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人生、綴ってみた 【結婚・前編】 #14

 仙台の生活に慣れた頃
 東日本大震災を経験した
 凄まじい揺れだった
 聞いたことがない大きな地鳴り
 地球の唸り声のようだった

 この世の出来事だとは思えない
 目にするもの全てが形を変えていた

 大家さんから
「倒壊するかもしれないから、
 マンションの中には入らないで」
 そう言われて
 息子と二人、避難場所まで歩いた

 この時、息子は小学一年生
 喋れない息子は泣くことしか出来ない
 避難場所での息子の行動は
 周りの人に不快感を与えていた

 倒壊するかもしれないマンションに
 戻るしかなかった

 真っ暗な夜道
 車のライトが光るだけ
 信号機すら壊れて作動せず
 自分の足元すら見えやしない
 マンホールが
 盛り上がっているのにも気がつかず
 私は足をくじいてしまった
 星がキレイだった
 仙台でこんなに星が見えようとは
 天使君は天国で元気にしているだろうか
 私のお腹の中で亡くなった五人の子供達
 皆はお星様になったのだろうか

 その日
 旦那は秋田県に出張していたが
 同僚達を車に乗せて
 仙台へと帰ってきてくれた

 同僚をそれぞれの自宅に送りとどけ
 さあ、自分も帰ろうと思った時
 ラジオでニュースが流れた

「若林区が壊滅的な状況です」

 壊滅的?
 どういう状況を壊滅的というんだ?

「津波でたくさんの方が亡くなっています。
 絶対に、近づかないでください」

 壊滅的という言葉が
 旦那を捕らえて離さない
 その状況をどうしても知りたい
 この目で見てみたいと
 我が家とは違う方向
 若林区へと車を走らせた

 そして、深夜に帰宅した

 そんな話を聞かされた方はたまらない

 私は旦那の行動を否定した
 旦那も私を否定した
「わざわざ秋田県から
 真っ暗な山道を帰ってきてやったのに
 文句を言われる筋合いはない」

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