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カラスは転けるしハエも転ける

川原のノリ面の階段を上がったら、白御影石の台が3本立ってる。特に上に貼られた白御影石の表面はツルツルに磨かれている。石段を登って休むのにちょうど良い。

この辺りはいつも綺麗で、石の上には鳥の糞もない。フッと思いついたのが、これは鳥避けになってるのではないかと思った。

川原の石の上にカラスが降りてきた。カラスは川に近付かないと思っていたのに、喉でも渇いたのかな、などと眺めていた。フラリと降りた瞬間に、足が滑って転んでしまった。石の表面が平らで、爪を拡げても掴みきれなかったのだろう。

カラスも時には面白い表情を見せる。あの滑ったときの顔はどんなだったのか、想像すると面白い。

早朝に市内の大通りを走ったとき、道路脇のゴミ集積場にカラスが集まって荒らしていた。横を自動車が通っても、全く動じる事もない。

数匹のカラスがじゃれ合うように飛んでいた。そこを走っていて、ぶつかりそうになった。カラスも気付いて慌てて上に方向転換して、こちらもブレーキを踏んで、ギリギリの所で何とか衝突は回避できた。

わずかフロントガラスから1m離れて、カラスの驚く顔を初めて見たが、カラスも驚くと口を開けてしまうらしい。ビックリした顔で口を開いてて目が合い、慌てて羽根を激しくバタバタさせて行った。驚いてパチクリした目と、ウワッと大きく開けた口を思い出すと笑えてしまう。


そうそう、実はハエも転んでしまう。

車のフロント部にハエが降りて留まった瞬間、発進させた。少し大きいハエが、降りた瞬間なので何が起きたのか分からなかったようで、コロコロと数回転がって体制を整え、飛んでいった。急ブレーキで止まったのだが、あの時のハエの驚き様と、さすがに顔の表情までは分からなかったが、一瞬何事かと止まって考え、飛んでいった。

思いも寄らないことが起きると、カラスもハエも面白い行動に出るようだ。


何年か前に雨上がりの後、事務所跡のセメントで平らなところに立っていた。セメントの表面には緑色の薄いコケのような物が生えていた。

そこに立っていたときに近所の人が通り、ごく普通にいつもの通りの挨拶をした。直ぐに動き始めたら、足下が滑ってしまった。右足は前に伸ばし、左は膝を曲げた状態で後ろの方に行って、股を拡げた状態で尻餅をついた。横に転ばなかったので、大丈夫大丈夫、などと笑ってごまかしたが、このままの状態でしばらく動けなかった。

冠動脈狭窄で数回入院してから、急激に身体の柔軟性が失われ、腰の回転や横曲げ、膝の屈伸や股開きが出来なくなっていた。それを全体重を掛けて強引に股割をしたのだから、痛いというような簡単なものではなかった。

そのままの体制で、腰の骨が折れたのではないかと思えるほど、痛みと共に動けなくなっていた。今も杖を頼りにしてるのだが、あの時の股割で股関節と腰を傷めたからだ。


歳を取ると反応が悪くなるだけではない。筋肉も衰えて、踏ん張りが利かなくなる。痛いから動かないでいると、更に筋肉の量は減ってきて、今度は平らな所を歩いていても躓くようになる。スーパーマーケットなどに買い物に行き、あの磨かれた平らな床でさえ躓いてしまう。実に情けない。

少しでも回復させるには、散歩の早歩きをして、意識して股の筋肉を使うようにしなければならない。たかが歩くだけのことで、何をしてるのだろうかと情けなく思う。


と書いていながら、あの時のハエは大丈夫だったのだろうかと思う。少し大きいハエだから、自分と同じ様に肥満だったのか。直ぐに体制を整えられずに、数回も転がったのは高齢になって踏ん張りが利かなかったのだろうか。

同病相憐れむというが、ハエも同じ老体であったかと思うと、杖を持てないハエは、今頃どうしてるのかと心配になってくる。


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