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万物全て同じくり返し

70代も半ばとなれば、髪が薄くなるように、歯の抜け落ちるように、頼るべき人との別れは仕方ない事。早くして逝った友人もいれば、自ら舞台を降りた者もいた。

結婚式の招待は面倒だが、葬儀ならば喜んで行ってやる。そんな悪態を吐いてた頃が懐かしい。互いに高齢者になると、会うことも無くなってくる。


青青陵上柏  青青せいせいたる陵上りょうじょうはく
磊磊澗中石  磊磊らいらいたる澗中かんちゅうの石
人生天地間  人はまる天地てんちあいだ
忽如遠行客  こつとして遠行えんこうの客の如し

青々と茂った台地の柏の木
磊磊と転がる谷川の石
人は天と地の間に生まれ
遠方からの客の如く忽然と消え去る

だから人生は楽しまなければいけない、といった古詩だった。
果たして楽しめた人生だったのだろうか。豪放磊落に見えて、陰では親族のために腐心し、動いていた。そういう生き方に憧れたが、振り返れば自分のことで精一杯だった。

何となく漢詩を書いて手向けてとしたくなったが、いよいよ人差し指が使えなくなったようだ。永遠と思える木石さえ、大木もいずれは朽ちて倒れ、岩も流され砕け砂利へと変わる。万物、全てみな同じ。生じたものは、やがて消える。なんか、そんな事が『烈士』にも有った様な・・・。

今夜は早く風呂に入り、飲んで寝よう。生まれた時も去りゆくときも、所詮は一人。思えば、いつの間にか同年代の親族でも、もう何年も会う機会が無い。葬儀のお斎のみが、わずかに旧情を温める場となった。

あんた達は生まれた時から、食べるときも寝る時も、いつも一緒で良いねえ。

本当は、もう飽き飽きしてるのかな。それもまた運命か。


最近、様々な相談電話が多い。若いのにメールではなく、夜遅くに電話が来る。そして1時間以上も続く長電話だ。途中で切って折り返し電話をするが、先月のスマホ使用料金が通常の3倍以上の1万5千円を超えた、自宅のWi-Fi下なのに。通話料金が高すぎる。

irumoにして、電話の掛け放題にしようかな。静かな日々を送りたかったのに、若い者ほど電話が多いとは・・・。ジイサンの最後の仕事は話し相手なんて、何とも時代が変わったものだ。

それとも、老人への、若い連中の気遣いなのか。
なんとなく、寂しいもんだねえ。


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