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三河宇宙造船所 宇宙への軌跡 第21回「戻る」

三河6号は地球上空約200km安定した周回軌道を漂うことに成功。
これで遠い空へ打ち上げ遠い場所にただ落としてきた過去から更に一歩先へロケットを進めた。
地球軌道上級、西から東へ周り続けるロケット内にてジェバダイア宇宙飛行士は地球と宇宙を堪能する。
太陽光が射す台地や海からは豊かな色が見え、その背の暗黒の宇宙には燃えるような光源の太陽。
地球の裏側に周れば空も大地も海も黒く、所々に人口の灯かりが群生し、海上と思われる場所は全てを均一に塗ったように黒く、背後の宇宙空間には豊かな星の瞬きを見せ、恒星の瞬きは暖かさより、この只管に広がる宇宙で氷りついた塊のようにも見えた。
陽の光が射す日中と暗闇で塗られた日没を地上で暮らす人々以上に早く何度も何度も200㎞上空から眺める。日没と日の出。始まりと終わりの間に薄膜に感じるその境界線の濃淡は写真でもなく画でもない、自分の眼に見えるその曖昧に混じり合い移ろい往く境界を目にする度に驚きは減り、ただ言葉なく魅入っていた。

何周目かの昼と夜を高速で体験し、地上からの信号が届く。
楽しい楽しい歪ながら周り続けた円運動を終え地上に、この宇宙船内の乾いた空気から湿気に富んだ地上へ戻ってこいとのこと。

順行に向けて地球の重力に逆らい空に打ち上げたこの機体を逆行、維持された運動エネルギーの方向とは逆に向けロケットエンジンを始動。
遠点(AP)で行った変化はその逆、近点(PE)に強く影響を及ぼす。
その逆も然り。
大地が近づき、そして輪郭、海との境界線、大地の上に曖昧な点々、全ての詳細さが増していく。

https://www.youtube.com/watch?v=9Ec2lqMwQCw&feature=youtu.be

1966年5月15日 日曜 午後4時30分
砂上は機体内以上に乾いていた。


次回予告「人が造る星の作りかた」

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