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クリーピーパスタ2はこんな本!第13夜BATS IN WINTER (仮題:冬のコウモリ)

第13夜
BATS IN WINTER (仮題:冬のコウモリ)
作者:Isaac Boissonneau

〈ストーリー〉
風が吹きすさぶ寒い夜、ジョン・アースキン巡査の机の上の電話が鳴った。
友人の巡査エリスからで、また事件が起き、ひどい有様だという。
街にはウィルス性の血液の病気が広まり、この病気にかかった子供たちが吸血鬼と化し、家族を惨殺する事件が相次いでいた。
アースキン巡査は事件現場となった一軒家に到着すると、エリス巡査とともに二階へ上がった。悪臭がきつくなる。部屋のひとつをのぞきこむと、首を吊った少年が屠殺された豚のようにぶら下がっていた。Tシャツと足元の絨毯には血の染みがあり、すでに黒ずみ始めている。
二人の巡査はバスルームへ向かった。便器の中にどろりとした黄色い胆汁と、血液、かみ砕かれた肉片、さらに何十個もの小さな鋭い歯が浮いていた。
子供部屋を見に行くと、壁には血飛沫が飛び散り、深い爪痕が残っている。突然、さきほどの部屋から何かがぶつかるような大きな音が聞こえた。きっと少年の死体が風に揺れてぶつかったのだろう。アースキンは拳銃の準備をしながら、少年の部屋へゆっくりと近づいていった――。
〈感想〉
この後、吸血鬼化した少年とアースキン巡査との緊迫したシーンが描かれるのですが、全体を通して、作者は恐怖を描くことより二人の巡査の友情を描くことに重点を置いているようです。子供のころからずっと一緒で、警察官という同じ道に進み、苦楽を共にしてきた二人に、最後の時が迫っていました。
実は、エリスもこの伝染病に冒されていて、あと数年のうちに完全に吸血鬼化してしまいます。治療薬はなく、アースキンにもどうすることもできません。二人の悲哀を象徴するかのように、冬空を舞うコウモリの群れが、鬱蒼とした森へと消えていくのでした。
まるで警察バディものドラマの最終回を見ているような気分に浸れる作品です。

作者のIsaac Boissonneauは、YouTubeなどでHopefullyGoodGrammarという名前でも活躍している、本作では最も若手のホラー作家です。前作『THE CREEPYPASTA COLLECTION』にも「THE HORROR FROM THE VAULT(仮題:地下納骨堂からの恐怖)」という素晴らしい作品を提供していますが、残念ながら長さの問題で(『【閲覧注意:ネットの怖い話 クリーピーパスタ】』に収録できませんでした。とても力のある作家さんなので、ぜひ日本の読者の方々にも知っていただきたいです!

さて、この『THE CREEPYPASTA COLLECTION volume2』には、こんな感じの“ちょっと切ない”ホラーも収録されています。もし翻訳されたらちょっと読んでみたいな!と思われた方は、ぜひ「いいね」とか「スキ」などリアクションしていただけたら嬉しいです。
(文責:岡田ウェンディ)


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