柴田旻(シバタミン)

サラリーマンもの書き。

柴田旻(シバタミン)

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最近の記事

【詩】30

30歳の誕生日を迎える。 自分ではどうでもいいこと。 明日からもなにも変わらない。 だが周りからあれこれ言われると、大仰なことのような気がしてくる。 サンダルをペタペタと踏み鳴らしながらいつも通り、こうして詩を書いている。 文を書いている。 鳥の囀りは昨日と変わらないが、彼らも歳をとり、また私も同じだ。 信号の青いランプは煌々と輝くが、近くにいくほどぼやけて見える。 わかるようで遠のいていく。 そしてまた、次のランプが近づいてくる。

    • 【詩】秋

      もう秋なのだ。 本で読んだ一文が頭から離れない。 秋は思ったよりもすぐにきて、そして思ったよりも早く去る。 風が凪のように止んだのは、高速道路の柱が遮ったからなのだろう。 足は疲れ始めていたが、なぜか軽い。 蛍光灯に照らされた祈りは、どこかで通じるのだろうか。

      • 【詩】自由人

        俺は自由人 海は繋がってる 波はテトラポットにぶつかり、垂直に跳ね上がる 船虫もコンクリートを駆け上がりに向かう 桟橋の柱と柱から見えるタンカーは切り取った絵のようだ 俺は自由人 雲は腹面が黒くなってきたが、関係ない

        • 【超短編小説】意識とハンバーグ

          「ただいま。」 慎二がドアを開けると、そこには台所で炒め物をしている絵里がいる。 「おかえり。」 彼女は手を動かしながら、こちらに笑顔を向ける。 慎二はあらゆる点で絵里を愛していたが、特に笑った時に目がなくなる彼女の顔を見た時にそれを強く感じた。 「今日はなに?」 「ハンバーグだよ。玉ねぎソース作ってる。」 「いいね。」 慎二は襟の肩をぽん、と叩いて台所からリビングへと抜ける。 カバンを置いてソファへ腰掛けると、台所から絵里の鼻歌が聞こえてきた。 彼女は鼻歌をよく歌う。それは

          鴨川

          橋の下を降りると、蛍光灯に照らされた川が表情を映しだす。 同じように流れているはずなのに、手前は右へ、奥は左へと向かっているようにみえる。 パチパチと花火のように毎秒形を変えながら、ふたつは織り混ぜあっている。

          無価値観と闘う

          自分に自信を持てなくなったのはいつからだろう。 小学校の時、人がたくさんいる場所ではなぜか感覚が過敏になることがあった。自分でも理由がわからないが、平常心でいられなくなってしまうのだ。 ショッピングモールやテーマパークでは毎回人と会話ができなくなり、入ってすぐトイレに駆け込んだ。 小さいながらに「なんで周りの子は普通なのに自分だけこんななんだろう」と思っていた。 中学では人間関係の軽いいざこざから、自分を主張することができなくなった。 思春期特有の対人の悩みがきっかけなの

          星空

          急に天体望遠鏡がほしくなった。 家電屋さんに行ったけれど、思ってたよりもつくりが複雑そうだ。 双眼鏡に変えようかと思ったが、同じくらい高い。 つらいことも星をみれば少しマシになる、なんて思ってたけど 都会で星をみるのはなかなか難しいな。

          愛を知るひと

          愛ってなんだろうか。 ずっと考えること。 心配すること。 抱きしめたいと思うこと。 セックス。 自分の命より優先したい人。 愛の定義はずっとない。 国語辞典には頼れない。 街ではみんなが知ったような口を聞いている。 でも誰にも答えはない。 自分の納得する答えを、誰もが探してるのだ。 もしかしたら愛は分類されるものでも、語るものでもないのかもしれない。 好きなら好き、愛してるなら愛してる。 愛を知るひと。

          家族

          ホットマンという漫画にハマっている。 父親の違う兄妹、違うながっているかわからない娘と暮らす教師の物語だ。 何十年か前の作品だが、当時でも核家族化は進んでいたらしく、 ハートウォーミングな家族の話に感動する人も多かったみたいだ。 私は家族が好きだ。 愛すことも愛されることも実感できる。 そういう存在がいることは幸福だと思う。 いつか結婚したら。 いつか子供が産まれたら。 家族が生きがいになるのだろうか。 昔は家族のために働くサラリーマンをどこか冷めた目でみていた。

