見出し画像

惣角の言葉

「邈矣(ばくたり)、大東流兵法、ただ勢(せい)知るべきのみ」
これは、武田惣角が70歳過ぎに弟子たちにたびたび言っていた言葉で、
鶴山先生の解説によると、「ばく」とは遙か遠いこと、幽遠の意、「勢」とは孫子が「勢篇」で言っていることだそうです。

その孫子「勢篇」の意訳は、
せき止められていた水が激しく流れて、重い石をも押し流してしまうのは、水の流れに勢いがあるから。
鷹やハヤブサなどが急降下して、獲物の骨を打ち砕くのは、節目のところである。
だからよく戦う者は、敵を攻撃するときの勢いがよく、攻撃に必要な場所を瞬時に見極める。
敵を攻撃するときの勢いは弩(ど=機械じかけで射る強い弓)の弦を引き絞るようなもので、大事な場所で瞬事に矢を発射するようなものである。

「勢」とはエネルギーで、この場合厳密には経絡エネルギーの意となる。とあります。
エネルギーをため、機を見て瞬時に急所に送り込み(ぶつけ)、敵を制圧するということでしょう。
古稀(こき)を過ぎた惣角は、彼なりに衰えを感じていたのかも知れません。しかしながら、山本角義は、「とても古稀の人のからだとは思えませんでした。未だ30代の柔軟さでした。当時は夜中でも新しい技を思いつかれると、私たちを起こされたものです。」そして、数手の試みが済んだ後、惣角は「武田家の業だよ。」と小声で言ったそうです。
惣角の意識とは違い、第三者から見ると若くて壮健だったということですね、なにしろウナギ好きですから。
なお、大東流において孫子の兵法は合気之術の根本思想に取り入れられています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?