世の中が変化してもサザエさんは変わらない、サザエさん時空問題(書評「これからのデータサイエンスビジネス」)
8月に、ikiriDSことマスクド・アナライズさんとの共著「未来IT図解 これからのデータサイエンスビジネス」を刊行いたしました。
ちなみに紙版も、kindle版もございます。
今回はAmazonで紙版を購入した際に付いてくる「図解イラストデータ」の特典を使って、本書に込めた思いをぶちまけたいと思います。
なぜ今さらデータサイエンス本なのか?
世の中を広く見渡してみると、売れている書籍は「AI」「RPA」というキーワードが多く「データサイエンス」「ビッグデータ」は少なめ。技術書にまで焦点を絞り込むと、数冊が売れていると分かるぐらいです。
そもそも私が今回の版元であるMdNさんから最初に依頼を頂いた内容は「ディープラーニング」でした。最新の感じがしますよね。
ただ、私自身がnttDS(なんちゃってデータサイエンティスト)なので、そこまで詳しくないとお断りしつつも「逆に、データサイエンスビジネスはどうですか?」と提案をさせて頂きました。
それは、私の中でずーっと以下のような違和感を抱いていたからです。
ビッグデータブームが起きた2011年から、ほぼ10年。結局、その恩恵を受けるのはわずかな先端IT企業で、それ以外は掛け声倒れ。これまでの書籍は正しかったのか? この現状を総括しないのは変ではないか?
例えば、データサイエンティストがビッグデータを分析しても「それ知ってる」しか出てこない問題は未だに全国各地で勃発しています。
そもそも現場が非協力的で「データが揃わない」「データが汚い」だけでなく「そもそもデータが無い」「外部の人間に何が分かる」なんて言われて排他されるなんて、未だある話です。マジで。
そんな環境で「データから未知の気付きを発見する」なんて無理ゲーではあります。
業界をリードしてきた人たちは、欧米中の先端事例を見て来られたと思うのですが、それに比べて日本が優位な点は1つでもあるのでしょうか。日本のデータサイエンスビジネスの常識は、世界でも常識なんですか?
過激な言い方をすると「業界をリードしてきた人たちは何を間違えたのか総括せよ」(それができないなら二度とイベント登壇時に「業界をリードしてきた」とか書くな)と思うのです。
10年を総括する「データサイエンスビジネス」であれば、10年前には書けなかったけど、今なら書ける話があると思いました。
全ての原因はITに対する無理解にある
ここで私なりの総括をまとめます。詳細は書籍にあるので、興味ある方はご購入いただくとして、要点を以下に記します。
そもそも、なぜ日本はデータサイエンスの恩恵を受けられないのか。僕なりの結論は「ITに対する無理解」だと考えています。
1995年11月に日本にWindows95が降誕し、それ以降は世界中でITが民主化されたのに、日本だけはそれを拒んで個人が変化していない。それが原因では無いかと考えています。
本書では「サザエさん時空」と表現しています。
皆さんの周りにも「サザエさん時空」は存在しています。例えば、経団連の会長はメールもPCも使わない。「会長」ってそれで仕事できんのか。メールとかPCって"ツール"なんだとこの時ばかりは思う。
未だにご年配の男性が、過去の経験や価値観だけで「喝」「あっぱれ」と言っている。それをテレビで言っちゃうという緊張感の無さ。ダルビッシュ選手がイラつくのも分かる。
ちなみに話が逸れますが「我が社はセールスフォースを導入してますドヤ」な会社ほどデータは汚い。デジタル化している=キレイなデータなんて幻想です。
これも1つの「サザエさん時空」(或いは「ドラえもん時空」「ちびまる子ちゃん時空」)で、結局は「セールスフォースを導入した先端な状態」で時空が止まっている。
バージョンが上がらない時空、それが「サザエさん時空」。
「サザエさん時空」の壁は厚く、この壁のおかげで日本は対世界ソフトウェア戦争に敗北し、対世界ビッグデータ戦争に敗北し、対世界データサイエンス戦争に敗北し、今度は対世界AI戦争に敗北しようとしています。
そもそもITに対する抵抗の壁が厚いのに、データサイエンスが浸透するわけが無いですよね。そこが間違っていました。
日本はIT領域で既に3敗しているのです。日本シリーズなら大手です。AI戦争に負けたら、もうダメだ。
なのに、世間では未だに1995年以前の時間軸が続いている。この10年の中国進出は凄まじいのに、情報セキュリティーだけは厳しくなっている。
出世争いと足の引っ張り合いが続き、東芝や日立など大企業が傾き、統廃合が繰り返され、それでも島耕作は政治・恋愛・出世のパッケージで35年続いている。お約束・定番とは言え、恐ろしい話です。
1995年以降に生まれた若者(24歳以前)が社会で活躍するまで待たなければならないのか?
それともスマホが浸透した2010年代以降に生まれた若者(ヒトケタ歳)まで待ちます?
