよ、こっちのほうは。

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