この国の新しい働き方は、「やさしいが強いもの」であってほしい

■社名の「O:」はどこからきたのか

こんにちは。

私谷本は株式会社O:(オー)という、「なんて読むんだ?」とよく呼ばれる会社を2016年末に設立し、CEOをやっています。https://o-inc.jp/

SEOにまったく向いてねえな!なんて株主からも周囲からもよく言われる、
この社名、現代IT社会ではまったくそのとおり不利な名前なのですが
個人的に非常に気に入っている社名です。※その理由は後ほど。。


O:では「体内時計」という「人間本来の時間軸」を基にした生活を取り戻せるプロダクトを開発している。
記事の最後あたりに書いていますが、私個人としては健康も大事ですし、「健康であることに起因する、高い創造性や生産性」に最も興味があります。

今、人間が使っている時間軸(社会的時間)は、実に人工的な概念で
4000年前のメソポタミア文明で発明された。

この時間軸は生活するうえで、非常に便利なことは誰も疑う余地がない。

そしてあまり認知されていないがもう1つ、
異なる時間軸がどんな生物にも備わっている

「体内時計」と呼ばれるものだ。

安定した生活を送っていると、毎夜同じ時間に眠くなったり、毎朝同じ時間に目覚めるのはまさに体内時計のなせる技。

しかし、この体内時計は現代科学においては
可視化することが非常に難しく、体感を飛び出ないものだった。

そんな体内時計と生活上での交点をつくるのが、いま開発・展開している「O:SLEEP」です。https://o-sleep.com/

人は「自分の時間」に素直に生きた方が健康にいい。
仕事にも好影響だ。
実際、人間以外の生物は基本的に「体内時計=自分だけの時間」にしたがって生きている。

しかし、現代人は体内時計に逆らった生活をする機会が多く、
それが健康…(健康というとなんだかロングテールなものに聞こえるが、)
もっとわかりやすく言うと、月曜日のけだるさや平日の生産性にちょっと無視できない悪影響を与える。
※このあたりは都市伝説ではなく、休み明け初日は自殺率が高いことや不調であることは過去の研究で明らかになっています。

いつかまた後日別にブログに書いてみたいが、
「同じものを食べても時間帯で太りやすかったりする」
「同じ運動をしても時間帯によってパフォーマンスが異なる」
ことがわかっているが、こういったことも体内時計の作用の1つだったりします。

そんな体内時計の社会実装が、O:が一丸で目指すところなので、
社会的時間の象徴である「アナログ時計の文字盤」から短針と長針が飛び出し、「丸型」になるグラフィックをそのまま社名にしました。

メッセージとしては「いまの時間から飛び出して、体内時計もちょこっと意識して生活しようぜ」というもの。

もはや情緒感しか残っていないですが、名は体を表せるような会社をめざして日々働いております。


■平成の30年間で、日本人が失ったもの

ぜんぜん話は変わって。
私は阪神タイガースが日本一になった
1985年生まれで、青春と呼べる時代のほぼ全てを「平成」で過ごした。

平成の最初から終わりまでを実感してきて思うこととして、
大きくこの期間に失ったものは「余裕」じゃないかと実感しています。

大きくは「金銭的余裕」と「時間的余裕」ですが、
後者の時間的余裕について。

時間とうまくつきあっていますか?と言われて、
元気よく「はい!」と言える現代人を見たことがないが、
90年代はまだ今よりマシだったと記憶している。

日本には悠久の歴史があり、自然や八百万を大切にして
四季とともに生きてきた民族だったが、高度経済成長時代に入って、
とくにインターネット及びIT技術の進化にともなって
「スピード」が1つの信じる神となった。

もちろんこの流れは「進化のたまもの」なので止めるべきではない。

ただ、特に平成に入ってから顕著な流れだが、人間の進化以上のスピード、
つまり「急」が日本に溢れていて、多くの人が疲弊する原因になっている気がしている。

多くの場合、スピードが早いこと自体は恩恵につながることを理解しているが、その負荷が今以上に増えていったら、人間が耐えられ続けられるのか?といった観点はあまり議論になることはない。

私はこれまでの10年近くしかない、そこまで濃くもない社会人経験で、
「自分の中の時間を、社会(会社・上司etc)が求める時間感覚に合わせる」
ことや
「自分の時間を犠牲にしないと、物事を達成しづらい」
ことで割といろんなことに問題が起きていると思っている。

急に哲学的な話になるが、古代ギリシャの賢人たちは、「時間とは何か?」という問いを突き詰めた結果として、「クロノス(実時間)」
「カイロス(体感時間)」という2つの時間に分類した。

