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架空の人物による架空のエッセイ

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記事一覧

山野高知 貴(17)

恋愛漫画なんかを読んで素直に純愛に憧れ、いつか素敵な出会いがと考えながら歩いていると、通学路の角から食パンを咥えた女の子が「遅刻遅刻~!」と飛び出してきた。避ける暇もなく正面からぶつかってしまい、「もしかして、これはその、何らかの出会いなのでは…」などとときめいたのも束の間、「ハフッハフッハフッ」と腰を押さえながら倒れたまま動かない彼女の様子を見て怖くなって119番、お見舞いに行った病室で「あ!あ

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パイレーツカフェに務めるレナ(22)

海賊がよく被っている帽子の名称を知ってますか?ジャンプの海賊が被ってるやつ。私も未だに知らないので海賊帽と呼んでいる。店舗に常備された8つの海賊帽を26人のキャストで使いまわしている、不衛生極まりないあの妙な被り物は、新人のミホが1つ無くしてしまったせいで現在は7つになって、別に何でもいいんだけど一体どうやったらあんなでかい帽子を無くすんだよ

コンセプトカフェとして2018年末にオープンした海賊

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未来人・木曽真平(25)

俺は未来から来た木曽。木曽真平。2020年の東京を生きているが、実際は西暦4545年からやってきた。なぜだか知らないが、モンテローザがタイムマシンの開発に成功した4339年以来、タイムマシンは手軽な娯楽として人々に定着した。誕生当初は、3LDKくらいあるバカでかい据え置きのタイプが主流、というよりその1台しか存在しなかったのだが、飛躍的な進化を遂げ、現在の4545年では携帯型タイムマシンが一部の富

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IT会社に務める多趣味なサラリーマン 大西 圭(26)

仕事は?と聞かれれば、こう答える。「IT関係」。

ITと言っておけば、基本的に間違いは無い。問題も無い。実際には、確実にIT関係に区別はされるものの、聞こえのいいアルファベットから連想される商売よりももうちょっと俗っぽい、もうちょっとケチな商売でインターネットテクノロジーに関係させてもらっている。友人の友人が社長をやっているだかで紹介してもらった会社だが、結局だれの紹介で俺は働いているのか、今と

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実の兄に恋している柔道部のFカップ女子・サユコ(17)

私の胸がでかいことはこの話にまったく関係がないけど、読んでもらうためにはしょうがない。それに、実は関係があるかもしれない。世の中は、一見関係のないように思える事柄が複雑な糸で結ばれあって、結局、今みたいなややこしいことになっている。

兄、だけじゃなく、家族に恋をしてしまうのは、不自然なこと、それ以上に、気持ちの悪いことだとされている。同性愛は最近、徐々に偏見が無くなって、ちゃんと受け入れられる世

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ショマホル(38)

木こりという職業が具体的に何をしている人なのか、しっかり理解している人は少ないと思う。木こりは「樵」とも表記され、ごく簡単に言うと木を切って生計を立てる人の事。昔話だけの話ではなく、現代でも私のように日本で生きる木こりは存在する。

昔話の世界では、木こりは斧を持って、適当に歩き、大した仕事もしていないのに斧を池に落とし、大した善人でもないのに金の斧を手にしているだけだが、実際の木こりの世界はそん

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