クリーピーパスタ2はこんな本!第11夜IF ONLY THEY WERE CANNIBALS (仮題:ゾンビが人食いだったらいいのに)
第11夜
IF ONLY THEY WERE CANNIBALS (仮題:ゾンビが人食いだったらいいのに)
作者:Jaime Townsend
〈ストーリー〉
ある街で、狂犬病ウィルスの突然変異により、人間がゾンビ化してしまった。通りにはゾンビがあふれているため、アパートの4階に猫と暮らす若い女性は、もう何週間も部屋から出られず、いよいよ食べ物も尽きてきた。軍も警察も機能しておらず、助けは来そうになかった。
雪が降った翌日、ふと窓の外を見ると、通りはあいかわらずゾンビだらけだったが、みんな雪の中で凍りついて静止している。チャンスは今しかない! 女性は意を決して通りの向かいの店に食料を調達しに行くが――。
〈感想〉
ホラー界の永遠のアイドル、「ゾンビ」。おそらく一般的なイメージは、ふらふらとゆっくり歩き、人を見ると噛みついてくるという感じだと思いますが、この作品のゾンビは少し違います。彼らの食糧は人の肉ではなく、人間と同じ普通の食べ物です。なので、街にゾンビがあふれるとまず食料品店やレストランの食糧が食い荒らされ、生き残った人間たちはゾンビの餌食になるのではなく飢え死にすることになります。
さらに、一番厄介なのが男ゾンビ! なにしろ、「three-peckered billy goat」より好色魔で、動く物になら何にでも乗っかるという絶倫野郎なのでした。「peckerが3つついた雄ヤギ」って! この表現、peckerさえ調べれば意味がわかりますが「Urban Dictionary」に形容詞の部分を変えた表現がいくつか載っていました。本書に出てくる表現「hornier than a three-peckered billy goat」では「The ultimate of being horny(究極のすけべ)」ですが、「hot as a three-peckered billy goat」となると「Someone or something over excited, aggressive, or very attractive(興奮しすぎ、攻撃的、とても魅力的な人や物」という意味だそうです。いずれにしても、peckerを3つも持っているヤギは元気いっぱいのイメージなんですね。念のため、ChatGPTで確認したところ、動詞としての「peckered」 はpeckerを持っているという意味で良さそうですが、「非公式で卑猥な表現であり、公式な場面や敬意を払う場所で使用するべきではありません」との警告が。すみません、不特定多数の方に読んでいただける可能性のあるnoteで取り上げてしまって……。しかもこんなに長々と。
本作は短編の中でも短めの作品なので、無駄を省いてコンパクトにまとまっていて、緊迫感を存分に楽しめる傑作といえるでしょう。さて、この女性の運命やいかに? タイトルが暗示する意味(もう、いっそ食ってくれ!)を考えるとぞっとしますよね。
作者のジェイミー・タウンゼントは、この作品のようなショートホラーを得意とする作家です。インターネットで活動していますが、『The Darklings』という著作が特に有名だそうです。
さて、この『THE CREEPYPASTA COLLECTION volume2』には、こんな感じの“バッドエンドの予感”漂うホラーも収録されています。もし翻訳されたらちょっと読んでみたいな!と思われた方は、ぜひ「いいね」とか「スキ」などリアクションしていただけたら嬉しいです。
(文責:岡田ウェンディ)
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