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団結して対処して来たシンガポールも感染連鎖を断ち切るサーキットブレーカー

日系クリニックでプライマリケア診療を担当している立場からシンガポールの状況をお伝えしたいと思います。
SARSの経験値とPreparednessを活かして来たシンガポールも
サーキットブレーカーを下した
4月3日金曜日3度目の演説でリーシェンロン首相は、必須でない職場は4月7日火曜日から閉鎖、学校は8日水曜日からHome Based Learning、運動のための屋外活動は認められるが、安全間隔を保って同一世帯の家族とだけとなります。
2回もWHOに賞賛された警察や軍も協力しての強力な接触者追跡
中国との繋がりも強いシンガポールですが武漢でのアウトブレイク後すぐに水際対策を徐々に厳しくしていきました。人口密度が高く高齢化も進んでいる社会ですが、警察やシンガポール軍の協力もあり、武漢からの観光客から土産店で広がったクラスタ、武漢がえりの礼拝者から広がったプロテスタント教会でのクラスタなどしっかりと接触者追跡をして、2月18日と3月10日全政府での対策をWHOに賞賛されていました。症例は https://www.gov.sg/article/covid-19-cases-in-singapore
に 国籍 性別 年齢 居住地(通りの名前まで) 勤務地などが公表されます。シンガポールはクラスター同士のリンクが世界に先駆けて利用できるようになった抗体検査で繋がったことも新聞で1面になるぐらいのニュースになりました。症例100番の方は軽快退院し、経験をSNSで公表し広くWhatsAppで出回っています。症例432まではCNAがインタラクティブリンクまで作成しています。
https://infographics.channelnewsasia.com/covid-19/coronavirus-singapore-clusters.html
医療機関の準備も
国の対策が進むよりも先を行く形で、それぞれの医療機関もスタッフの海外旅行を届け出させたり、禁止したり、帰国後14日観察をしたり、兼業に制限を設けたりしました。シンガポールはメディカルツーリズムの目的地でもあり、当院も4割の入院は海外からなのですが、リソースを国民に割り振るために診断や加療のための入国も不可となりました。
検査キット外交
SARSなどの経験とバイオ立国も目指す政府の今までの支援もあり、研究開発力が培われており、積水化学の子会社が3時間でPCRできる検査キットを実用化し、3月から空港や港で症状ある人のPCR検査に利用されています。中国から直接、WHO経由より数日早く、遺伝子配列を受け取っていたともいわれています。
正確で迅速な情報共有
政府からのSMSは希望者のみ受信、ラジオやテレビでも重要なことは簡潔に纏められ伝わってきます。噂の否定も政府から適時あるので、安心できます。マスクは症状がある人が利用するようにと政府がいっており3月の調査では常にマスクを利用する人は1000人中60人のみという結果でした。
2月3日の新聞1面

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データに基づき段階的に対策、必要があれば間違いを訂正し、マスクを配布
シンガポールは当初、マスクは症状がある人が装着するもので健康な人は不要、健康な人がマスクするのは薦めないといって2月に各世帯にサージカルマスクを4枚ずつ(病気になった時用として)配布しました。当初、4人のシンガポール人医師らがマスクには人に感染しにくく効果があるかもしれないので、推奨してもいいのではないかと新聞で少し議論になりましたが、あくまで調子悪い人がマスクするという考えでした。3月上旬の約1000人の調査では常にマスクをしているのはたったの6%でした。シンガポールで発症前からの感染リンクが分かったり、マスクすることで多少はウイルス排泄が減りそうということが分かってくるにつれてCDCと時を同じくして、マスクを人にうつさないために装着することを許容する発表が4月3日にありました。そして各地域で以前サージカルマスクを配ったようにhttps://www.maskgowhere.gov.sg/ 
でリユースできるマスクが4月5日から配布されています。郵便番号を入力すると331 m と配布場所までの距離と地図を教えてくれます。間違いを素早く修正し、即座に配布するスピードは流石です。

