2020年の書籍25冊
2020年に刊行された書籍、最初は10冊選ぼうと思ったのですがどうしても選べなかったので25冊挙げました。写真系と美学系が多めです。読み終わるごとに短くてもいいから何か感想書いておけばよかった……。面白そうな本があったら貸しますのでお気軽にご連絡ください。
1.「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ(長島有里枝)
1990 年代に若い女性アーチストによって生まれた写真の潮流―― 同世代の多くの女性に影響を与え、一大「写真ブーム」を巻き起こしたムーブメントは、「女の子写真」と揶揄的に呼ばれた。性別で写真家をくくる「技術的につたない」「半径5メートル以内しかない視野の狭さ」「機械に弱い女性」。そして写真賞受賞者の性差を強調し、女性写真家たちを若さのうちに葬り去ろうとするさまざまな言説を、ジェンダーの視点から検証する。
2.絵画の力学(沢山遼)
アンディ・ウォーホル、ジャクソン・ポロック、バーネット・ニューマン、カール・アンドレ、ロバート・モリス、香月泰男、福沢一郎、辰野登恵子、高松次郎、ゴードン・マッタ゠クラーク、ロザリンド・クラウス、クレメント・グリーンバーグ、イサム・ノグチ──。
「美術手帖」芸術評論募集第一席を受賞した著者による堂々たる美術批評。単行本書き下ろしとして、イサム・ノグチ論「火星から見られる彫刻」を収録する。芸術の思考=批評はここから開始される。美術批評の新たな達成。
3.デジタル写真論:イメージの本性(清水穣)
SNSやスマートフォンによって全面化するデジタル写真とは何か? その本性と可能性を松江泰治やヴォルフガング・ティルマンスらの具体的な作品を詳細に解析することで考察する。水や空気のように遍在することで透明化してしまったデジタル写真を真に見るための必読書。
4.佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000 現代美術の定点観測(佐賀町アーカイブ編)
パルコなどの企画広告ディレクターであり、プライベートブランドの先駆けでもある「無印良品」の発案立ち上げなどに関わった小池一子は、東京都江東区佐賀にあった食糧ビル(1927年竣工)を修復し、1983年に佐賀町エキジビット・スペースを開設しました。
「美術館でも商業画廊でもない」もう一つの美術現場を提唱し、発表の場を求めるアーティストに寄り沿う姿勢を打ち出す実験的な展示空間として、美術、デザイン、ファッション、建築、写真といった従来のジャンルを超えた、日本初の「オルタナティブ・スペース」として海外からも注目される存在となりました。
行われた展覧会は106回、関わったアーティストは400人以上にのぼり、2000年12月に幕を閉じるまで、多種多彩な現在進行形の美術を発信し続けました。
5.アートにみる身ぶりとしぐさの文化史(デズモンド・モリス)
お辞儀や舌を出すしぐさ、腕を組む、あくびをする、など、人間のさまざまな身ぶりとしぐさが芸術作品の中にどのように描かれているのか。
著名な動物行動学者で画家でもある著者が、特定の身ぶりやしぐさについて、広範な時代・地域・ジャンルの芸術作品を紹介しながら解説する。
6.ミュージアムの憂鬱 揺れる展示とコレクション(川口幸也)
ミュージアムはどこへ向かうのか? あいちトリエンナーレ2019やアウトサイダー・アートの展示など、ミュージアムをめぐる近年の動向を論じた「現在」から、同時代美術館の成立と発展の歴史的過程を多角的に検証する「過去」、そしてこれからのミュージアムのあり方を夢想/構想する「未来」までを縦横無尽に論じる、ミュゼオロジーにおける最新の研究成果。
7.「百合映画」完全ガイド(ふぢのやまい編)
女性同士の関係性を描く「百合」。大きな盛り上がりをみせるこのジャンルにおいて、スポットを当てられることが決して多いとはいえないのが、百合を題材にした映画、「百合映画」だ。古くは1930年代から現在に至るまで、地球上のあらゆる土地で、実写として、アニメーションとして…撮られ続けてきた百合映画。そんな百合映画300本以上を総覧。取り扱う作品は、“王道の百合”や誰もが知る定番から、埋もれた名作、いっけん百合とは思われないだろうものまで多岐にわたる。
8.コンテンポラリー・ダンスの現在──ノン・ダンス以後の地平(越智雄磨)
