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循環系?ホラーコミック、コワい話は≠くだけで。


読んだ本について、特に深い考察もなく、感じたままに書くだけの緩い記事です。今回はホラー系コミックスを読んでみました。noteの中で素晴らしい考察をされている方がいらっしゃいますが、これはあくまでも単なる感想です。

コワい話は≠くだけで。1~3
梨/影山五月


今回はすでに有名なホラーコミックを読んでみました。
漫画家の影山五月さんが、編集者の依頼により、「様々な方法で」提供される怪談話を漫画にすることになり、いわゆる「考察」なんかはなしで「聞いたことを描くだけ」のつもりで連載を始めるが……というお話。
 
全3巻で、それぞれ8話ずつ実話怪談風のお話が収録されています。
作者はあの『かわいそ笑』の梨さんということで、さすがの不気味さです。
『かわいそ笑は』発売されて二か月後に読みましたが、読み終わったとき「これを読んだことは家族にも誰にも絶対に知られてはならない……」と思い、自分の読書記録にも記載せず、もちろん読書感想も書かず、なかったこととして封印していました。今ここで書いちゃいましたが。それくらい気持ち悪くて、怖いというより人の悪意にイヤ~な気持ちになる作品でした。もう二度と読み返す気になれないので(老眼に優しいkindleで購入したので、少しでも読み直すとライブラリの最初に出て来てしまうのが嫌なのです)、記憶が間違ってるかもしれませんが、たしかいわゆる「おつかれさま」系の変化球だった気がします。
この『コワい話は≠くだけで』シリーズもそれに近い感じで、「ある目的」のために書かれているので、読み始めたら途中でやめずにぜひ3巻全部読んだほうがいいですよ……。でも変化球になっているのは、読者に対する梨さんの優しさなのかもしれません。ありがとう梨さん!
 
で、『かわいそ笑』でもそうだったように、なんかちょっと違和感のあるメッセージみたいなものが提示され、最後にそういうことかとつながってくるのですが、べつにそれ自体は怖くないのに、全体に漂うこの不穏さはなんなのでしょうね?
 
1巻目で特に好きなのは、一人暮らしを始めることになった青年が部屋を片付けていると、小学校時代の思い出をまとめた箱からある女性の名前が書かれた、覚えのない手紙がでてきて……という題1話「補完」。それと夜中に徘徊する趣味のある男子高校生が、「あるはずのない家」で不思議な体験をする第3話「閑静」。
 
2巻目では、自宅のファックスに奇妙な文書が届いたが、それにはその家の中学生の息子が「調査」と称して侵入したある無人の廃オフィスが関係していたという第10話「訂正」。
また、「没にした」プチエピソードの数々もおもしろく、そのなかのひとつで「みかか」という言葉を知りました。家族に聞いたら知っていたし、普通に常識らしいですが、勉強になりました。ネットスラングおもしろいですね!ほかにも、本書には出てきませんが「乳袋」とか(笑)
で、2巻あたりから漫画家の影山さんに異変が起き始めます。
 
3巻目は、漫画の読者から募集した体験談で、山で「ワッカモン」と呼ばれる怪異に遭遇したという第17話「山童」や、影山さんが実際に怪談の取材としてある場所に捨て置かれた廃バスに入って撮影していると……という第20話「運転」が面白かったです。これは本当に廃車になった観光バスの写真が何枚も掲載されていて実にリアル。
エピソードのひとつひとつは、正直それほど怖くはなくて、ただ薄気味悪いっていうだけなんです。べつに何かが襲ってくるわけでもなく。怖さでいったら、それこそ『ぼぎわんが、来る』みたいな物語のほうが何倍も怖い。それでも、こういう日常のなにげない違和感の断片が集まって、「そういうことだったのか!」とわかったときにぞぉ~っとするという心理はなんなのでしょう? そして最後はやっぱりイヤ~な気持ちに浸れます。
梨さん。これからも目が離せない作家さんです。
(文責:岡田ウェンディ)
 



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