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10ドルで受診、必要に応じて患者を移動させて検査
Public Health Preparedness Clinic (PHPC)と呼ばれる有事に発動されるプライマリケアクリニックが今回は900ぐらい政府のサポートを受け、上気道症状患者を10ドルで診察、3-5日様子を見てトリアージの必要があればPCRの検査を専用救急車で患者を送って検査しています。CTが汚染されたり、検体をクリニックで採取してクリニックが汚染されたりということはありません。小さい人口密度の高いシンガポールだから可能なシステムです。
学校・幼稚園・保育園
朝礼など多数が集まるルーチンはかなり早期から中止、CCAと呼ばれるクラブ活動は3月23日から中止となりました。食事も席固定だったり、帰校時に机や座席清拭することも始まりました。もともと年に2回オンライン授業の日があるぐらい、すべての学校が有事のオンライン学習体制は出来ているのですが、今のところ幸い、学校閉鎖とはなっていません。ヘイズと呼ばれる大気汚染が酷い時以外は、教室の窓は全開で、シーリングファンを利用しており、換気が良いのもあるかもしれません。幼稚園・保育園は上気道症状があるとしっかり休むようになり、明らかに乳幼児の上気道感染が減り受診も減っています。https://www.youtube.com/watch?v=h7bAuEDYXYA
エセ医学や素人の憶測はなし
シンガポールではメディアの統制はとれており、SNSでのフェイクニュースが少しは出るものの、テレビ、ラジオ、新聞では間違ったメッセージは皆無です。噂も政府のSNSでしっかりと否定されるので、パニックやインフォデミックはかなり抑えられています。Covid-19に有効とうたう健康商品などは認可取り消しなども迅速です。Panic buyも多少ありましたが、食品とトイレットペーパーは1-2日で、消毒薬は1-2週間で、マスクは1-2か月で戻ってきた感じです。
リーダーシップとフォロワーシップ
シンガポール建国の父と敬われたリー・クアンユー元首相の息子、リーシェンロン首相の国民への語りかけは、警戒レベルがイエローからオレンジにあげられて、パニック購買でトイレットペーパーが売れきれた2月8日https://www.youtube.com/watch?v=ZyZwtKJn-Ac&t=5s
とWHOがパンデミックを宣言した直後の3月12日になされました。
https://www.youtube.com/watch?v=3mYs1Uyx3c8&t=12s
長期戦になりえること、経済的、心理的なサポートにも言及しています。国語であるマレー語や中国語でもスピーチしています。タイミングよく、見通しを伝え、「正当にこわがる」危機意識の共有が、リーダー達と国民の間で醸成されています。元眼科専門医で総合病院院長もつとめた、外務大臣Dr.Vivian Balakrishnanは少なくとも1年は続くと長期化することに備えるようにわかりやすく解説しています。
https://www.cnbc.com/video/2020/03/11/coronavirus-outbreak-and-economic-aftermath-will-last-at-least-a-year-minister.html
シニアのペイカット と 従事者へのサポート
首相や大臣が給料1か月分を返納するのを発表すると営利企業のリーダー達も自ら減給を発表、当院の院長やシニアエグゼクティブも減給を発表しています。医療従事者やGrabドライバーなどへのサポートもしっかりしていて、マクドナルドでは医療者にはラテやコーヒーが無料になったり、ドライバーには政府からマスクが配布されたりしています。サポート画像や動画がSNSで広まり、ラジオでもねぎらいの言葉がよく放送されています。
3月30日月曜日夜8時
#ClapForNHS にヒントを得たシンガポール在住のイギリス人の発案で、前線戦で戦う人々を讃える拍手が毎週月曜日の夜に行われるようになりました。
https://www.straitstimes.com/singapore/claps-for-front-line-fighters-from-windows-balconies


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医師発案から1か月でBluetooth利用の接触追跡アプリのローンチまで
接触者追跡では警察、監視カメラ、軍、ボランティアの労力も使って対応。短距離で一定時間以上の接触が問題になるので、スマートフォンのBluetoothが判定に使えるのではと医師がアイディアを出していました。現首相が数独のソルバーをC++でプログラミングしてGitHub にアップするIT国家、
駐車場料金支払いアプリなども作っているGovernment Technology Agency of SingaporeがTraceTogetherというアプリを1か月でローンチしました。
Help fight the spread of COVID-19 with TraceTogether!
https://www.youtube.com/watch?v=buj8ZTRtJes
#SGUnited #TraceTogether #TechforPublicGood
個人情報は取らないで、GPSや通話履歴やカード履歴だけでは漏れる接触追跡を容易に出来るシステム、政府への信任がないと利用者が増えずシステムとしても意味を成しませんが、シンガポールだとなんとかなるか今後に期待です。
お互いに人混みを避けるためのサイトも
定点カメラやGoogleMapの人混み情報を活用している人もいますが、シンガポールでは
https://safedistparks.nparks.gov.sg/
で公園の混み具合が
SpaceOut.Gov.Sg
でモールなどの商業施設の混雑具合をチェックするサイトを立ち上げました。

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