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僕の私の2010年代映画ベスト100

 2010年代が終わろうとしています。長かった10年を振り返って映画を100本選んでみました。
・この年代の「価値観」を代表していること
・この年代に「作られなければいけない」作品であること
の2つのみを基準に選んでいます。

 地域の多様性を重視すべく、特にこの10年のラテンアメリカ映画は重要なので多めに入れました。『彼方から』『サマ』は世界の映画を振り返ったときに絶対に外せない重要作品です。東南アジア映画も注目でした。今ふたたびアツいアメリカインディーズ映画もかなり入れました(『タンジェリン』『クリシャ』など)。

 その一方でインド映画はぜんぜんわからないし、西欧映画は苦手なのであまり入っていません。特にフランス映画は方法論において岐路を迎えていると感じています。東欧・ロシア映画はもっと入れたかった(いろいろ直前で外しました)、アフリカ映画も『禁じられた歌声』しか入れられなかった……中東・中央アジアも……うう……。

 この10年で大きく進化を遂げたジャンルであるアニメとドキュメンタリーは意識的に多く入れています。『アナと雪の女王』『ズートピア』はこの年代を代表するにふさわしい作品でしょう。ドキュメンタリーはNetflixの台頭などにより優秀な人材と隠れた社会問題が次々と世に出るようになり、カメラの小型化やドローンの登場など技術の進歩も後押ししました。

 そして最も重要な柱は語られなかったエピソードが語られるようになったことです。2010年代は主にLGBTQ、女性、アフリカ系アメリカ人の「語られなかったエピソード」が注目を浴びる機会が増えました。それはときにラブストーリー、ときにスーパーヒーロー、ときにコメディ、ときにドキュメンタリーの形で語られることになりました。『キャロル』『ムーンライト』あたりは多くの人がランキングに入れることになるでしょうし、LGBTQに関する欧州映画(『アッテンバーグ』『湖の見知らぬ男』)やアジア映画(『お嬢さん』『マルリナの明日』)も必見です。移民や経済格差の問題も絶対に避けることのできないテーマとなり、多くの秀作が作られました(『ウェスタン』『地中海』などなど)。そして次の10年はもっとさまざまな人たちのストーリーが紡がれていくに違いありません。

 1位~10位以外は「11位~20位」のように順位をつけず10本ずつに分けその中では年代順に並べています。それではいってみましょう。

1位~10位

1 キャロル 2015
2 her/世界でひとつの彼女 2013
3 サマ 2017
4 パラダイス:愛/神/希望 2012
5 イーダ 2013
6 彼方から 2015
7 ナチュラルウーマン 2017
8 タンジェリン 2015
9 ブラックパンサー 2018
10 闇のあとの光 2012

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11位~20位

ウィンターズ・ボーン 2010
キッズ・オールライト 2010
ネイバリング・サウンズ 2012
それでも夜は明ける 2013
グローリー/明日への行進 2014
彼の見つめる先に 2014
彷徨える河 2015
ムーンライト 2016
ズートピア 2016
ラブレス 2017

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21位~30位

ブンミおじさんの森 2010
ドラゴン・タトゥーの女 2011
アルバート氏の人生 2011
わたしはロランス 2012
ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画 2013
6才のボクが、大人になるまで。 2014
ザ・クラブ 2015
父を探して 2015
マッドマックス 怒りのデス・ロード 2015
ありがとう、トニ・エルドマン 2016

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31位~40位

ポエトリー アグネスの詩 2010
父の秘密 2012
火の山のマリア 2015
ジョン・フロム 2015
人生タクシー 2015
スラック・ベイ 2016
ゲット・アウト 2017
ダンケルク 2017
無題 2017
ウェスタン 2018

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41位~50位

光のノスタルジア 2010
アッテンバーグ 2010
ピアシングⅠ 2010
クラウド アトラス 2012
アナと雪の女王 2013
神々のたそがれ 2013
湖の見知らぬ男 2013
リアリティのダンス 2013
地中海 2015
ザ・トライブ 2015

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51位~60位

ソーシャル・ネットワーク 2010
トムボーイ 2011
フランシス・ハ 2012
ザ・マスター 2012
ドリンキング・バディーズ 2013
禁じられた歌声 2014
AMY エイミー 2014
ビースト・オブ・ノー・ネーション 2015
ラ・ラ・ランド 2015
レディ・バード 2017

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61位~70位

ニーチェの馬 2011
プレイ 2011
少女は自転車にのって 2012
エリ 2013
薄氷の殺人 2014
お嬢さん 2016
ぼくの名前はズッキーニ 2016
鳥類学者 2016
ゴッズ・オウン・カントリー 2017
猿 2019

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71位~80位

レストレポ前哨基地 2010
マージン・コール 2011
オスロ、8月31日 2011
ザ・レイド 2011
スプリング・ブレイカーズ 2012
ゼロ・グラビティ 2013
さよなら、人類 2014
神様なんかくそくらえ 2014
クリシャ 2015
パウリーナ 2015

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81位~90位

ショート・ターム 2013
鉄くず拾いの物語 2013
メビウス 2013
もしも建物が話せたら 2014
ザ・フィッツ 2015
ラビング 愛という名前のふたり 2016
私はあなたのニグロではない 2016
パリ 05:59 2016
バードショット 2016
十年 2018

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91位~100位

オルメイヤーの阿房宮 2011
昔々、アナトリアで 2011
ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~ 2012
郊遊 <ピクニック> 2013
マッドバウンド 哀しき友情 2017
生きのびるために 2017
マルリナの明日 2017
ストロング・アイランド 2017
クレイジー・リッチ! 2018
ペインテッド・バード 2019

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 いやーいろいろな映画がありましたね。500本以上候補を出してそこから削っていきましたが、どの作品にも思い入れがありなかなかしんどい作業でした。1本1本選んだ理由と選ばなかった理由を語りたいくらいです。こういうのって入れたものより外したものが何かのほうが面白いですよね。

 2010年代を代表する映画を1本だけ選ぶなら『her』だと2014年に予想していましたが結局そうなりました。

 70's、80's、90'sだろうが、今が二千何年だろうが、死ぬように生きてる場合じゃない。
(中村一義『キャノンボール』)

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