振付家、ダンサー、観客という固定された関係性への疑義。それまでのダンスに内在化された慣習的なコードを拒絶し、大きな議論を巻き起こした「ノン・ダンス」という概念の出現。これらを巡る考察を通して「作者のダンス」から「作者の死」後のダンスへと移行するダイナミックな運動を記述し、変容し続けるコンテンポラリー・ダンスの現在を明らかにする。
9.地域アートはどこにある?(十和田市現代美術館編)
来場者4万人突破! 大都市から離れた美術館が多くの来場者を集めた展覧会「ウソから出た、まこと」展。北澤潤、Nadegata Instant Party、藤浩志という3組のアーティストを迎えたこの展覧会は、作品展示にとどまらず、十和田市の住民を巻き込んだ「地域アートはどこにある?」というプロジェクトに位置付けられていました。
地域におけるアートは住民、アーティスト、行政など様々な関係者とそれぞれの思考が混ざり合って成り立っています。それは「地域アート」という言葉で語れることなのか。展示紹介やプロジェクト中のクロストークを収録、十和田という現場の実践と思考の軌跡・論稿を、住民や様々なゲストとともにまとめた1冊です。
10.ラディカル・ミュゼオロジー つまり、現代美術館の「現代」ってなに?(クレア・ビショップ)
複数の過去/現在/未来がぶつかりあう場としての現代美術館。投機的な思惑によって動く美術市場や非政治的な相対主義が支配する現代美術の現状に抗して、ローカルかつグローバルな政治的状況にひきつけてコレクションを展示する三つの現代美術館の事例を紹介し、「コンテンポラリー・アート」の「コンテンポラリー」の意味をラディカルに問う。
11.没入と演劇性 ディドロの時代の絵画と観者(マイケル・フリード)
観者の存在を前提とするミニマリズム作品を批判した概念として名高い「演劇性」は、18世紀のフランス絵画の成立条件に関わる根本的な問題として登場した。画家たちの様々な試みを見るとともに、ディドロに代表される当時の美術批評家の言説を読み解きながら、いかにして観者という存在のあり方が問題視されるようになったのか、その理論的枠組を大胆に提示する。
12.現代アート入門(デイヴィッド・コッティントン)
「なぜこれがアートなの」?と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。
13.テレビジョン テクノロジーと文化の形成(レイモンド・ウィリアムズ)
テレビというメディアは、それまでに普及したメディア(新聞、討論、広告など)にない、まったく新しい人的コミュニケーションをもたらした。本書は、実例を通じた精緻な分析により、テレビが与えた変化とはなにかをを問うものである。カルチュラル・スタディーズにおけるテレビ論の古典、待望の翻訳。
14.政治の展覧会:世界大戦と前衛芸術 (引込線/放射線パブリケーションズ編)
20世紀前半の前衛芸術を当時の政治・社会状況との関わりから読み直す8本の論考に加え、今号のキーパーソンであるマリネッティとリシツキーのテクスト邦訳を掲載。さらに、図版と解説文で構成されるカタログでは、芸術作品だけでなくあらゆる事象を批評的考察の対象とした「架空の展覧会」を紙上で掲示する。「100兆パピエルマルク」「群衆」「スペイン風邪」「SFとしての20世紀」「カモフラージュ」「都市封鎖」などを「政治の展覧会」の出品作として展示・解説する。
15.20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業(長谷川愛)
RCAでスペキュラティヴ・デザインを学んだアーティスト長谷川愛が、MITメディアラボと東大で教えた授業をもとに、SDGsや倫理問題をふまえて社会変革に挑むための思索トレーニングブックとしてまとめた一冊。
16.ファシズムの日本美術──大観、靫彦、松園、嗣治(池田安里)
戦争美術の隠された本質。「日本ファシズム」というイデオロギーの枠組みのなかで、いかに絵画が戦闘や兵士を描くことなく、戦争を支持し、暴力に加担したか。非戦闘画に内在する政治思想を明らかにする。
17.ユーラシアを探して──ヨーゼフ・ボイスとナムジュン・パイク(渡辺真也)
