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場末のディサービス(ハルさん)

歌が大好きなハルさんが利用開始になった。
認知症で独居 利用前訪問では認知症状もあまり見られず、身なりも
きちんとして 大きなダイヤの指輪をされていた。
話もそこそこできて 冗談も言われるし ディサービスから少し
遠いのが難点かなと思った

お迎えの電話が繋がらない お迎えに行くとまだ寝ていたり 身支度に
時間がかかったりで 後の時間が全く読めない状態だった。
おまけに古い団地の4階 エレベーターがなかった

私は何度も4階まで上がったり降りたりをした。

ディサービスでは カラオケがとても上手で男性利用者さんから
人気があった なんというかハルさんは可愛かった
お化粧をしてくる人が少ない女性の利用者さんの中で 赤い口紅が
よく似合ってた。スラックスがほとんどの利用者さんの中で
柔らかい生地のワンピースが ヒラヒラしてて 花のようだった
朝のお迎えさえ うまくいけば問題なく楽しく過ごせる人なんだけどと
思っていた。

ある日仲良しのケアマネが来所されて あの方ここにきているの?と
ハルさんのことを聞かれた 個人情報だけど ハルさんの今後のことも
あるので 今までのことを聞いた。

ハルさんはカラオケ屋さんで知り合った男性と恋仲になり
夫も子供も捨てて その男性の元に走ったそうだ
多分50を過ぎていた頃だろう ご主人はともかく 子供達を置いて
その男性と一緒に生活をしていたようだ
ディサービスを利用されるときは一緒に生活をしていた男性は亡くなられて
一人だった。
ハルさんはお金が無くなると 元ご主人のところにお金を貰いに
くる 何度もくるらしい
元ご主人は体調も悪いのに ハルさんはお金を貰いにくると
ケアマネは怒っていた。自分で出ていって どのツラ下げて!と・・・

熟年というか高齢者の集まるカラオケ屋さんではハルさんのような
話は沢山あるようだ
子育ても落ち着き 少し暇ができた奥さん達が はじめは友達に
誘われ一緒に出かけるが そのうちハマって一人でいくようになる
昼間が夜になり 顔見知りも増えていく
気の合うおじさんに声をかけられる

そんな感じかなと想像できる。

ハルさんを家庭に引き戻すだけの魅力のある家庭ではなかったのか
ハルさんは子供達のお母さんで満足できなかったのか
テレビドラマのよう・・・


場末のディサービスの看護師さんと1週間に1回は電話で話をするように
している。ご主人の介護が結構大変そうなので ガス抜きで
話をしている

元気?ご主人どう?から始まる
しんどいばっかり言ってる 最近は食事が終わって しばらくするとウロウロして
ご飯まだかな?って何回もいうの 1日何回もよ😤
食器はすぐ片付けないで 少し前に置いていたら?ディでもそうしたやん
汚いからすぐ片付けろっていうの
男性の利用者さんはすぐそう言っていた バタバタしてるから 少し待って下さいって
言っても片付けてくれって そう言う人に限って 飯はまだか!って言う

疲れると 意地悪して 1週間ぐらい泊まりに行ってきてって
意地悪を言うと 悲しそうにするの 悪いなって思うけど
私もしんどい。
夜中にトイレの前で ぼーっと立っていてびっくりした
私の血圧が上がりそう 愚痴は尽きない

でも 30分もすると庭に植えたスイカが・・花が・・と言い出す。

口ではなんだかんだ言っても 優しい彼女
長い間 夫婦をしていると 愛はないけど情がある

母がよく言ってた 歳を取ったら 一緒に寝なきゃだめよ 具合が悪い時に
気が付かないから そういえば両親は同じ部屋だった

彼女も私も 寝室は別で 夜の時間一人で楽しんでいる

愛は無いけれど 情はある。


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