          たまには、死にたくなったっていいじゃない

          たまには、死にたくなったっていいじゃない。 季節は夏に向かっているというのに、僕の心は相変わらず暗い棘が刺さったままだ。 これは五月病なのだろうか。少なくとも5月の前から続いているのだから、違うなにかなのだろう。 とにかく、死にたくなる。 職場だろうが家だろうが、少しでも嫌なことがあると自分の思考がそこに直結してしまう。最近に至っては何もなくても、勝手に想像してそう思ってしまうことすらある。 前を進もうという推進力を側から削がれていく感じだ。 そう思ってしまう自分に自己嫌

          たまには、死にたくなったっていいじゃない

          つまり人生は思ったより自由で、自分を認めたもん勝ち

          人生は自由だ。 逃げても、辞めても、消えてもいい。 本当に消えようとするかは置いておいて、消えようと考えるのは何の問題もない。 逃げ道を作ることが自分を赦すことになる。 人生は、自分を認めたもの勝ちのゲームみたいなものだ。

          つまり人生は思ったより自由で、自分を認めたもん勝ち

          燃える

          なんど山を越えてもなお、視界から燃えさかる炎は消えない。 もう限界だ、と思う。 それでも人生は終わらない。 終われない。 瞼をとじて、またゆっくりとひらく。

          海辺で夜を越える

          つらいことがあったら、海へ行く。 いつしかそれが私の習慣になった。 人間関係で悩むことができたり孤独を感じる時に海を見ると、なんだか自分がちっぽけな存在に思えて苦しみが和らいでいくのだ。 今日も海辺へ行くと、防波堤の上で20歳くらいの若い男が体育座りで海を眺めていた。 こんな夜に珍しいな、と思いながら5メートルほど空けて同じように座る。 これという悩みは特になかったのだが、なんとなく最近は気持ちが晴れなかった。 それでまたいつもの海辺にやってきたのだ。 波風にあたりなが

          海辺で夜を越える

          本気で生きている人の方が面白い

          生きる意味について考える人はたくさんいる。 何のために生まれてきて、何をすることが自分にとって 幸せなのか。 もちろん、人生に意味などないという人もある意味では正しい。 意味のないと考える人にとっては、そんな堂々巡りは愚問だ。そんな時間があるなら、今やりたいことをさっさとやったほうがいいと思うのだろう。 人に多大な迷惑をかけなければ、どんな生き方も正解だと思う。 いや、正確にいうと人生に正解などない。 だが、最近になってひとつ思うようになったことがあった。 それは「本気で

          本気で生きている人の方が面白い

          【ADHDライフハック】生活自動化のすすめ

          私は作家をしながら、兼業で会社員をしている。 今回の記事は、サラリーマン生活で気づいた自分の特性=ADHDに関して、私が向き合っていく中で見つけたライフハックについて綴っている。 今回私が書いたのは、私が実践してきた対策のうち「生活自動化」と読んでいるライフハックだ。 記事を通じてこのハックを知ってもらうことで、少しでも同じような悩み(めんどくさいことを後回しにする、予定を立てるのが苦手など)を抱えている人の役に立つことができると自負している。 1.ADHDと分かったきっか

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          【ADHDライフハック】生活自動化のすすめ

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          【ショートショート】殻を破れ!

          夜の高速を走る車内で、浩介は横で運転する優と雑談していた。 浩介と優はボクシングジムで出会った。 2人とも同い年だったが、高校から12年間ボクシングを続けてきた浩介に対し、優は会社員になってから始めた経歴の浅いボクサーだった。 2人が通っていたのはプロジムだったが、浩介は初め優に興味を持たなかった。社会人の趣味の延長でプロライセンスを取りたがる人間はこれまでも何人か見てきた。 だが、自分と彼らは同じボクサーでも全く違う人種だと思っていた。浩介は人生をかけて世界を目指しているが

          【ショートショート】殻を破れ!