ヨーロッパ(Euro)、東に位置するアジア(Asia)には共通する文化的ルーツがあることに目を向け、東西に分裂した世界の再構築を目指したのが、ヨーゼフ・ボイスとナムジュン・パイクによるプロジェクト《ユーラシア》である。それぞれの生い立ちに深く結びつきながら、歴史や哲学に対する深い洞察をもって構想されたこの抽象的作品を正確に理解し、二人が人類に残したビジョンを明らかにする。
18.映画を見る歴史の天使 あるいはベンヤミンのメディアと神学(山口裕之)
ベンヤミンが「映画」に見出した複製技術の展開と知覚の変容.それは神学的思考といかにかかわるのだろうか.本書は,これまで個別に論じられていたベンヤミンにおける「メディア」と「神学」を架橋し,彼が構想していた「救済」の真の姿に迫る。
19.ファッションの哲学(井上雅人)
ファッションは身体と流行の関わりという視点から、文化〈カルチャー〉・産業〈ビジネス〉・表現〈デザイン〉をいかに説明するのか。これからファッションを論じるための5章。
服を着るということはどういうことか? 自己表現としてのファッションなのか、あるいはあくまで「衣」としての機能が果たせればいいのか? 服を着ることが、知らぬ間に社会を変えているのだとしたら? 本書では、身体、メディア、社会の変化、モードの意味、ブランドの意義、貧困と格差、環境への負荷など、様々な視点から「服を着る」ことの本質的な意味を考えていく。
20.新写真論 スマホと顔(大山顕)
スマートフォンは写真を変えた。だれもがカメラを持ち歩き、写真家は要らなくなった。すべての写真がクラウドにアップされ、写真屋も要らなくなった。写真の増殖にひとの手は要らなくなり、ひとは顔ばかりをシェアするようになった。
自撮りからドローン、ウェアラブルから顔認証、ラスベガスのテロから香港のデモまで、写真を変えるあらゆる話題を横断し、工場写真の第一人者がたどり着いた圧倒的にスリリングな人間=顔=写真論。
21.Filmmaker's eye : レンズの言語 映画に学ぶ画作りとストーリーの伝え方(グスタボ・メルカード)
ケイト・ブランシェットが「エリザベス」で伝説の女王に変貌を遂げていく。レオナルド・ディカプリオが「レヴェナント」で雄大な自然に立ち向かう。こうした姿はどれも、「レンズ」を通して記録されています。レンズは、ストーリーやアイデアを伝えるための「道具」です。設定方法を知ることよりも、どうすれば目的に表現が可能になるかを知ることの方が大切です。
本書では、名画のケーススタディから、どのような画が、どのようなストーリーや感情、アイデアを伝えるかを学びます。そして、その裏にあるレンズテクニックを読み取ります。ショットをレンズの観点から解説した「Filmmaker’s Eye:レンズの言語」は、ストーリーやテーマ、アイデアを支え、キャラクターの感情やサブテキストを伝える画作りのテクニックを明らかにします。
22.アンビルトの終わり ―ザハ・ハディドと新国立競技場―(飯島洋一)
2015年、「アンビルトの女王」として知られるザハ・ハディドが設計した新国立競技場の原案が白紙撤回され、激震が走った。本来、市民一人ひとりの生活に意匠を凝らすべき建築家たちが、なぜ「アンビルト」を描くのか。資本と消費の論理が先行し、物語や理念が失われた時代に、私たちは建築の未来を語ることができるのか。混迷を極めた新国立競技場問題の背景を、すみずみまで検証する。
23.ドキュメンタリー作家 王兵(土屋昌明・鈴木一誌編)
山形国際ドキュメンタリー祭大賞を3度受賞。カンヌ、ベルリン、ヴェネチアの三大映画祭での受賞も数多い王兵監督、およびその作品を徹底的に解読。
24.スポーツ/アート(中尾拓哉編)
スタジアムの変遷や記録との関係、芸術家の参加などオリンピックをめぐる歴史から、スポーツと美術作品の顕在的/潜在的な相互作用、さらに競技、運動、観客をとりまくテクノロジーの問題、そしてeスポーツに至るまで、美術・写真・映像・身体表現など多彩な研究者、評論家、アーティストによる様々な視点から、スポーツ/アートの境界上に新たな結びつきを探る。
25.バウムガルテンの美学:図像と認識の修辞学(井奥陽子)
美学はどのように誕生し、何を目指したのか。バウムガルテンの美学が伝統的修辞学と強固に結びついていたことの内実と意義を問うことによって、未完の主著『美学』のうちに、現代にも通じる芸術論の可能性を見出し再評価する、本邦初の研究書。
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