見出し画像

フジロック2022

今年もこの季節。2018年、19年と参加、20年は開催無し、21年は規制まみれで参加してきたフジロック。今年は去年は禁止された酒類の販売の解禁、そして海外バンドの出演と、公式にもいつものフジロックを目指すとアナウンスされていた。
今年のフジロックを終えて、どこまであの祝祭空間が戻ってきたのかをここに記しておこう。

僕自身、今年は18年務めた会社を退職し、絶賛フリーター生活中。去年ほどスケジュール調整のストレスは無かったものの、代りにフジロックであるが故の資金面での不安要素がつきまとったが、それでも毎年フジロックに参加する、ということが僕の人生にとってかなり重要なポイントであることを再認識した。前夜祭から帰宅するまでの5日間、チケット代、宿泊(テントサイト代)、旅費、食事代、物販購入代、ざっと15万は下らない。これだけの金を使っての遊びを今後の人生でも僕は手放したくない。

27日、出発日の前日、夜22時ころに仕事を終えた僕の心は、もうすでに苗場に飛んでいた。フジロックを楽しむために重要なのは、なにより準備を万全にしておくことだ。すでにヤマト宅急便でキャンプ用品のほとんどは送ってしまってあるので、あとは当日リュックに入れていく荷物で準備を完璧にしておかなければならない。最後の準備で僕が買っておきたかったものは、明日の苗場での食費を節約するために持参する、おにぎり用の鮭わかめとサングラスだ。サングラスは、中2の時にイキって買った1000円のもので、以来つけたことがなかった。フジロックではとにかく天候への対応力が快適なフェスへの道である。日陰もほとんどない真夏の苗場では、サングラスが非常に役に立つ。あと常連フジロッカーのファッションではマストアイテムだと勝手に思っている。なので3,000円のサングラスをドン・キホーテで購入した。中2の1,000円から2,000円アップ。僕の14歳から37歳までの23年間の成長はわずか2,000円だったということだ。最高だな。おにぎりに関しては言わずもがな。うまいよね。海苔がへたってるやつ。フジロックでの食費はバカ高い。生ビール1杯700円の世界だ。一食分でも食費をケチっておくことが今の僕には必要だ。そこに少し悲しさはあるものの、大切なのは毎年フジロックに行き続けること。そのために今年からは大好きなメンズエステへの投資もグッと抑えながらの日々を送っている。

飛行機

翌朝、福岡から始発の飛行機で東京まで。そこから上越新幹線で越後湯沢駅まで。さらにシャトルバスに乗って苗場に到着する。まずは東京までの飛行機を格安航空で早めに予約を済ませ、新幹線で行くより約2万ほど安く東京までの交通費を節約した。つもりだった。
福岡空港から7時台の飛行機に乗り、羽田空港を目指す。約2時間のフライトで、そろそろ飛行機は着陸態勢に入る。窓際の席に座っていた僕は窓から見える地上の景色を見ながら、何か違和感を覚える。数年前に出張で東京に来た時に見た羽田空港周辺の景色ではない。田んぼと畑が異常に多い。機内アナウンスが流れ、僕はようやく気付いた。

これ、成田空港だ。

格安航空のなかでも更に割安なチケットを盲目的に手配していたため、福岡から東京という田舎者の検索結果の末、僕は成田行のチケットを買っていたのだ。当然帰りも成田発。失敗した。始発の飛行機に乗り、できるだけ早く苗場に到着したかったのに、大幅なタイムロスである。早く苗場に到着しなければいけない理由は、テントサイトの場所取り争いに勝つためだ。去年は参加人数が例年の半分以下だったため、争奪戦は無かったが、今年は酒も飲めるし外タレも来るしで、去年より参加者も多いだろうから争奪戦は必至だ。より良い環境でテントを設営することが、期間中の快適な睡眠を大きく支配するのだ。
しかしまあ、こうなっては仕方がない。成田空港から特急列車に乗って東京駅へ。幸い道中に聴きたいラジオは死ぬほどあったので、有吉弘行のラジオを聴きながら、マスクの下でニヤニヤしながら向かった。
東京駅にはやはりフジロッカーの姿がちらほら見える。去年は全く見なかった外国人の参加者の姿も見える。この辺りからもうフジロックが始まる。

