ひと夏の終わり〜2017年のインフルエンサー#9〜

8月31日。関東地方では夏休みが終わり宿題を溜め込んだ小学生があたふたする時期だ。

東京のフジテレビでは毎年夏休みの時期にイベントを開催していて、全国各地から球体のビル目指して観光客などもやってくる。

この年は「お台場みんなの夢大陸」と題して7月15日から8月31日まで開催され、乃木坂46の「ひと夏の長さより」がテーマ曲になっていた。歌詞にも「8月のレインボーブリッジ」という一節があり、明らかなタイアップ曲だと連想させる。しかしタイアップありきでもひと夏の切ない恋をテーマにした歌詞とピアノの旋律は紛れもない名曲だ。逃げ水が表題だったがこの曲が裏表題曲で「何度も着たTシャツ」という歌詞もあるように乃木坂真夏の全国ツアーのテーマ曲でもあったように思える。

この日は夢大陸最終日。閉会式では乃木坂のミニライブが行われた。僕は仕事が急遽休みになったのでかなり後ろであることは覚悟しながら当日券を手に会場へ向かった。夕暮れのお台場の風は夏が終わる現実を突きつけている。

ライブは最新シングルの逃げ水や太陽ノックなどの夏曲を中心に乃木坂のライブでは定番の盛り上がり曲で構成された。しかしこの日は秋風が吹き付け観客もメンバーもみな寒さに身を震わせていた。その中で一人輝きを放っていたのが大園桃子だ。
遥か彼方に見えるステージで米粒ぐらいにしか見えないメンバーであったがモニター越しに彼女だけは全力の笑顔でキラキラしていた。それまで彼女はバラエティ番組ですぐ泣く印象しかなかった。成長した彼女はこの先さらに化ける予感がした。この時僕はようやく大園桃子の魅力、何故センターになれたのか?その理由に気付いたのだ。

ミニライブは全国ツアーのライブ時間に慣れた僕にとって光の速さでフィナーレを迎える。最後はもちろんこの1ヶ月半お台場を彩った「ひと夏の長さより」。

僕はこの曲を聞きながら歌詞の意味を噛み締めていた。「一緒にいるその幸せがずっと続くと思った やがて季節は過ぎるものと気づいていたのに ひと夏の長さより思い出だけ多過ぎて 君のことを忘れようとしても切り替えられない」
僕が東京に居られるのは12月20日までだと決まっていた。近くで乃木坂ちゃんを応援出来る時間には限りがある。ずっと続くと思っていたけどもう3ヶ月半しかいられない。この夏は思い出が多過ぎた。「肌寒い秋風が吹いてももう少しTシャツがいい」僕は夏の終わりに抵抗しようとしていた。どうしようもないと知りながら。忘れようとしても忘れられない夏、特別な夏。今でもこの曲を聴くとひと夏の儚さを思い出し感情移入して胸が締め付けられる。「そう思い通りに行かないのが人生なのか…」

ラジオとアイドルと鉄道模型に特化した人間です。 こちらでは鉄道模型作品の発表、自宅のNゲージタウンの日常や坂道48を中心としたアイドルの話などをしたいと思います。 週一回更新「潤ちゃんのリインカーネーション」