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ヨコハマトリエンナーレ2020を楽しむために

 ついに待ちに待ったヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW-光の破片をつかまえる」が開幕しました。初日に行ってきたので見どころを書きます。

TOPICS

・メイン会場は横浜美術館とプロット48(旧アンパンマンミュージアム跡地)の2箇所です。どちらかがメインではなくどちらも同じくらい分量があります。両者の間は歩いて7分です。
・チケットは予約制(予約はこちらから)ですが、横浜美術館のみ時間指定で、プロット48はチケットと同日なら何時でも入れます。たとえば「午前中から行けるのにチケットが14時からしか取れなかった」という場合でも先にプロット48から回れば大丈夫です。
・横浜美術館は指定の時間から30分以内の入場です。私は16時からのチケットを買っていたのですがプロット48が思ったより多く16:30ギリギリになりましたが、少し遅れても大丈夫(ただし場合によっては待つ可能性がある)とのことでした。
・第3会場として日本郵船歴史博物館とありますがこちらは無理して行かなくても大丈夫です。ちょっと行きづらいし、時間がかかるわりに1作品しかありません。

・1つの作品に「作家のステイトメント」「作品の"詩的"な説明」「観客はどう見ればいいのか」の3つのキャプションがついています。これは初めて見る試みですが複数の視点を常に意識することができてよかったです。
・現代アートの展示は長尺の映像作品が多くヘトヘトになることがありますが、今回は映像作品が少なめの親切設計なので余裕をもって回れると思います。
・今回のトリエンナーレは単一の「テーマ」ではなくオープンな複数の「ソース」に基づいています。その「ソース」は「ソースブック」としてこちらのページで公開されています。行く前に読んでもいいですが個人的には行ったあとに作品を思い出しながら読むほうがいいと思います。
・ほぼすべての作品が撮影可能です。横浜美術館の所蔵品を再構成しているインティ・ゲレロの作品以外すべて撮影可能だと思います。

横浜美術館

 画像を載せずにいきます。入ってまず最初にあるのが新井卓の作品。昔Twitterの質問箱で日本の写真家トップ10を聞かれて新井卓さんの名前を挙げたことがあるのですが、ダゲレオタイプによって記憶の構造をあぶり出す作品が世界的に高く評価されています。去年東麻布のPGIでやった個展も素晴らしかったです。今回は千人針とそれにまつわる記憶の伝承をテーマにした作品を出品しています。順路に沿って次の部屋に入ると見えるのがロバート・アンドリューの作品。会期中ずっと動き続けて会期の最後に完成し、複数回行けばそのたびに違った表情を見られるでしょう。北京の写真家チェン・ズは一昨年東京都写真美術館でやった「愛について」展の作品とは違った趣です。次のローザ・バルバの出品作「地球に身を傾ける」は傑作でした。

 瀬戸内国際芸術祭のローザ・バルバのインスタレーション。これはインスタレーションですが今回は短編映像作品です。

 パク・チャンキョンの「遅れてきた菩薩」は毎時0分から始まり55分間の上映です。「韓国仏教と放射能」という日本人に馴染みがありそうでなさそうなテーマの意欲的な映像作品で、このトリエンナーレの目玉として挙げる人も多くいるのではないでしょうか。途中から見ても十分に面白いですし、ある程度の時間を取ることをおすすめします。キム・ユンチョルは映像作品ではないですが時間によって見え方が変わります。毎時30分から15分だけ点灯しているので点灯しているときを狙ってみてください。

 金氏徹平は昔横浜美術館で個展をやったこともあるアーティストで、幅広い活動の中からなるほど今回はこれを持ってきたか! という感じでした。カスピ海沿岸のダゲスタン共和国にルーツを持つタウス・マハチェヴァのインスタレーションは身体性のモチーフが明快で一番好きです。

 最後に事前予約が必要な体験型の作品が2つあります。私はまったく知らずに行って後悔しました。ウェアラブルな外骨格を装着するランティアン・シィエの作品は90分、モレシン・アラヤリのVR作品は25分なのでお時間合えばぜひ。予約はこちらから。出口を出て右側に私が大好きな張徐展のストップモーションアニメがあるのですが、わかりにくいので発見できていない人が多そうでした。

プロット48

 まず出迎えてくれるのはあらゆるアートイベントに引っ張りだこの川久保ジョイアンドレアス・グライナーは4年前の六本木アートナイトで見たのが印象に残っています。ジェン・ボー(鄭波)の「シダ性愛」はついに実物を見ることができました! 美術手帖の2019年8月号に長いインタビューが載っているのでバックナンバー持っている方はあわせてどうぞ。

 バングラデシュの写真家サルカー・プロティックは横浜美術館では映像コラージュ、プロット48では写真スライドを展示しています。ラウ・ワイ(劉衛)は2015年の越後妻有で見て以来ですが(先述のチェン・ズと共に「三影堂撮影賞作品展」として展示されていました)、今回は写真にとどまらず立体作品とデジタルメディアを組み合わせていました。私が個人的に現代写真に多少詳しいこともあるのですが、今回のヨコハマトリエンナーレは写真家の出品が比較的多く、それも普通に想像するような写真ではなく「写真」の概念自体を拡張するような独創的な作品が多い印象を受けました。楽しいですね。

 「ロシア宇宙主義について(2) 人がいつか飛び込む海の底は」というnoteで以前紹介しましたが、アントン・ヴィドクルは絶対! 絶対に! 観てください! もうこれだけは観てくださいお願いします。日本のアートギャラリーASAKUSAの大坂紘一郎さんのプロデュースで撮影された新作で、今年2月のベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映されました。実は私もエキストラに誘われていたのですがどうしても時間が合わず……。3階一番奥の行き止まりの部屋にあり、私は場所が分からず一回スルーしてしまったので見逃さないようご注意ください。


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