シャトルバス

東京から越後湯沢まではあっという間で、山に囲まれたあの駅に降りて、シャトルバスに乗り込むと、いつものキヨシローの”田舎へ行こう”が流れている。去年はこの瞬間が一番エモかったと記憶している。2020年の開催中止を経て、批判もありながらの開催となった2021年。少ない参加者が検温を受けて消毒して、誰も一言もしゃべらずにバスに揺られている感じ。誰もが後ろめたさと不安を抱えているようだった。今年は検温もなくバスに乗れた。一緒に乗車する仲間も多い。僕はずっと一人だったけど、それでもフジロッカーの間に流れる連帯感みたいなものは感じていた、そういえば期間中よくTwitterでつぶやいたりしたけれど、同じフジロッカーからの”いいね”は嬉しかった。

テントサイト

テントサイトの争奪戦はやはり始まっているようだった。ライブ会場から一番近いAサイト、Bサイトにはかなりテントが立っているようだ。僕は毎年このエリアは諦めているのだが、とにかく平坦な立地を探すことが重要だ。できれば木陰があればベスト。Cサイトを歩いていくと、大きな照明設備と木が1本立っているところにソロテントくらいなら立てれそうな場所を発見した。ここだ。マジでベストかもしれん。大きな照明器具とは冬場のスキー場用のもので今は稼働していない。これが日陰にもなり、物干しとしてのフックになり、テーブル代りにもなる。そして隣に生えた1本の木は当然日陰、豪雨となった場合の雨避けとなる。フジロック中は必ず豪雨にさらされる。ひどい時はテント内に水が侵食してきたり、テントが飛ばされることすらある。あまりにベストな環境を手に入れてテントを立てて一息つく。もちろん持参したおにぎりをここで食べる。まもなく前夜祭が始まり、本当にフジロックがスタートする。

マーキー


去年は前夜祭はなく、夜に唐突に花火が打ちあがっただけだった。今年は苗場周辺の地元民も含め、多くの人が参加していた。人がたくさんいるオアシスエリアを見て、いつものフジロックが帰ってきたと感じた。前夜祭でのステージを見るためレッドマーキーに入っていく。ステージではDJが知らない曲を流している。フジロックは洋楽にもかなり詳しくないと誰の何の曲か理解できない。でもまあ知ってるふりをしながら観ていると、聞き覚えのあるイントロが流れてきた。The ClashのⅠ Fought the Lowだ。言わずと知れたロンドンパンクのヒーロー、クラッシュ。初めて聞いたのは高校生のころだったかな。これはアガる選曲だ。その次の曲は更に最高の曲だった。ブルーハーツの”終わらない歌”。今年も声を出して歌うことも声援も禁止されている僕らに、”歌おう”と呼びかけるこの曲。泣いた。去年のフジロックでのベストアクトは間違いなくクロマニヨンズだった。今年はクロマニヨンズは出ないしセッションでヒロトがゲストに来ることもないから、寂しかったんだけど、今年も苗場でヒロトの歌が聴けて良かった。


んで、前夜祭で衝撃を受けたのはおとぼけビ~バ~というバンド。女性4人組。曲は激早のハードコアパンク(主観)。歌詞は男が共感できるどころか男には耳が痛いような内容。こちらが勝手に抱く女子への理想と妄想を打ち砕かんとするようで痛快だ。堂々と中指を突き立てるボーカルも清々しい。演奏は特にギターとドラムがヤバい。楽器演奏スキルが小3までのピアノ教室で止まっている僕には演奏の何がどうヤバいのか具体的には解らないが、とにかくヤバくてかっこいいのだ。おとぼけビ~バ~は翌日の苗場食堂ステージにも出ていたので当然観にいった。セットリストは被りまくっていたけどやはり最高のステージだった。

画像6


28日DAY1で観たバンドは他にOAUくらいで、あとはのんびり会場をぶらぶらしていた。川に入ってハイボールを呑んでみたり、鮎の塩焼きを食べたりしていた。

ジャック


DAY2で観たのは台湾のバンドFireEX、オレンジレンジ、ジャックホワイト。FireEXは以前に細美武士が参加した曲が入ったアルバムを持っていて、今回参加の海外勢で唯一知ってるバンドだった。ホワイトステージで、お客さんの数はさほど多くなかったけど、僕が好きな曲も聴けたし、途中OAUのTOSHI-LOWがステージに入ってきて語っていたMCもTOSHI-LOWらしくて良かった。ダイブができればもっと気持ちよかっただろうな。レンジはグリーンステージで。ロックバンドなのかJ-POPなのか評価が分かれるところだが、あれだけのヒット曲が持ち歌にあるのだから、やはりつい口ずさみたくなるようなステージだった。この日のヘッドライナーのジャックホワイトは豪華なステージだった。曲は1曲も知らないので終始じーっとステージを観ていた。2018年にボブディランのように、ロックの歴史の資料集め的な感覚で観てしまったが、いつかジャックホワイトを理解できるくらいに音楽への探求を続けたいものだ。

