鬼望の道(vol1,)牌の音
あれはいつの日だっただろう?
麻雀牌に触れた日、
麻雀を覚えようと思った日、
夢中になる道筋を
貴方は覚えているだろうか?
自分は麻雀を覚えて
もうすぐ10年となるが
7年間は全く楽しめなかった。
約3年前ネット麻雀に本格的に触れ、
1年前フリー麻雀巡りをするようになってから麻雀を少しずつ好きになっていったのだが、それまでは麻雀はおろか、
一時期は牌を見るのも嫌気がさした。
たが一つ言えることがある。
それだけ真剣だったという事だ。
これから読んでいただく記録は
たかが麻雀、されど麻雀だが、
鬼と称された人物と
その集団に憧れを持ち認められたい一心で
努力し続けた記録である。
どこにも語られることのない
3年間のオフレコだがほぼノンフィクション
なので真実味が伝わることを保証する
夏への準備
2011年大学3年の7月、筆者は燻っていた。
教員になりたい一心で長野の大学に受かり
キャンパスライフを過ごしていたのだが
入学からうつ病を発症。
クラスメイトや教員、家族とも距離を取り、アパートに何カ月も引きこもりをしていた。
しかし燻っていたのは順風満帆な
大学生活が送れていない事ではなく
麻雀を覚えることが出来ない
自分に対してである。
筆者はこの時、
滝沢和典監修
『絶対に強くなる麻雀入門』
を読みながら天鳳にて勉強、
目的は点数計算も含めて
ルールを覚える為だ。
大学2年の3月頃、
唯一通っていたゼミの合宿に参加、
合宿の休憩時間にて
麻雀をすることになりルールも知らず
先輩の誘いを断れず強制参加。
”綺麗な形を作れ”
”四つの並びと一つ同じのを揃え立直をしろ”
とやじられるが、揃えることが出来ず
”ポンとかチーで
人から貰って揃えることが出来る”
と言われやってみるがチョンボの繰り返し
『お前、麻雀向いてねぇな。』
と一蹴され除け者となったが、
なぜかこの経験が強く印象に残った。
それから数カ月、
大学も始まり他の人が授業を受けていく中、筆者は変わらず家にこもりっぱなしでいた。
しかし以前と変わったことがある。
麻雀関連の動画を見るようになったことだ。
”面白そうなんだけど
何が面白いと感じたのだろう?”
と色んな動画を見たが
イマイチピンとこない。
そんな中、
ある動画を見て一気に興味が向く。
『か…かっこいい…』
かつて少年時代、
ウルトラマンや仮面ライダーを見て
一度は夢見たHEROへのあこがれ。
それに似た感情が湧いてきた。
そしてそれ以上に驚いたのが、
”主人公にはモデルがいて、実在の人物がいる”
”その人物が主催する麻雀団体があり出身者は過去2度、大規模な大会で優勝している。”
そして約3年前
この大規模な大会が武道館にて行われ、
大きなインパクトを残したの事。
1人だけ別格でとにかく打牌が速い。
僅差で負けはしたが”強さ”を感じた。
他にも
当時はこれらの動画を
ニコニコ動画で見ていたが
いずれもインパクトが
強く鮮明に残り続けた。
”桜井章一” ”雀鬼会”
このワードや魅力に強く惹かれ、
そのうち
”桜井章一に会ってみたい”
”雀鬼会の人々に会ってみたい”
と思うようになった。
それから8月の夏休みに向けて最低限、
麻雀のルールだけ覚えようと思い、
とにかく勉強をした。
学期中に行くことも出来たが、
周りが勉強していく中で行くのが
気が引けたのと元々地頭は良くなかったので覚えるのに時間が掛かったため、
8月ぐらいがちょうどいいであろうと考えた。
2011年8月某日、
長野駅バスターミナルから
新宿行のチケットを買い
不安と緊張を胸に高速バスに
乗り込んだ。
躊躇
新宿バスターミナル西口より、
JR新宿駅方面へ歩いて数分後、
小田急線で箱根方面へと向かう。
出立する前に路線図や運賃などを
事前に調べていたが足りそうだ。
当時はスマートフォンなどは普及しておらずインターネットカフェが流行りであったため、安価に泊まれたのも功を奏した。
特急で約1時間経たない程度だろうか。
慣れないバス旅の疲れもあって眠っていた時に設定していたアラーム音で目を覚ました。
長野の片田舎では見ることのない
人混みに戸惑いながらも
JR町田駅前に到着。
桜井章一が経営する町田道場は
JR線路沿いに歩いてすぐの場所にある。
ガード下を降りて
ドンキホーテが見えたら
その裏側の線路沿いの建物に位置している。
ドンキが見えてから道場までは
数10メートルの距離にあるのですぐ着いた。
(怖い…すごく怖い…
麻雀見て怒られたらどうしよう。
第一打に字牌切ったら
どんな顔されるんだろうか?
ルールは覚えたけどほぼ初心者で
あのスピードでついていけるのだろうか…)
この黄色いビルの目の前で躊躇したのを
今でも憶えている。
このあたりは麻雀業界でも
あまり触れておらず知らない事が
多すぎたからだ。
しかしここまで来たらもう行くしかない。
意を決して螺旋階段で2階へ登り、
道場の門をたたいた。
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