有利誤認表示とは

1 有利誤認とは

   前月でも書きましたが、有利誤認とは、


  商品又は役務の価格その他の取引条件について、

① 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
② 当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

  を指すとされています。
   たとえば、他社商品と同じくらいの容量しかないのに、他社商品の2倍の容量と表示することなどがこれにあたります。

   「価格その他の取引条件」とは、商品又は役務の内容そのものを除いた取引に関わる条件をいい、価格・料金のほか、数量、支払条件、取引に付随して提供される景品類、アフターサービス等が含まれるとされています。
   また、「有利であると一般消費者に誤認される」とは、たとえば価格表示を例にすると、当該表示によって販売価格が実際と異なって安いという印象を一般消費者に与えることをいいます。
   実際の処分例では、肉の日で当日表示価格より半額、という表示をしていたものについて、肉の日は通常日よりも表示価格を高く表示していたため、通常の半額よりも高い金額で販売していたという事案やメーカー希望小売価格が存在しないにもかかわらず、メーカー希望小売価格とする金額を表示して大幅に割引されているような表示をしたものなどがあります。

 2 価格表示ガイドライン

   有利誤認の最も典型的なものは価格表示に関するものですので、公正取引委員会が、価格表示ガイドラインというものを公表して、どのようなものが景品表示法上問題となるおそれがあるかについて明らかにしています。
   一般的には、以下のような価格表示は問題になりうるので注意が必要です。


  ① 実際の販売価格よりも安い価格を表示する場合。
  ② 販売価格が、過去の販売価格や競争事業者の販売価格等と比較して安いとの印象を与える表示を行っているが、例えば次のような理由のために実際には安くない場合。
  ⅰ 比較に用いた販売価格が実際と異なっているとき
  ⅱ 商品又は役務の内容や適用条件が異なるものの販売価格を比較に用いているとき
 ③ その他、販売価格が安いとの印象を与える表示を行っているが、実際は安くない場合   
   


3 二重価格表示

  価格表示で問題となることが多いのが二重価格表示です。
  価格表示ガイドラインにおいて、二重価格表示とは、「事業者が自己の販売価格を当該販売価格よりも高い他の価格を併記して表示するもの」と定義されています。
  たとえば「当店通常販売価格550円のところ、本日限り、220円」と記載する場合などがその例です。
  比較対象となる価格が表示されることで一般消費者の選択に資する面がある一方で、その価格表示が適切になされないと一般消費者に誤認を生じさせるという側面も持つため、適正な表示がなされることが求められます。
  では、適正な表示といえるためには、どのようなことに注意すればいいでしょうか。
  まず、比較対象として使用する価格について、最近相当期間にわたって販売されていたと価格といえない場合には、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格である等その内容を正確に表示しない限り不当表示に該当するおそれがあるとされています。
  このように、比較対象となる価格の内容を正確に書くことでの例外対応もありえますが、販促活動の一環として比較対象となる価格を表示する場合には、そのような細かい内容を記載する例は少ないといえますので、最近相当期間にわたって販売されていた価格といえるためにはどのようにすればいいのか、という点が事業者としては気になるはずです。

  これについて価格表示ガイドラインの考え方をまとめると、

① セール開始時点からさかのぼって8週間について検討をする
  (販売期間が8週間未満の場合は当該期間について検討をする)
② 比較対象として用いたい価格での販売期間が、①の期間の過半を占めていること
③ セール開始時点の2週間前までに比較対象として用いたい価格で販売していること
  

  という条件を満たす必要があります。

   また、よくある相談として、「オープン特別価格」のような形で、販売実績がないが、その後の想定される通常価格との比較を行うことができるのか、という相談を受けることがあります。これについて価格表示ガイドラインは、将来販売価格を比較対象価格とする場合について、将来の価格設定は将来の不安定な需給状況などに応じて変動するものであることから、将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合以外においては適切でないとしています。

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