鈴木実貴子ズ


DAY3は、石崎ひゅーい、スーパーオーガニズム、鈴木実貴子ズ。3日目で一番良かったのはルーキーアゴーゴーでオーディションを勝ち抜いてきた鈴木実貴子ズ。バンド編成も弾き語りもやっているみたいだが、この日のステージはドラムとアコースティックギターボーカルのみ。ボーカルの鈴木実貴子のこのステージに対する意気込みがそのまま現れているよう生々しい歌い方。使い込まれたギター。自分より年下で、性別も違うこの歌い手になぜか心を奪われた僕は、ステージ終了後、本人たちが手売りする物販でCDを買った。石崎ひゅーいもよかった。レッドマーキーというステージ規模も彼によく合っていたと思う。デビューアルバムからの2曲は完全に歌いながら観ていた。スーパーオーガニズム、日本人含む多国籍バンドだが、ボーカルのオロノがとにかく天才に見えた。このバンドの存在を知ったのは、東野幸治のホンモノラジオだった。ライブでオロノがおっさんファンに文句を言っていたというエピソードを東野がしゃべっていたので、これはネタになると思い、観ておこうと思ったのだ。観ておいて大正解。曲は知らないけど、とにかく才能を爆発させているようなステージで自分が如何に凡人かを痛感した。ちなみにこのステージを観た感想をホンモノラジオに投稿したところ見事採用され、東野と桂三度から笑いを取ることに成功した。この上ない自己肯定感だ。


今年のフジロックはほとんど雨が降らなかった。強力なレインコートを2着も準備していたのに全く使わなかった。日陰にテントを立てられたけど、朝の9時くらいになればやはりテント内は蒸し風呂状態になったので、来年はテントのグレードを上げたい。日差しを完全にシャットアウトするインナーテントが真っ黒のやつが買えたらいいな。あと折り畳み椅子はサイズダウンして持ち運びしやすくしようか。こうやって少しずつフジロッカーレベルを上げていくのだ。


いつものフジロックは帰ってきたのか。まだだ。フジロックはもっと楽しい。マスクを外して、大声で歌って、モッシュして、ダイブがしたい。去年ほどマスク着用ルールは厳しくなかった。正直最前のピット以外ならほとんどあごマスクで過ごした。マスクの下で歌ったし、他の人の歓声も去年よりハッキリ聞こえた。でも、もっと、もっとだ。サマーソニックでは、声出しを煽ったワンオクのTakaが批判されていたが、一体いつになればコロナ禍のライブから脱却できるのだろう。モッシュもダイブも危険行為だから、コロナがあろうが無かろうが基本的には禁止行為だ。ルールを破ることが快感なのではなくて、ルールを破りたくなるほど興奮させてくれるから好きなんだ。

僕は今後2つのライブに行く予定がある。大阪で銀杏ボーイズのワンマン。神奈川でSTAY ROCKというイベント。出演者はハルカミライ、銀杏ボーイズ、Ken Yokoyama、そしてクロマニヨンズ。この2つのライブにどんなルールが設けられるのかはまだ分からない。でもこのメンツだ。僕をルール破りにさせるにはこの上ないメンツだ。知らない人の肩を掴んで強引によじ上がってステージに向かって人の頭の上を転がっていく時に見える景色。あれが早く見たい。

去年のフジロック忘備録は書き残しておきたいことがたくさんあって、すぐにnoteを開いたのだけど、今年は書き出すまでに1か月かかってしまった。書きたいことがなかったわけではないが、去年よりもフジロックロスに浸っている時間が長かったからだと思う。去年までは帰ってきたら即仕事に忙殺されるので、忘れないうちに書いておこうと思った。今年は良くも悪くも時間に余裕がある。が、夢はまだ夢のままで、気を抜いたらすぐに堕落するのが目に見えている。やはりここできちんとフジロックについて書き記し、区切りをつけるのがいいだろう。来年もその先もフジロックに行くために。

ゲート


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?