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場末のディサービス(任侠ヘルパー?)

「じゅんこさん お願い、一人ヘルパーさん面接してくれない?」と懇意に
しているケアマネから電話があった。
「面接だけなら いつでもいいですよ。どんな方ですか?」
「実はね 病院の断酒会のメンバーでね、もとやくざさん 何度か刑務所に
出たり入ったりしてたけど、今はヘルパーの資格を取って仕事を探してるの
面接だけでもしてもらえたら?」

ん・・ややこしそうな人 少し時間をおこう それとも社長のせいにして
断わろうかな・・頼まれると断れない私、引き受けてそれが全部私の
ストレスになってきているし この人はしんどいかも・・・
と思いながら  一応オーナーに「面接するときは 一緒にお願いします」
と電話を入れる。

場末のディサービスは毎日色んなことがあって 忙しい。忘れかけた頃

ケアマネが来所「面接だけでも・・・」

社長と二人で近くの喫茶店で会ってみた。
坊主頭の大人しそうな おっさんが一人
普通の面接?(なんか変だけど 一応色んなことを聞いてみた。)を
して 彼が「刺青が入ってます」「どこに?」「背中に少し」
「お風呂介助とかあるよ」「大丈夫です 見えないようにします」

「社長どうします 男性スタッフがいると トイレ介助とか楽でいいですけど・・」
「僕は普段ディにいないから じゅんこさんに任せるよ」

また~~そんなこと言って 私になげる・・
社長は別の仕事を持っていて よく来ても週に1回ぐらいしか場末のディサービスに来ない ただ私が管理者を引き受ける条件に 何かあったら
必ず助けると約束していたので困ったときは応援にきてくれていた。

面接した彼をパートで来てもらうことにした。場末のディサービスに迷惑を
かけるようなことがあったら辞めてもらうという事でパートで採用した。
彼は 人当たりがよく 男気があってすぐに利用者さんの人気者になった
尼崎という土地柄 元やくざさんもいて彼とは気が合って、よく話をして
いた。優しい彼は女性の利用者さんにも、人気があった。

ある日彼が相談があるというので 聞いてみると
3回結婚をしていて 娘が一人いる その娘が結婚する
結婚式をハワイでするので出席して欲しいと言ってきた 自分はハワイには
行けない 娘の母親が金を貸して欲しいと言ってきた
どうしたらいい?という相談だった。

いい娘で相手は市役所の職員 自分は相手のご両親にも合わせる顔がない
元奥さん 立派に育ててくれて 娘さんもお父さんって言ってくれる。
私だったら お父さんはとっくに死んだって言ってると思う。
お金があるんだったらお祝いってあげたら・・今までなんにもしてないんでしょ お父さんらしいこと そんな話を彼とした。

1か月ほどして 娘さんのハワイ土産を嬉しそうに見せてくれた。
「こんな俺の所に 二人できてくれたんです」
彼は頑張って運転免許も取った お風呂介助もできるようになった。

時々彼の背中の刺青が見えるときがあって 注意をしてたが、ふと気になって他のスタッフに彼の刺青は利用者さんと比べてどんなもん?と聞いてみた
「彼の刺青をみたら 利用者さんのものは、ちょろいもんです」
「何で知ってるの?」
「忘年会の後、酔って服を脱いで見せてくれました。背中からお尻にかけて
 すごいです」

そうなんです
彼は酒癖が悪かったんです。

つづく








 

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