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武道の極意・秘伝集23

12技に明らかなりとも、理に聞くては成らぬ事あり。また、理明らかなりとも、技に聞くては成らぬ事にて、とにかく理技兼備せねば、剣道名人とは言い難し。余の修行中には、日夜工夫に胸を焦がし、夜も快く臥したることなし。深く案じたる節には、終夜眠らぬこと度々ありたり。今子どもの様子を見るに、技は先ずかなり出来たれども、理には一向聞き者にて、余の修行中のごとき振りは更に見えず、あれにて剣道上達致せば、実に不思議の事にて、余は昼夜ただその事のみ心配致せしなり。
補足説明:武術の上達には、単なる動きという形稽古に留まらず、それに内包される術理、宗教的境地にも通ずる心のありよう(精神性)を車の両輪のように学んでいく必要があります。勝負の対象も敵から己となり、形(勢法)という限定された空間から普遍的なものを探求するという手法です。このあたりのこと、『兵法家伝書』殺人刀上において、大学章句の「致知格物(ちちかくぶつ)」を引いて柳生宗矩の解釈を記しています。すなわち、知をつくす(致)、事(格物)をつくす、知ることが尽きれば物事も尽きる、道理を知らなければ何ごとも成らない。心すべき教えです。

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