ハビタブル惑星
「デューン」の惑星アラキスをはじめSFに登場する惑星は、大抵、大気があって人間が宇宙服も着けずに歩き回っている。しかし、現実の宇宙にそのような地球と同じような環境を持つ惑星など存在するのだろうか? 大気の存在する惑星は無数にあるだろうが、その大気成分はほとんど二酸化炭素と水蒸気であろうと推測される。なぜなら、二酸化炭素と水は化学エネルギーが低く、きわめて安定で、宇宙のどこにでも存在するからである。それに対して大気に酸素が存在する惑星はきわめて希である。ひょっとすると地球以外に存在しないかも知れない。なぜなら、酸素はきわめてエネルギーが高い危険な分子で、そんなものが存在するとあらゆるものが燃え、酸化してしまうからである。地球上でも同じである。地球大気の酸素含有量は約21%で、これが少しでも増えると自然発火による森林火災が多発する。そんな酸素が地球大気に大量に存在するのは、もちろん植物の光合成の結果である。もし他の惑星に酸素分子やオゾンが大量に発見されれば、それは間違いなく光合成生物の存在を示すものであろう。
水はありふれた分子であると書いたが、液体の水が存在するかどうかは別の話である。金星のような高温の惑星では水分子はほとんど水蒸気になる。逆に火星のような低温の惑星ではほとんど固体の氷になる。地球のように液体の水が存在するためには、ある程度の大気圧の下で限られた温度範囲になければならない。そして液体の水は、まだ完全に証明されたわけではないが、生命存在の必須要件である。
そのような液体の水が存在出来る環境を持った惑星を、ハビタブル惑星と呼ぶ。液体の水の存在を可能にするさまざまな要件もった範囲を、ハビタブルゾーンと呼ぶ。
そのようなことは、かなり昔から言われていたことだが、最近の観測技術の進歩は素晴らしく、太陽系から数十光年以内にある恒星の中で惑星を持つものが続々と見つかってきた。単に惑星が存在するだけでなく、その惑星環境がハビタブルゾーンに入っているかどうか、というところまで観測出来るようになってきたようである。
「天文月報」(日本天文学会機関誌)2021年10月号では、ハビタブル系外惑星(系外とは太陽系外のこと)の特集が組まれていて、一昔前までなら不可能であったような観測手法まで紹介されている。
もちろん多くの研究者の関心は、ハビタブル惑星を発見することだけではなく、生命の痕跡を発見することに集中していることは言うまでもない。
統計データがあるわけではないが、天文学者のほとんどは地球以外の惑星にも生命がいることを信じている。知的生命がいると信じている人も多いであろう。
一方、生物学者の多くは、地球外の生命存在を信じていない人が多いようである。ましてや、知的生命など存在するわけがないと考えているようである。
天文学者は、銀河系に1000億の恒星が存在し、その多くが惑星を持っていること。そして、そのような銀河が全宇宙で数千億も存在するという事実から、宇宙には生命、そして知的生命がいると信じている。
一方、生物学者は生命の奇跡を目の当たりにしている。知的生命ということで言えば、あの6700万年前の隕石衝突による生命の大量絶滅がなかったなら、人類はこの世に生まれてこなかったであろう。人類誕生は生命進化の必然ではない。あまたの偶然が重なった結果、ほとんどあり得ない確率で起こった出来事なのである。何千億の何千億倍の惑星が存在しようが、こうした奇跡の起こる確率はきわめて低いと言わざるをえない。よって、我々は広大な宇宙の中の孤独な存在なのかも知れない。
さて、あなたは天文学者と生物学者のどちらが正しいと思われますか?
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