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クリーピーパスタ2はこんな本!第6夜PROXY (仮題:プロキシ)

第6夜
PROXY (仮題:プロキシ)
作者:Aaron Shotwell

〈ストーリー〉
精神医学と神経生物学に大変革をもたらす画期的な「ナノマシン神経学」。その最初の被験者となった老人が、脳にナノマシンを埋め込まれ、コンピュータにつながれて病室のベッドに横たわっている。会話はコンピュータと脳の間の信号によって交わされている。

老人には、手足のまひや痙攣、言語機能がうまく働かないなど、あちこちに不具合が生じていたが、やがて脳の記憶を司る領域にも不具合が起き、もはやこれまでに出会った誰の顔も、最愛の孫娘の顔さえ思い出せなくなってしまった。

その代わり、思い出してはいけない記憶が蘇ってきた。顔のない男。それは子供の頃に森の中で出会った、当時の友達の父親が崇拝していたカルトの教祖だった。友達は生贄として殺され、自分は友達を見捨てて逃げ出したのだった。今になって再び現れた顔のない男は、老人に孫娘を差し出せと迫るが――。

〈感想〉
作者は前作『THE CREEPYPASTA COLLECTION』(『【閲覧注意:ネットの怖い話 クリーピーパスタ】』にも登場し、「They Die Nameless(邦題:無名の死)と「Smile. Montana(邦題:スマイル・モンタナ)」の二作品を提供しているアーロン・ショットウェル。前回は呪いをテーマにした作品でしたが、今回はがらりと変わってSFっぽい作品となっています。

2078年という近未来を舞台に、寝たきりの老人の脳内で起こることを描いた異色作。ナノマシンって昔からフィクションの世界ではあったみたいですが、もう現実になりつつあるようですね。

作中、老人とコンピュータとの対話部分にPythonみたいなプログラミングコードがさしはさまれ、SF感をぐっと高めています。一方、この「顔のない男」は、ここではカルトの教祖となっていますが、「背が高く痩せていて、黒いスーツを着ている」「背中から蔓(触手)が飛び出してくる」「子供を生贄に欲しがる」という特徴から、都市伝説のキャラクター「スレンダーマン」がモチーフなのはまちがいないでしょう。本作はSFと都市伝説を融合させた実験的な作品といえます。

老人と一緒に、読んでいるこっちまで意識が混濁してくる妙な浮遊感。そして悪夢の無限ループ! 気持ちよく終わらないところがこの作者らしいといえそうです。

さて、この『THE CREEPYPASTA COLLECTION volume2』には、こんな感じの“SF+都市伝説”的ホラーも収録されています。もし翻訳されたらちょっと読んでみたいな!と思われた方は、ぜひ「いいね」とか「スキ」などリアクションしていただけたら嬉しいです。
(文責:岡田ウェンディ)

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