その前に、日本は「後進国」になっちゃいますよ。
「AIが仕事を奪う」の本当の怖さ
「ITに対する無理解」という結論に落ち着いたのは、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の論文を読んで、抱いた違和感を取材したからです。
当時は「AIが仕事を奪う」論が華やかで、そういう本を出せば売れました。どの本もオズボーン論文を引用していたので、1度目を通したのですが「あるworkが自動化されると職業自体が無くなる」という論理の飛躍にガッカリしました。(以下は取材の内容です)
例えるなら、自動運転が完成したら、タクシー運転手は全て廃業!みたいな感じです。それは無いわ。
後にヨーロッパ経済研究センター(ZEW)が反論をして、自動化可能性が70%を超える職業は経済協力開発機構(OECD)21カ国平均で9%だと見積もった結果を発表し「AIが仕事を奪う論」はだいぶ落ち着いたと思います。
とりあえず不安商法に便乗した鈴木貴博は腹を切れ。
しかし、オズボーン論文もZEW論文も共通して「自動化の波は止まらない」と指摘しています。つまり2つの論文の違いは「自動化が職業を無くす」「自動化が作業タスクを減らす」という程度なのです。
ZEW論文では「タスクの50%以上が自動化する職業は、OECD21カ国平均で35%」「自動化の手段としてのコンピュータやデジタルそのものに対する訓練が必要」と主張します。
ここで重要になるのが再教育です。既に学校教育を受けた人間であっても、もう1度勉強し直す。コンピュータやデジタルに対する教育を受ける。それが「良い自動化」を促してくれるでしょう。
それなのに、何かにつけ「(成功)事例下さい」と言うばかりのサラリーマンが多いこと! 他社の事例が自社で通用する確証があるんですかね。
自動化を担う今のIT業界、どうなってますか。
「再教育」どころか多重請負構造で将来に対して悲観するばかり、明るい話題は転職エントリぐらいですか。
「再教育なんかしなくてもエンジニアが作ってくれるよ」という発想の人も多いですが、以下のような図の悲劇はあと何回繰り返せば済むんでしょう。
先述したように「サザエさん時空」に拒まれて変化しない私たちの世界で、どうやってITリテラシーを向上させるか。これは実は喫緊の課題です。
どうすりゃいいのか?
状況を打破するためには、勉強しましょう。新しい経験を積みましょう。知見を貯めましょう。時間と経験と知見に投資しましょう。
ただし先日発覚したMITメディアラボ事件で分かったように「何を」「だれから」「どのように」学ぶのかが大事です。胡散臭い人たちは、平然とした顔でびっくりするぐらい面白くない書籍を出しています。この本とか。
みんな流行り物が好きというか、みんなが好きなものが好きというか、「とりあえずサクッと知りたい」願望がありますよね。
否定はしないんですが、実力はかけた時間と正比例しないので、サクッとばかり追い求めていたら結果的に何も手に入らなくなりますよ。
10月から始まる軽減税率なるやばみざわな税率対応のためにレジスターのバージョンアップが急がれますが、メディアは「そんなのやってらんない!」と悲鳴をあげる商店街のおばちゃんを映します。
そこで映し出されるレジスターは明らかに昭和から使ってるやろとツッコミを入れたくなるもの。もちろん、そんな状況でAIやらデータサイエンスなんて言っても意味がないわけで。
私たち1人1人が、時空の壁を認識し、壊さなければならんと思うのです。
とまぁ、そんな話を「未来IT図解」には書いています。ので、データサイエンティストも、データサイエンスに興味がある方も、ぜひ1度手に取って頂ければ幸いです。
この図解イラストデータは、本特典を受けた購入者に限り、下記に該当する使用を除き、個人・法人を問わず、そのままもしくは翻案・加工して何度でも使用できます。
(1) 公序良俗に反する態様でイラストデータを使用することはできません
(2) その一部であるか全部であるか、あるいは加工(組み合わせも含みます)の有無を問わず、イラストデータを再配布すること。なお、本項の「再配布」とは、有償・無償を問わず、書籍・CD・DVD等の媒体を利用する配布、インターネット等の通信手段を利用する配布等を意味します。また、イラストデータをサーバー等にアップロードして送信可能化する場合も含みます
(3) イラストデータに関し、著作権登録、意匠登録および商標登録など知的財産権の登録を行うことはできません
(4) 商用目的で利用(個人・会社にかかわらず、対価を得て行う利用、および対価の有無に関わらず営利を目的とする者が行う利用をいいます。株式会社や有限会社が行う利用はすべて商用利用です)することはできません
ただし、商用目的での利用であっても、
・ポスターやチラシ等の広告物のデザイン
・出版物の紙面および表紙、新聞紙面のデザイン
・商品パッケージのデザイン
・店舗のメニューや看板のデザイン
・店舗の飾りつけや包装紙(直接販売しないもの)のデザイン
・企業や店舗のノベルティ(直接販売しないもの)のデザイン
・Webサイトのデザイン(ただし、ブログ運営会社等が、イラストデータをデザインテンプレートとして提供することは禁止します)
・TV番組内のフリップやテロップのデザイン
・マンガのなかの飾りや背景
で使用する場合に限り、イラストデータを使用することができます
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