現代社会はこの2つの時間でいうところ、
「実時間に追われて、体感時間が無視されている」状態に近い。

この体感時間や体内時計が可視化されておらず、
悪い状態だったとしても、客観的に把握できないのが一番の原因だと思うが
このあたりの問題意識と戦うプロダクトはほぼない。
それをやりきりたい。

この2つの時間とバランスよく付き合える世界、「時間的余裕」が今よりも感じられる時代になると大げさではなく真剣に、もっと人類が「でかいこと」をやってのけるのではと思っている。


■アジアを席巻する新しい働き方「9・9・6」に、どう向き合うか


この記事の序文にて、「健康であることに起因する、高い創造性や生産性」に最も興味があります、と書いたが、僕は体内時計は「あたらしい働き方」の1つの答えになるのではと思っている。

先日、楽天技術研究所所長の森さんと対談(※)させていただいた際に、
9・9・6」と呼ばれる、いま中国で主流になっている働き方の話になった。

【前編】「AIを使ってECをアップデートする未来」 https://note.mu/o_inc/n/n4390c45de126
【後編】「1000人でマインドフルネス、これからの働き方改革」 https://note.mu/o_inc/n/ncdeaa2dd9c06

「9・9・6」とは「午前9時に出社し、午後9時に退社、6時間睡眠」という生活に由来しているが、
こんな働き方だと、日本ではブラックに近い働き方だと言われるだろう。

しかし、良くも悪くも、アジア諸国はこの中国の働き方をベースにビジネスを加速させている。

この働き方は、ちょっと前に外資系の投資銀行やコンサルに行く人たちの間で「早期リタイアできるお金を早く集めて、あとは遊んで余生を暮らす」
考えが流行ったがそれに近いかもしれない。

このあたらしい働き方に対して、日本の働き方は下記2つの問題をはらんでいる。

①もともと生産性を量でカバーしてきた日本だが、量でカバーすることは時流的にもはや不可能なので、何かしらの変化がない限りアジア諸国に対して、これまでのような生産性の差を生み出すことは難しくなる

②アジアの優秀な若い働き手が、「働き方の考え方がイレギュラー」的な日本で働きづらくなる

という点だ。

特に①について思いを巡らせるが、
量が厳しいなら質に目を向けるしかない。

最近は様々なtoBサービスで「効率化」を促すツールが誕生している。
これは非常にすばらしい流れで今後もっと加速するだろう。

一方、「効率化されることで、つくられた時間」を
有意義な時間として消化できるかという問題が別途立ち上がる。

さらに、そもそもツールを扱う人間が不調の状態であると、
全てのツールの底力を引き出せない状態に陥る。

このあたり、まだ強い研究結果はないが、
健康経営を積極的に実践している株式会社フジクラさんの
「フジクラグループの健康経営~社員が活き活きと働いている会社を目指して」によると、

日本やドイツのような、転職に消極的で労働力の流動性が低く、
人手不足が加速している社会においては
健康維持への投資>作業能力拡張(効率化)への投資

と発表されている。

確かに、シモ・ヘイヘに新型銃を与えることで、よりたくさんの敵を狙撃することは間違いないだろうが、本人の状態が不調であれば、その新しい銃を活かしきれるかは怪しくなってくる。

ちなみにフジクラさんは健康経営を2010年に本格スタートし、働きにくい環境=稼げない環境を改善。売上1.4倍、営業利益5.1倍、営利率3.7倍達成したうえに離職/休職率も大幅低下したという結果を残した。

健康経営以外にも売上向上に貢献した施策はもちろんあるかと思うが、
健康経営前後で業績が大きく変化したことは明らかな事実である。

そして、希望の1つとして、こういった事例は「再現性」が担保されている
他社でも全然実現できる内容だ。

このように、「健康に立脚する生産性の創出」は、
まだそんなにプレイヤーがいないが、やりきれると思う。




■「やさしくも強い」働き方


90年代、メールが発明された。
この発明は働き方を劇的に変えると言われた。
実際に変わった。
もはやメールなしで仕事するなんて考えられないだろう。

…そして、同時に、業務時間外や休日でも常に業務の圧迫感を感じることになった。

ツールに立脚する生産性革命は、どこまでいっても、どこか人に負担を強いるのではないかと思う。
もちろん使い方次第だが、必ずしも人間は人間優先に動かないことは、ダイナマイト然り、切なくも歴史が証明している。

一方、僕は健康に立脚する生産性向上は「やさしいが強い」ところが、いいところだと確信している。

僕らは体内時計でそれをやりたい。
割と明るい未来がそこにあると信じている。

会社を立ち上げて2年強、
自分たちがなぜ会社を立ち上げたか
そのきっかけや、何を目指しているか
振り返ってみた。

無駄に長い文をここまでお読みいただき、深く深く感謝します。

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